この記事を読むメリット
- T-CODE:MIRO で、購買発注を参照して仕入先請求書を登録する手順が分かる
- シミュレーションと T-CODE:MIR4 で、請求書から作られる仕訳と会計伝票を確かめられる
- T-CODE:MR8M で請求書を取り消し、T-CODE:F-44 で残った明細を消し込む手順が分かる
仕入先から届いた請求書を SAP に登録するのが、請求書照合(T-CODE:MIRO)です。
購買発注と入庫の情報を呼び出して請求書と照らし合わせ、差がなければそのまま転記できます。
この記事では、入庫済みの購買発注を例に、次の操作を実際の画面で 1 画面ずつ解説します。
- T-CODE:MIRO で 請求書を登録する手順(購買発注の参照・税額計算・シミュレーション・転記)
- T-CODE:MIR4 で 登録した請求書と会計伝票を照会する方法
- T-CODE:MR8M で 請求書を取り消す手順 と、取消のあとに T-CODE:F-44 で 仕入先の明細を消し込む手順
博士!仕入先から請求書が届いたんですけど、SAP にはどうやって登録すればいいんですか?
うむ、請求書は T-CODE:MIRO で、購買発注と入庫に照らして登録するぞい。登録・照会・取消まで、画面を追って説明していくぞい!
この記事のポイント
前提
- 会社コード:
1010(通貨 EUR)。
- 使うトランザクション: MIRO・MIR4・MR8M・F-44。
- 例のデータ: 購買発注
4500004735(品目 TG11 を 10 PC、正味金額 128.30 EUR、税コード V1)。T-CODE:MIGO で全数量を入庫(移動タイプ 101)済みです。
購買発注から請求書照合までの業務の流れは「【SAP MM】基本的な購買発注プロセス(調達プロセス)の業務解説」、購買発注の登録は「【SAP MM】T-CODE:ME21Nの使い方について徹底解説!」で解説しています。
請求書照合の仕組み
実務での要件の例
経理部の買掛金担当が、購買発注 4500004735(品目 TG11 を 10 PC)について、仕入先から税込み 141.13 EUR の請求書を受け取りました。「発注・入庫と合っているかを確かめてから計上したい。間違えたときの取り消し方も知りたい」と考えている場面です。この要件は、次のように分けて進めます。
| 要件の部分 | どうするか |
|---|
| 請求書が発注・入庫と合っているかを確かめる | T-CODE:MIRO で購買発注 4500004735 を入れて明細を呼び出し、残高が 0.00 になることと、シミュレーションの仕訳を確かめます |
| 請求書を計上する | 同じ T-CODE:MIRO の画面で「転記」を押すと、請求書伝票と会計伝票が作られます。仕入先への支払いは、ここではまだ行われません |
| 計上した会計伝票を確かめる | T-CODE:MIR4 で請求書伝票を開き、「後続伝票」から会計伝票を確かめます |
| 間違えた請求書を取り消す | T-CODE:MR8M で取り消し、残った仕入先の明細を T-CODE:F-44 で消し込みます |
請求書照合でしていること
T-CODE:MIRO は、仕入先の請求書の内容・価格・計算を確かめて登録するトランザクションです。購買依頼・購買発注・入庫と続く調達の流れの最後にあたります。転記すると、購買(MM)の請求書伝票と、財務会計(FI)の会計伝票が作られます。
入力は次の順で進みます。
- 処理の種類(請求書・クレジットメモなど)を選ぶ
- 伝票ヘッダ(日付・金額・税)を入力する
- 請求書を購買発注などに割り当てる(購買発注番号を入れる)
- 呼び出された明細を確かめる
差額がなければ、3 の割当のあとすぐに転記できます。ただし、明細を確かめずに転記すると、明細ごとの差異が互いに打ち消し合って見えなくなることがあります。
入庫と請求書の仕訳(GR/IR 勘定)
入庫と請求書は、GR/IR 勘定(入庫/請求書受領 清算勘定)を間にはさんでつながります。この例の発注明細(入庫基準請求書照合なし)では、入庫と請求書のどちらを先に転記してもかまいません。発注明細で入庫基準請求書照合が有効なときは、入庫を先に転記します。入庫が先の場合は、入庫で GR/IR 勘定に計上した金額が、請求書の転記で相殺されます。請求書が先の場合は、入庫の転記で相殺されます。相殺されても GR/IR 勘定の明細は未消込のまま残り、明細の消込は T-CODE:F.13 などで別に行います。
この記事の例で作られた仕訳は次のとおりです。
| 伝票 | G/L 勘定 | 借方 | 貸方 |
|---|
| 入庫(T-CODE:MIGO) | 13600000 在庫 – 商品 | 128.30 | |
