この記事を読むメリット
- クレジットメモ依頼・デビットメモ依頼と、請求伝票(クレジットメモ・デビットメモ)の関係が分かる
- 請求書を参照してクレジットメモ依頼を登録し、請求ブロックを外して請求する手順が分かる
- 会計伝票と伝票フローで、債権が減る・増えることを確かめる方法が分かる
請求書を出したあとで、「輸送中に壊れた分を減額してほしい」「請求漏れの分を追加で請求したい」ということがあります。
SAP では、減額はクレジットメモ依頼、追加請求はデビットメモ依頼という受注伝票で登録し、そこから請求伝票(クレジットメモ・デビットメモ)を作ります。依頼を通すと、承認が済むまで請求を止めておけます。
この記事では、次の操作を画面を 1 つずつ追って解説します。
- T-CODE:VA01 で 請求書を参照してクレジットメモ依頼を登録する手順
- T-CODE:VA02 で 請求ブロックを外す手順
- T-CODE:VF01 で クレジットメモを作り、会計伝票を確かめる手順
- デビットメモ依頼・デビットメモの 仕訳の向きの違い
博士!請求書を出したあとで、壊れていた 2 個分を減額してほしいと言われました…どうすればいいですか?
うむ、それはクレジットメモ依頼じゃ。請求書を参照して登録し、承認が済んだら請求ブロックを外してクレジットメモを作るのじゃ。画面を追って説明していくぞい!
この記事のポイント
クレジットメモとデビットメモの概要
クレジットメモとデビットメモとは
クレジットメモって、返品のときに作るものじゃないんですか?
返品を参照して作ることもあるぞい。商品を引き取らず、承認が済んでから減額を計上するこの記事の例では、クレジットメモ依頼から作るのじゃよ。
クレジットメモは、請求済みの金額を減らすために作る請求伝票です。請求額が高すぎたとき(値引き漏れ・価格の誤り)や、品物に不良があったときに使います。
デビットメモは、請求額を追加するために作る請求伝票です。請求額が低すぎたとき(請求漏れ)に使います。
会計伝票では、クレジットメモは得意先の行が貸方(クレジット)になり、得意先の債権(売掛金)が減ります。
デビットメモは得意先の行が借方(デビット)になり、債権が増えます。
この記事では、承認が済むまで請求を止めておけるように、まず依頼(クレジットメモ依頼・デビットメモ依頼)という受注伝票を登録し、そこから請求伝票を作る手順を扱います。
依頼と請求伝票の種類は、次のとおりです。
| 区分 | 受注伝票(依頼) | 請求伝票 | 得意先の債権 |
|---|
| 減額 | クレジットメモ依頼(受注タイプ CR、明細カテゴリ G2N) | クレジットメモ(請求タイプ G2) | 減る(得意先が貸方) |
| 追加請求 | デビットメモ依頼(受注タイプ DR、明細カテゴリ L2N) | デビットメモ(請求タイプ L2) | 増える(得意先が借方) |
受注タイプは、ログオン言語の日本語・英語の画面では CR・DR と表示されます。伝票の中(テーブル VBAK の受注タイプ)には G2・L2 で入ります。
クレジットメモ依頼の明細は、出荷を経ずに受注から直接請求する明細です。
商品を引き取る返品(受注タイプ RE)とは違い、商品は引き取りません。
実務の例
請求書を出したあとで、納品した品物の一部が輸送中に破損していたなどの理由で、その分の代金を減額することがあります。減額を、上長の確認が済んでから計上したい場合もあります。
反対に、請求漏れがあったときは、その分を追加で請求します。
この記事の操作との対応は、次のとおりです。
SAP での処理の流れ
SAP では、クレジットメモもデビットメモも、次の流れで作ります。
STEP
依頼を登録する(T-CODE:VA01)
請求書や受注を参照して、依頼(受注伝票)を登録します。依頼には請求ブロックが初期値で入ります。
STEP
請求ブロックを外す(T-CODE:VA02)
STEP
請求する(T-CODE:VF01)
T-CODE:VF01 で 1 件ずつ請求し、クレジットメモ・デビットメモの請求伝票を保存します。会計への転記が正常に終わると、会計伝票ができます。
STEP
伝票フローと会計伝票を確かめる(T-CODE:VA03、T-CODE:FB03)
伝票フローで依頼から会計伝票までのつながりを、会計伝票で得意先の行の向き(貸方・借方)を確かめます。
ポイント
依頼に初期値で入る請求ブロックは、次のとおりです。
| 設定 | クレジットメモ依頼 | デビットメモ依頼 |
|---|
| 標準の設定 | 08 | 09 |
| この記事の例の設定 | Y8 | Y9 |
| 名前 | クレジットメモ確認 | デビットメモ確認 |
承認が済んだら請求ブロックを外して請求する、という運用ができます。
もし承認が済む前に、うっかり請求しようとしたらどうなるんですか?
