この記事を読むメリット
- S/4HANA で旧来の T-CODE を入れたときの 4 つの出方(止まる・移る・無い・開く)が分かる
- 在庫・取引先・与信・固定資産・原価要素などの主な T-CODE の代わりが分かる
- 画面に出るメッセージと SAP ノートの番号から、何が起きたかを読み取る方法が分かる
ECC で覚えた T-CODE を S/4HANA で入れると、「無効です」と出て止まったり、別の画面に移ったりすることがあります。
S/4HANA では、いくつかの T-CODE が新しい T-CODE にまとめられました。止まった T-CODE の代わりに何を使えばよいかが分かれば、迷わずに作業を続けられます。
この記事では、次の 2 つを、実際に T-CODE を入れたときの画面で解説します。
- 旧来の T-CODE を入れたときの 4 つの出方
- 在庫・取引先・与信・固定資産・原価要素などの 主な T-CODE の代わり
博士!いつもの MB1A で出庫しようとしたら『無効です』って出たんです…
うむ、S/4HANA ではいくつかの T-CODE が新しいものにまとめられたのじゃ。何を使えばよいか、一緒に確かめるぞい!
この記事のポイント
前提
- 画面: S/4HANA 2022 の画面です(会社コード 1010 の例のデータ)。
- 使うトランザクション: 入れてみる旧来の T-CODE(MB1A・XK01 など)と、代わりの T-CODE(MIGO・BP など)
- この記事の操作は、旧来の T-CODE を入れて、出たメッセージや画面を見るだけです。データは登録・変更しません。
- どの T-CODE が使えなくなるかは、S/4HANA の版で変わることがあります。
S/4HANA で T-CODE が変わった理由
実務での要件の例
ECC から S/4HANA に移った在庫担当から「いつもの MB1A で出庫を入れようとしたら『無効です』と出た。どうすればよいか」と聞かれた場面を考えます。この要件は、次のように分けて進めます。
| 要件の部分 | どうするか |
|---|
| なぜ止まったかを知る | メッセージを読みます。「無効です (ノート 2210569 参照)」は、在庫の旧来の T-CODE が使えなくなったことを表します |
| 代わりの T-CODE を知る | 在庫の入出庫は T-CODE:MIGO にまとめられています。下の一覧で代わりを確かめます |
| 取引先や与信など、ほかの T-CODE も確かめる | 下の一覧で、分野ごとの代わりを確かめます |
| 旧来の T-CODE を使えるようにする | ここでは扱いません。使えなくなった T-CODE には、新しい T-CODE に置き換えられたものと、機能が要らなくなって廃止されたものがあります |
旧来の T-CODE を入れたときの 4 つの出方
旧来の T-CODE を入れると、次の 4 つのどれかになります。
| 出方 | 例 | 画面に出るもの |
|---|
| メッセージが出て止まる | MB1A・MB1B・MBST などの在庫の T-CODE、FD32、MR01、VA06 | 「トランザクション MB1A は無効です (ノート 2210569 参照)」などのメッセージ |
| 新しい T-CODE に移る | XK01・XD01 などの取引先の T-CODE、AB01、KA01 | 「トランザクション XK01 が無効なためトランザクション BP にリダイレクト中です」などのメッセージと、新しい画面 |
| T-CODE が無い | ABST | 「トランザクション ABST は未登録です」 |
| 旧来の画面が開く | ME21・ME51・VKM1 | 旧来の画面。ただし、S/4HANA では後継の T-CODE を使うことになっています |
旧来の T-CODE を入れたときに、メッセージで止まるか、新しい T-CODE に移るか、T-CODE が無いか、旧来の画面が開くかに分かれる流れです。
主な T-CODE の代わり
| 分野 | 旧来の T-CODE | 代わり | 出方(S/4HANA 2022) |
|---|
| 在庫 | MB1A・MB1B・MB1C・MB31・MB11・MB0A・MB01・MB04・MB05(入出庫の登録) | T-CODE:MIGO | 「無効です (ノート 2210569 参照)」で止まる |