| 21120000 入庫/請求 | | 128.30 |
| 請求書(T-CODE:MIRO) | 21120000 入庫/請求 | 128.30 | |
| 12600000 仮払消費税 (VST) | 12.83 | |
| 21100000 支払債務 – 国内(仕入先) | | 141.13 |
請求書を転記しても、仕入先への支払いはまだ行われていません。転記した請求書は、支払いに関する情報を財務会計に渡します。
請求書照合では、購買発注と入庫をもとに請求書を照合します。この記事の例の伝票のつながりです。
請求書を登録する(T-CODE:MIRO)
1. T-CODE:MIRO を開いて会社コードを入力する
コマンドフィールドに MIRO と入力して Enter キーを押します(別のトランザクションの画面にいるときは、先頭に /n を付けて /nMIRO と入れます)。最初に開いたときは「会社コード入力」のダイアログが出ます。
画面の見方
- 会社コード: 請求書を転記する会社コードです。
- 続行: 請求書の登録画面に進みます。
この例では 1010 を入力します。以後の請求書はこの会社コードで転記され、画面のタイトルにも「会社コード 1010」と表示されます。
2. ヘッダの基本データを入力する
「仕入先請求書登録」画面が開きます。上半分の「基本データ」タブに、請求書の日付と金額を入力します。
画面の見方
- Transaction: 処理の種類です。「請求書」「クレジットメモ」「追加請求」「追加クレジット」から選びます。
- 請求書日付: 請求書の日付です。
- 参照伝票: 入力した値は、会計伝票の「参照伝票番号」に引き継がれます。
- 金額・通貨: 請求書の総額(税込み)と通貨です。
- 税額計算・消費税コード: 「税額計算」にチェックを付けると、明細の税コードから税額を計算します。右の欄は消費税コードです。
ヘッダには、請求書日付・転記日付・金額(請求書の総額)を入力します。
この例では、転記日付には当日の日付が入っていました。請求書日付 2026/10/14、参照伝票 INV-2026-1014、金額 141.13 EUR を入力し、「税額計算」にチェックを付けました。税額欄には、税コード V1 から計算された 12.83 が入ります。支払条件は購買発注から提案されます。
処理の種類は次のように使い分けます。
| 処理の種類 | 使う場面 |
|---|
| 請求書 | 発注した品物・サービスへの請求 |
| クレジットメモ | 前回の請求が多すぎた分を減らす(数量不足・品質不良による一部返品など) |
| 追加請求 | 総数量分の請求のあとで、数量は変えずに金額だけを追加で請求された |
| 追加クレジット | 総数量分の請求のあとで、数量は変えずに金額だけを減らす |
追加請求・追加クレジットの操作は「【SAP MM】請求書照合後の金額調整方法!MIRO後の追加・減算」で解説しています。
3. 購買発注を指定して明細を呼び出す
下半分の「購買発注参照」タブで、請求書を購買発注に割り当てます。購買発注番号を入力して Enter キーを押すと、明細が呼び出されます。
画面の見方
- 参照伝票カテゴリ: 何を参照して明細を呼び出すかです。購買発注のほか、納品書や仕入先なども選べます。
- 購買発注: 参照する購買発注の番号です。
- 明細: 呼び出された明細です。金額・数量は購買発注と発注履歴(入庫など)から提案されます。左端のチェックは明細の選択で、残高が合わないときに見直す項目の 1 つです。
- 税コード: 明細の税コードです。ヘッダの「税額計算」は、この税コードで税額を計算します。
この例では、購買発注 4500004735 の明細 10 が、金額 128.30・数量 10 で呼び出されました。請求書の金額・数量が提案と違うときは、この欄を直します。
購買発注明細で「入庫基準請求書照合」を有効にしている場合は、入庫ごとに明細行が分かれて表示されます(同じ発注明細が複数行に出ます)。有効にしていない場合は、発注明細ごとに 1 行で、複数の入庫があれば合計の数量が提案されます。入庫基準請求書照合を有効にすると、請求書の明細を入庫と 1 つずつ対応づけられます。納入が何回かに分けて転記されるときに向いています。
分割納入が見込まれる購買発注では、入庫基準請求書照合を有効にしておくとよいでしょう。
4. 残高が 0 になったことを確かめる
ヘッダと明細を入力したら、画面右上の「残高」を確かめます。
画面の見方
- 購買発注構造: 割り当てた購買発注の明細と、その入庫が表示されます。
- 残高・信号: 請求書の総額と「明細の合計+税額+計画外配送費」の差です。左の信号は、誤りがあって転記できない/正しいが支払ブロックになる/正しく転記できる、のどの状態かを表します。