請求ブロックが付いている間は、T-CODE:VF01 で実行しても請求伝票は作られんのじゃ。ログに理由が出るから、承認が済んだら請求ブロックを外して保存し、請求し直すのじゃ。
関連するトランザクションコードは次のとおりです。
| T-CODE | 内容 |
|---|
| VF04 | 一括請求更新(請求予定リストからまとめて請求。この記事では使いません) |
T-CODE:VF04 では、選択画面の「受注関連」にチェックを付けると、クレジットメモ依頼・デビットメモ依頼が請求一覧に出ます。
S/4HANA の Fiori には、次のアプリがあります(名前は英語のアプリ名)。
| アプリ ID | 名前 | 内容 |
|---|
| F1989・ F1989A | Manage Credit Memo Requests | クレジットメモ依頼を管理する |
| F1988・F1988A | Manage Debit Memo Requests | デビットメモ依頼を管理する |
| F3014 | Manage Sales Document Workflows | 承認ワークフローを設定する |
請求ブロックの代わりに、Fiori の承認ワークフローで承認する方法もあります。
承認ワークフローを使うときは、伝票タイプの設定から請求ブロックを外します。
クレジットメモ依頼を登録する(T-CODE:VA01)
使うデータ
営業部から「請求書 90005791 で請求した 10 個のうち 2 個が、輸送中に破損していたので、2 個分の代金を減額したい。減額は上長の確認後に計上したい」と依頼された場面を考えます。
この記事では、この依頼を例に画面を追って操作します。例で使うデータは次のとおりです。
| データ | この例の値 | 使うところ |
|---|
| 減額の元になる請求書 | 90005791(品目 T-AS101 を 10 EA、786.00 EUR) | T-CODE:VA01 で参照して、クレジットメモ依頼を登録します |
| 得意先 | T-S50A01 | 請求書の得意先です |
| 販売エリア | 1010 / 10 / 00(販売組織 / 流通チャネル / 製品部門) | T-CODE:VA01 でクレジットメモ依頼を登録する販売エリアです |
| 減額する数量 | 2 EA | クレジットメモ依頼の数量です |
| 受注理由 | 積送中の破損あり | クレジットメモ依頼の「受注管理」タブで選びます |
| 会社コード・会計年度 | 1010・2026 | T-CODE:FB03 で会計伝票を照会するときに入れます |
上記の値は、この記事で使った検証環境のものです。ご自分の環境では、請求書・得意先・販売エリア・受注理由・会社コード・会計年度を、それぞれの値に読み替えてください。
この記事の例の流れです。請求書 90005791 を参照してクレジットメモ依頼を登録し、請求ブロックを外してからクレジットメモを作ります。
1. 受注タイプと販売エリアを入れる
コマンドフィールドに VA01 と入力して Enter キーを押します。「販売伝票登録」が表示されます。
画面の見方
- 受注タイプ: 登録する受注伝票の種類です。
CR がクレジットメモ依頼です。
- 販売組織・流通チャネル・製品部門: 伝票を登録する販売エリアです。
- 参照登録: 既存の伝票(請求書など)を参照して登録します。
この例では、① に CR、② に 1010・10・00 を入れて ③「参照登録」を押します。
2. 参照する請求書を入れる
「参照登録」の画面が開きます。
画面の見方
- 請求Doc: 請求伝票を参照するタブです。
- 請求伝票: 参照する請求書の番号です。
- 明細選択: 参照する明細と数量を選ぶ画面に進みます。「コピー」を押すと、全明細をそのままコピーします。
この例では、① のタブで ② に 90005791 を入れ、③「明細選択」を押します。
3. 減額する数量を入れる
請求書の明細が表示されます。
画面の見方
- 発注残数量: クレジットメモ依頼にコピーする数量です。この例では初期値が 10(請求済数量と同じ)です。
- コピー: 選んだ明細をクレジットメモ依頼にコピーします。
この例では、① を 10 から 2 に変えて ②「コピー」を押します。
元の請求書を参照しても、一部の数量だけ減額できるんですか?