| 在庫 | MBST(入出庫の取消)、MB02・MB03(入出庫伝票の変更・照会) | T-CODE:MIGO | 同上 |
| 在庫 | MMBE_OLD | T-CODE:MMBE | 同上 |
| 取引先 | XK01・FK01・MK01(仕入先の登録)、XD01・FD01・VD01(得意先の登録) | T-CODE:BP | BP に移り、「ビジネスパートナ登録」の画面が出る |
| 取引先 | XD03・FD03・VD03(得意先の照会)、XK03(仕入先の照会) | T-CODE:BP | 旧来の第一画面が出る。XD03 では、得意先を入れて続行すると BP の照会に移る |
| 与信 | FD32(与信管理の変更)、F.28 | T-CODE:UKM_BP(FD32 の代わり) | 「この機能には新しい機能が存在します (SAP ノート 1946054 を参照)」で止まる |
| 与信 | VKM1(与信保留の受注の解除) | T-CODE:UKM_MY_DCDS | 旧来の画面が開く |
| 固定資産 | AB01 など、置き換えの対象の資産取引の T-CODE | T-CODE:AB01L など末尾に L の付く T-CODE | 新しい画面に移る |
| 固定資産 | ABST | なし | 「未登録です」 |
| 原価要素 | KA01・KA02・KA03・KA06 | 勘定コードのマスタ(T-CODE:FS00) | 勘定コードの編集画面に移る |
| 購買 | ME21・ME51 など旧来の購買の T-CODE | 購買発注の登録は T-CODE:ME21N、購買依頼の登録は T-CODE:ME51N | 旧来の画面が開く |
| 請求書照合 | MR01 | T-CODE:MIRO | 「使用不可能になりました」で止まる |
| 販売 | VA06(受注モニタ) | Fiori アプリ「Sales Order Fulfillment Issues」 | 「サポートされていません (SAP ノート 2228098 を参照)」で止まる |
T-CODE:KP06(原価センタの計画)はメニューから外れましたが、使えます。所要量計画の T-CODE:MD01 も使えます(新しい MRP Live の T-CODE:MD01N と並んで使えます)。
メッセージが出て止まる T-CODE
在庫の T-CODE(MB1A など)
コマンドフィールドに MB1A と入力して Enter キーを押すと、「中止」のダイアログが出ます。
画面の見方
- メッセージ: 「トランザクション MB1A は無効です (ノート 2210569 参照)」です。
- 終了: ダイアログを閉じます。
MB1B・MB1C・MB31・MB11・MB0A・MBST・MB01・MB02・MB03・MB04・MB05・MMBE_OLD も、同じメッセージで止まります。入出庫の登録・取消と、入出庫伝票の変更・照会は、1 つの画面の T-CODE:MIGO にまとめられています。在庫状況の照会の MMBE_OLD は、T-CODE:MMBE に置き換わっています。
与信の T-CODE(FD32 など)
FD32 を入れると、「この機能には新しい機能が存在します (SAP ノート 1946054 を参照)」のダイアログが出ます。
画面の見方
- メッセージ: 新しい機能があることを知らせるメッセージです。
S/4HANA では、旧来の与信管理(FI-AR-CR)は使えず、SAP Credit Management に置き換わっています。与信管理のマスタは T-CODE:UKM_BP、与信保留の受注の解除は T-CODE:UKM_MY_DCDS を使います。F.28 も同じメッセージで止まります。
請求書照合の MR01・受注モニタの VA06
MR01 を入れると、「トランザクション MR01 は使用不可能になりました」のダイアログが出ます。請求書の登録は T-CODE:MIRO を使います。
画面の見方
- メッセージ: MR01 が使えないことを知らせるメッセージです。
VA06 を入れると、「トランザクション VA06 はサポートされていません (SAP ノート 2228098 を参照)」のダイアログが出ます。受注の処理状況は、Fiori アプリ「Sales Order Fulfillment Issues」で確かめます。
画面の見方
- メッセージ: VA06 がサポートされていないことを知らせるメッセージです。
新しい T-CODE に移る T-CODE
