この記事を読むメリット
- SAP自動支払処理の流れを理解できます。
- 実機で自動支払処理を実施できます。
「請求書を登録した後、仕入先への支払はどのように処理するのか」「F110を実行したのに、支払対象が表示されないのはなぜか」。SAP FIの支払業務では、このような疑問を持つことがあります。
F110は、仕入先や得意先の未消込明細をもとに、自動支払を実行するためのトランザクションです。支払対象の選定、支払方法・支払銀行の決定、支払伝票の転記などをまとめて処理できます。
無論、自動支払機能を正しく動作させるために、事前にカスタマイズが必要です。
自動支払処理に関連するカスタマイズ解説記事を事前に確認しておきましょう。
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本記事では、仕入先への銀行振込を例に、F110の基本、実行前の準備、支払提案から支払実行までの流れ、エラー時の確認ポイントを解説します。特に押さえたいのは、支払提案の作成、SAPでの支払転記、銀行での振込完了は、それぞれ異なる段階という点です。
早速、SAP F110自動支払処理について紹介していくぞい!
この記事のポイント
F110でできること
毎月、多数の仕入先に支払を行う場合、請求書ごとに支払対象を選び、金額や口座を確認して処理するのは手間がかかります。
F110では、実行時に指定した条件と、マスタ・伝票・カスタマイズの情報を組み合わせて支払内容を決定します。
表でまとめると、以下の処理が可能です。
| 主な処理 | 内容 |
|---|
| 支払対象の選定 | 会社コードや仕入先の範囲、期日などをもとに未消込明細を選ぶ |
| 支払内容の決定 | 支払方法、受取人、支払元銀行などを決定する |
| 支払提案の作成 | 支払予定の明細と、支払できない明細を確認する |
| 支払実行 | 通常の請求書支払では支払伝票を転記し、対象の仕入先明細を消し込む |
| 支払媒体の作成 | 設定した出力処理を通じて、銀行向けの振込データなどを作成する |
支払媒体とは、銀行へ支払指示を伝えるためのデータです。
F110で支払実行が完了しても、振込データの送信、承認、銀行側での受付・処理まで完了したとは限りません。
SAPから振込データを作成し、ネットバンキングにアップロードし、銀行は振込データの指示に従い、支払人口座から受取人口座へ振込処理を行います。
銀行との直接的な連携も可能ですが、別途開発などが必要であるため、筆者が経験したプロジェクトは前者の仕組みを採用しました。
実行前に確認するマスタと設定
F110の実行画面に正しい条件を入力していても、支払に必要な情報が不足していると支払できません。
準備する情報は、次の3つに分けると整理しやすくなります。
BPマスタ
仕入先の銀行情報、支払方法、支払条件、支払保留などを確認します。
| 項目 | 決めること | 例 |
|---|
| 支払条件 | いつ支払うか | 基準日から30日後に支払う |
| 支払方法 | どの手段で支払うか | 銀行振込、小切手など |
銀行振込では、支払方法が要求する銀行情報が必要です。
例えば、銀行ID、口座番号、口座名義人など。
複数の口座を登録している場合は、今回の支払でどの口座を使用するかも確認する必要があります。
請求書の仕入先明細
請求書が転記済みで、未消込明細として残っていることを確認します。
あわせて、支払条件、支払基準日、支払方法、支払保留など、明細に保持されている値を確認します。
また、期日の判定には、未消込明細に設定された支払基準日と支払条件が使われます。
支払基準日と支払期日の関係については、過去の記事でも解説していますので、ぜひご確認ください。
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自動支払のカスタマイズ
SAPオンプレミス環境では、FBZPが自動支払設定の代表的なカスタマイズです。
支払会社コード、国別・会社コード別の支払方法、銀行選定などを設定します。
銀行選定では、支払方法や通貨に応じてどの銀行・口座を使うかを決めます。支払媒体を出力する場合は、銀行の指定に合ったフォーマットや出力設定も必要です。
また、支払元となる取引銀行・口座と、関連するG/L勘定も事前に紐づきます。
自動支払の関連カスタマイズも併せて確認しておきましょう。
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F110の基本的な実行手順
F110の実行手順は以下のとおりです。
STEP
実行日付と識別IDを入力する
F110を検索し、実行日付と識別IDを入力します。
この組み合わせで一意な支払実行を識別します。
例えば、同じ日に複数の支払処理を行う場合、識別IDを分ける必要があります。同じ日付、同じ識別IDでの新規登録ができません。