- シミュレーション: 転記する前に、作られる仕訳を表示します。
この例では、残高が 0.00 になり、信号は緑になります。転記できる状態です(まだ転記はされていません)。
5. シミュレーションで仕訳を確かめて転記する
「シミュレーション」を押すと、「伝票シミュレート」画面に転記される仕訳が表示されます。シミュレーションは残高が 0 のときに使えます。
画面の見方
- 仕訳の明細: 転記される勘定と金額です。「勘」列(勘定タイプ)の K は仕入先、S は総勘定元帳勘定を表します。
- 借方・貸方・差異: 借方と貸方の合計と、その差です。
- 転記: 請求書を転記します。
この例では、仕入先 Inlandslieferant DE 1(勘定 21100000)の貸方に 141.13、入庫/請求(21120000)の借方に 128.30、仮払消費税(12600000)の借方に 12.83 が転記されます。
「転記」を押すと、画面の下に請求書伝票の番号が表示されます。
画面の見方
- メッセージ: 登録された請求書伝票の番号です。
この例では 5100001685 が採番されました。これは請求書伝票(MM)の番号で、会計伝票の番号は別に採番されます。会計伝票は次の T-CODE:MIR4 で確かめます。
明細の金額・税額と、請求書の総額が一致すると残高が 0 になります。
登録した請求書を照会する(T-CODE:MIR4)
1. 請求書伝票の番号を入力する
コマンドフィールドに MIR4 と入力して Enter キーを押します。
画面の見方
- 請求書伝票番号: 照会する請求書伝票の番号です。
- 会計年度: 請求書伝票の会計年度です。
- 伝票照会: 請求書伝票を表示します。
この例では、直前に登録した請求書の番号と会計年度が、はじめから入っていました。
2. 購買発注構造を確かめて後続伝票を開く
「請求書伝票 5100001685 2026 照会」画面が開きます。
画面の見方
- 購買発注構造: 購買発注の明細の下に、入庫と請求書が並びます。
- 後続伝票: この請求書から作られた会計の伝票を一覧にします。
この例では、明細 10 の下に「入庫」と「請求書」がどちらも 10 PC・128.30 EUR で並んでいます。
「後続伝票」を押すと、「会計伝票一覧」が開きます。
画面の見方
- 会計伝票: 財務会計の会計伝票です。ダブルクリックすると開きます。
この例では、会計伝票 5100000108 と、品目元帳の伝票が作られていました。
3. 会計伝票を確かめる
会計伝票をダブルクリックすると、「伝票照会: データ入力ビュー」が開きます。
画面の見方
- 参照伝票番号: T-CODE:MIRO の「参照伝票」に入れた値です。
- 仕訳の明細: 転記された勘定と金額です。
この例では、参照伝票番号に INV-2026-1014 が入り、シミュレーションで見たとおりの 3 行が転記されています。
請求書を取り消す(T-CODE:MR8M)
1. 取り消す請求書と反対仕訳理由を入力する
請求書を取り消すには、コマンドフィールドに MR8M と入力して Enter キーを押します。「請求書伝票取消」画面が開きます。
画面の見方
- 請求書伝票番号: 取り消す請求書伝票の番号です。
- 会計年度: 請求書伝票の会計年度です。
- 反対仕訳理由: 取り消す理由のコードです。
- 転記日付: 取消伝票の転記日付です。
- 取消: 取消伝票を転記します。
この例では、請求書伝票 5100001685、反対仕訳理由 01、転記日付 2026/10/14 を入力しています。反対仕訳理由には、たとえば次のものがあります。
| コード | 内容 |
|---|
| 01 | 転記が不適切 |
| 02 | 期間が不適切 |
| 03 | 価格と条件が不適切 |
| 04 | 返送 |
| 05 | 自動反対仕訳 |
取り消せるのは、請求書照合(T-CODE:MIRO など)で転記した伝票で、まだ取り消していないものです。他の伝票の取消伝票は取り消せません。
2. 取消を実行する
「取消」を押すと、取消伝票の番号が表示されます。
画面の見方
- メッセージ: 取消伝票の番号と、「財務会計伝票を手動で決済してください」という案内です。
この例では、取消伝票 5100001693 が作られました。請求書を取り消すと、金額・数量を元の請求書から取ったクレジットメモが自動で作られます。これが取消伝票です。
取り消しても、財務会計の仕入先の明細は自動では消し込まれません。元の請求書(貸方 141.13)と取消(借方 141.13)の 2 つの明細が、未決済のまま仕入先に残ります。次の T-CODE:F-44 で消し込みます。