取引先の T-CODE(XK01・XD01 など)
XK01 を入れると、T-CODE:BP に移り、「ビジネスパートナ登録」のダイアログが出ます。
画面の見方
- ビジネスパートナ登録: BP で登録するビジネスパートナの種類(個人・組織・グループ)を選ぶダイアログです。
- メッセージ: 「トランザクション XK01 が無効なためトランザクション BP にリダイレクト中です」です。
S/4HANA では、得意先と仕入先のマスタは、ビジネスパートナ(T-CODE:BP)で登録・変更・照会します。FK01・MK01・XD01・FD01・VD01 も、同じように BP に移ります。
照会の T-CODE は、旧来の第一画面が出てから BP に移ります。XD03 を入れて、得意先 10100002、会社コード 1010 を入れて続行すると、BP の照会の画面になります。
画面の見方
- 画面のタイトル: 「組織 照会: 10100002」です。BP の照会の画面です。
- ビジネスパートナ: 入れた得意先と同じ番号のビジネスパートナです。
固定資産の AB01
AB01 を入れると、「転記対象の一般ヘッダデータ登録」のダイアログが出ます。
画面の見方
- 転記対象の一般ヘッダデータ登録: 会社コード・資産・取引タイプを入れる、新しい資産取引の画面の入口です。
S/4HANA の固定資産では、AB01 など一部の資産取引の T-CODE が、末尾に L の付く T-CODE(AB01L など)に置き換わりました。置き換えの対象の T-CODE を入れると、新しい T-CODE に移ります。AB02 のように、置き換えではなく使えなくなった T-CODE もあります。
原価要素の KA01
KA01 を入れると、「編集 勘定コード 共通」の画面が開きます。
画面の見方
- 画面のタイトル: 「編集 勘定コード 共通」です。勘定コードのマスタの画面です。
- G/L 勘定: 勘定コードを入れる欄です。前に入れた値が残っていることがあります。
S/4HANA では、原価要素は勘定コード表の一部になり、原価要素だけのマスタはありません。原価要素は、勘定コードのマスタ(T-CODE:FS00)で保守します。
T-CODE が無い T-CODE
ABST を入れると、画面の下に「トランザクション ABST は未登録です」と出て、画面は変わりません。
画面の見方
- メッセージ: ABST という T-CODE が無いことを知らせるメッセージです。
ABST は、S/4HANA の固定資産では使えなくなった T-CODE の 1 つです。
よくあるつまずき
- メッセージの「ノート」の番号が気になる: メッセージにある SAP ノートの番号(2210569 など)は、その T-CODE が使えなくなった理由と代わりを説明している SAP の文書の番号です。代わりの T-CODE は、この記事の一覧で確かめられます。
- ME21 や VKM1 は開けるので、そのまま使ってよいか迷う: S/4HANA 2022 でも旧来の画面が開きますが、S/4HANA では、購買発注の登録は T-CODE:ME21N、与信保留の受注の解除は T-CODE:UKM_MY_DCDS を使うことになっています。版が上がると使えなくなることもあるので、後継の T-CODE に慣れておくとよいでしょう。
- 自社で作ったプログラムが旧来の T-CODE を呼んでいる: 在庫の入出庫の登録なら BAPI_GOODSMVT_CREATE、取消なら BAPI_GOODSMVT_CANCEL のように、代わりの汎用モジュールに置き換えます。
まとめ
- S/4HANA では、在庫の入出庫は T-CODE:MIGO、得意先・仕入先は T-CODE:BP、与信管理は T-CODE:UKM_BP、AB01 などの資産取引は末尾に L の付く T-CODE に置き換えられました。
- 旧来の T-CODE を入れると、メッセージが出て止まるか、新しい T-CODE に移るか、「未登録です」と出るか、旧来の画面が開くかのどれかになります。メッセージを読めば、何が起きたかが分かります。
- 原価要素は勘定コードのマスタ(T-CODE:FS00)で保守し、請求書の登録は T-CODE:MIRO を使います。
在庫は MIGO、取引先は BP、与信は UKM_BP なんですね!
うむ。開ける T-CODE でも、版が上がると使えなくなることがある。新しい T-CODE に慣れておくのじゃぞ。