※実行日付は支払伝票の転記日付になります。
(パラメータタブを押すと、実行日付と同じ日付が転記日付に自動的にセットされます)
▪️IDは数字とアルファベット両方とも利用可能です。桁数は5桁までです。
STEP
パラメータを設定する
会社コード、支払方法、仕入先の範囲、日付条件などを設定します。
日付項目は意味が異なるため、特に注意が必要です。
| 項目 | 意味と確認ポイント |
|---|
| 転記日付 | 支払伝票を転記する日付。 該当期間がオープンしているか確認する。 |
| 伝票最終入力日付 | どの日までに登録された伝票を対象にするか。 支払対象とする伝票の入力日付の上限を指定するデータ項目です。 |
| 会社コード | 支払対象とする会社コード |
| 支払方法 | 今回の実行で使用する支払方法 |
| 次回支払日付 | 次回の支払実行を想定する日付。 今回支払う必要があるかの期日判定に使用する。 |
| 仕入先 | 支払対象とする仕入先の範囲 |
パラメータの入力だけで不足で、もっと対象を絞りたい場合、「自由選択」のタブで、ほかのフィルタをかけることができます。
STEP
支払提案を作成する
パラメータを保存し、支払提案を実行します。
完了すると、「支払提案が登録されました」というステータスが表示されます。
システムが対象明細を選定し、支払方法や銀行情報などをチェックします。
この段階では、通常の支払伝票の転記や請求書明細の消込は行いません。
支払予定の内容を確認するための段階です。
支払提案が作成されたら、支払先、対象請求書、金額、支払方法、支払元銀行、受取口座を確認します。
ダブルクリックすると、対象となる請求書の確認ができます。
もし、支払提案でエラーが出た場合、エラー内容を確認した上で、必要に応じて支払提案を削除し、パラメータを修正して再度支払提案を実施する必要があります。
STEP
支払実行を行う
確認が完了したら、必要な社内承認を経て支払実行を行います。
社内承認はオフラインで各企業の運用ルールでメール承認したり、紙での承認したりする場合があります。
支払が成功しましたら、ステータスの確認と会計伝票の数の確認ができます。
通常の請求書支払では支払伝票が転記され、対象の仕入先明細が消し込まれます。
処理後は、支払ログ、支払一覧、会計伝票、消込結果を確認します。
STEP
支払媒体と銀行処理
支払実行が終わったら、印刷処理を実施します。
銀行振込用のFBデータ(全銀フォーマットの振込データ)の作成はこのステップにて実施します。
FBデータ(全銀フォーマットの振込データ)をダウンロードし、ネットバンキングにアップロードします。
これで、自動支払処理が完了しました。
自動支払で発生する仕訳
銀行仮勘定を使用する例で説明します。
「なぜ、銀行仮勘定を使用するのか」という疑問を持っている方がいると思います。F110で支払処理を実施した際に、通常後日口座からお金が引き落とされますので、処理時点では、預金残高はまだ減少していません。
そのため、一旦仮の勘定に予定の預金減少額を計上し、実際口座から出金されましたら、仮勘定から預金本勘定に振り替えるという考え方です。
特に海外送金の業務では、債務計上時と口座から引き落としされる時の為替が異なる可能性がありますので、支払処理時に仮勘定を使用するという仕組みが一般的になっています。
| タイミング | 借方 | 貸方 |
|---|
| 請求書の転記 | 費用等 100,000円 | 買掛金 100,000円 |
| F110の支払実行 | 買掛金 100,000円 | 銀行仮勘定 100,000円 |
| 銀行明細による出金確認 | 銀行仮勘定 100,000円 | 普通預金等 100,000円 |
買掛金は仕入先明細への転記を通じて統制勘定(買掛金)に反映されます。
支払実行時には、請求書の仕入先明細と支払明細が消し込まれます。その後、銀行明細の処理で銀行仮勘定を消し込み、銀行の実際の出金と対応させます。
この流れを理解すると、仕入先明細の消込済みという状態と、銀行で振込が完了したという状態を区別できます。
まとめ
F110の基本は、支払条件などをもとに対象明細を選び、支払提案で内容を確認し、支払実行で会計処理を行うことです。
その後の支払媒体の作成・銀行連携まで確認して、支払業務を完了させます。
操作を覚える際は、「どの条件で請求書が選ばれたか」「どの段階で仕訳と消込が発生したか」を意識すると、処理結果を理解しやすくなります。
想定した明細が選ばれない場合も、提案ログを確認し、日付条件、支払方法、支払保留、銀行情報を確認していきましょう。
SAPでの自動支払処理の基本と注意点について、よくわかりました!
そのとおりじゃ!支払提案で「誰に・いくら・どの口座から支払うか」をしっかり確認するじゃ。支払実行後も銀行での処理結果まで確認して、一連の流れを押さえておくとよいぞい!