取消のあとで仕入先の明細を消し込む(T-CODE:F-44)
1. 仕入先と会社コードを入力する
コマンドフィールドに F-44 と入力して Enter キーを押します。「仕入先消込: ヘッダデータ」画面が開きます。
画面の見方
- 勘定コード: 消し込む仕入先のコードです。
- 会社コード: 仕入先の明細がある会社コードです。
- 参照伝票番号: 未消込明細を参照伝票番号で絞り込むときに選びます。
- 未消込明細処理: 次の画面に進みます。
この例では、仕入先 10300001、会社コード 1010 を入力し、追加選択で「参照伝票番号」を選びました。消込日付には当日の日付が入っていました。
2. 参照伝票番号で明細を絞り込む
「仕入先消込 選択基準入力」画面で、絞り込む参照伝票番号を入力します。
画面の見方
- 参照伝票番号(開始): 絞り込む参照伝票番号です。
- 未消込明細処理: 条件に合う未消込明細を表示します。
この例では、T-CODE:MIRO の「参照伝票」に入れた INV-2026-1014 を入力します。取消の会計伝票にも同じ参照伝票番号が入っていたので、次の画面には請求書と取消の 2 明細だけが表示されました。
T-CODE:MIRO の「参照伝票」には、仕入先の請求書番号を入れておくとよいでしょう。
3. 2 つの明細が相殺されることを確かめて転記する
「仕入先消込 未消込明細処理」画面に、条件に合う明細が表示されます。
画面の見方
- 未消込明細: 条件に合った仕入先の未消込明細です。
この例では、請求書の会計伝票 5100000108(141.13-)と、取消の会計伝票 5100000109(141.13)の 2 つが表示され、画面の下に「2 明細が選択されました」と表示されました。
画面の見方
- 未割当: 割り当てられていない金額です。
- 転記: 消込伝票を転記します。
この例では、2 つの明細が相殺されて未割当が 0.00 になり、「転記」で転記できます。
4. 消込伝票の番号を確かめる
画面の下に消込伝票の番号が表示されれば完了です。
画面の見方
- メッセージ: 転記された消込伝票の番号です。
この例では、消込伝票 100000461 で 2 つの明細が消し込まれました。
消込の種類(自動消込・マニュアル消込)は「【SAP FI】消込処理の概要とやり方を解説!」で解説しています。
よくあるつまずき
- 残高が 0 にならない: 請求書の総額と、明細の合計・税額・計画外配送費の合計が一致していません。請求総額・税額・明細の選択(左端のチェック)・明細の金額を見直します。「税額計算」にチェックを付けると、税額は明細の税コードから計算されます。
- Enter キーを押すと「前受/前払金、流動資産 は登録されています」という情報が出る: 仕入先の勘定に、前払金などの特殊仕訳の取引があることを知らせるメッセージです。メッセージの説明では、伝票を転記したあとに、前払金などの振替転記や消込が必要かどうかを確かめるよう案内されています。この例の仕入先には前払金 100.00 EUR の未決済明細があり、ダイアログにも 100.00 EUR と表示されました。請求書の登録は「続行」でそのまま進められます。
- 転記した請求書が支払ブロックになる: 請求書と購買発注・入庫の差異(数量・価格・日程など)が許容範囲を超えると、転記はできますが、自動で支払ブロックされます。会計伝票の仕入先明細の「支払ブロック」に R が入り、1 つの明細だけの差異でも請求書全体がブロックされます。ブロックは、差異の理由がなくなっても解除するまで残ります。解除は T-CODE:MRBR で行います。
- 取り消したのに仕入先の明細が残っている: T-CODE:MR8M の取消では、財務会計の明細は消し込まれません。T-CODE:F-44 で、元の請求書と取消の明細を消し込みます。
まとめ
- T-CODE:MIRO では、会社コード → ヘッダ(日付・総額・税)→ 購買発注の割当 → 残高 0 の確認 → シミュレーション → 転記の順に進めます。
- T-CODE:MIR4 の「後続伝票」で、請求書から作られた会計伝票を確かめられます。
- 請求書を取り消すときは T-CODE:MR8M を使い、残った仕入先の明細を T-CODE:F-44 で消し込みます。
請求書照合のテーブルの関係は「【SAP MM】請求書照合テーブル関連図!RBKP/RSEG/RBCO解説」で解説しています。
購買発注を指定して残高が 0 になったのを確かめて、シミュレーションしてから転記するんですね!
うむ。取り消したときは、仕入先の明細を T-CODE:F-44 で消し込むのを忘れんようにするのじゃ。