うむ。この例では、減額する 2 個分だけを依頼にコピーするのじゃ。
4. 請求ブロックと受注理由を確かめて保存する
「登録 クレジットメモ依頼: 概要」が表示されます。「受注管理」タブを開きます。
画面の見方
- 請求ブロック: 初期値で「クレジットメモ確認」が入っています。このままでは請求できません。
- 受注理由: 減額の理由です。
- 目標数量・正味額: 減額する数量と金額です。
- 保存: クレジットメモ依頼を保存します。
この例では、② に「積送中の破損あり」を選び、③ が 2 EA・157.20 EUR であることを確かめて ④「保存」を押します。
この例では、「クレジットメモ依頼 60000436 が保存されました」と表示されます。
請求ブロックを外す(T-CODE:VA02)
1. ブロックが付いたままでは請求できない(T-CODE:VF01)
請求ブロックが付いたまま T-CODE:VF01 で請求しようとすると、請求伝票は作られません。
画面の見方
- 処理ステータス: 「エラー」と表示されます。
- ログ: 請求伝票が作られなかった理由を表示します。
- メッセージ: 「請求伝票は生成されませんでした ログを参照してください」と表示されます。
② を押すと、理由が表示されます。
画面の見方
- エラーログ: 「伝票は請求のためブロックされています」と表示されます。
2. 請求ブロックを空にして保存する
承認が済んだら、コマンドフィールドに VA02 と入力して Enter キーを押し、販売伝票に 60000436 を入れて Enter キーを押します。
「受注管理」タブを開きます。
画面の見方
- 請求ブロック: 「クレジットメモ確認」が入っています。
① のリストで空欄を選びます。
画面の見方
- 請求ブロック: 空欄になります。
- 保存: 変更を保存します。
この例では、② を押すと「クレジットメモ依頼 60000436 が保存されました」と表示されます。
クレジットメモを作る(T-CODE:VF01)
1. クレジットメモ依頼を入れて実行する
コマンドフィールドに VF01 と入力して Enter キーを押します。「請求伝票登録」が表示されます。
画面の見方
- 伝票: 請求するクレジットメモ依頼の番号です。
- 実行: 請求伝票を作ります。
この例では、① に 60000436 を入れて ②「実行」を押します。
2. 金額を確かめて保存する
「クレジットメモ (G2) 登録: 請求明細概要」が表示されます。
画面の見方
- 請求タイプ: 「クレジットメモ」です。
- 請求済数量・正味額・税額: クレジットメモにする数量・金額・税額です。
- 保存: クレジットメモを保存します。
この例では、2 EA・正味額 157.20 EUR・税額 15.72 EUR を確かめて ③「保存」を押します。
この例では、「伝票 90005801 が保存されました」と表示されます。会計への転記が正常に終わると、会計伝票も作られます。
3. 伝票フローを確かめる(T-CODE:VA03)
コマンドフィールドに VA03 と入力し、販売伝票に 60000436 を入れて Enter キーを押し、「伝票フロー照会」を押します。
画面の見方
- クレジットメモ依頼から仕訳まで: クレジットメモ依頼 → クレジットメモ → 仕訳の順に表示されます。
この例では、標準受注 30000875 → 出荷伝票 80006598 → 請求書 90005791 とつながっています。
請求書の下に、クレジットメモ依頼 60000436 → クレジットメモ 90005801 → 仕訳 5000000511 がつながっています。
4. 結果を確かめる(T-CODE:FB03)
コマンドフィールドに FB03 と入力します。
この例では、会計伝票の番号 5000000511・会社コード 1010・会計年度 2026 を入れて Enter キーを押します。
画面の見方
- 参照伝票番号: 会計伝票の参照番号です。この例では、参照した元の請求書の番号
0090005791 が入っています。
- 得意先の行: 得意先の債権の行です。金額にマイナス(貸方)が付き、債権が減ります。
- 収益・税の行: 収益・売上控除・運賃・仮受消費税の行です。
この例では、会計伝票の行は次のとおりです(単位は EUR)。
| 勘定 | 借方 | 貸方 |
|---|
| 得意先 | | 172.92 |
| 収益 国内 – 製品 | 140.00 | |
| 売上控除 – 国内 | | 2.80 |
| 運賃収益/回収 | 20.00 | |
| 仮受消費税 | 15.72 | |
得意先の 172.92 EUR は、正味額 157.20 と税額 15.72 の合計です。
正味額 157.20(140.00 − 2.80 + 20.00)は、元の請求書の 786.00 EUR(10 EA)の 2 EA 分です。
この例では、伝票フローにクレジットメモ 90005801 と仕訳 5000000511 がつながり、会計伝票の得意先の行が貸方 172.92 EUR になっていれば完了です。
あとで会計伝票を見たとき、どの請求書を減額したものか分かるんですか?
この例では、参照伝票番号に元の請求書の番号 0090005791 が入っておるのじゃ。伝票フローでも、請求書の下にクレジットメモがつながって見えるぞい。
デビットメモの場合
追加請求は、受注タイプ DR(デビットメモ依頼)で同じように登録します。
請求ブロック「デビットメモ確認」を外して T-CODE:VF01 で請求すると、請求タイプ L2 のデビットメモができます。
画面の見方
- デビットメモ依頼: 受注タイプ
DR の伝票です。
- 目標数量・正味額: 追加で請求する数量と金額です。
デビットメモの会計伝票は、クレジットメモと向きが逆になります。
画面の見方
- 得意先の行: 借方です。得意先の債権が増えます。
- 収益・税の行: 貸方です。
この例は、受注 30000163 を参照したデビットメモ依頼 70000111 → デビットメモ 90005264 → 会計伝票 5000000301 です。
この例の会計伝票の行は、次のとおりです(単位は EUR)。
| 勘定 | 借方 | 貸方 |
|---|
| 得意先 | 34.51 | |
| 収益 国内 – 製品 | | 29.00 |
| 仮受消費税 | | 5.51 |
よくあるつまずき
- 請求しても「請求伝票は生成されませんでした」と出る: 依頼に請求ブロックが付いたままのことがあります。このとき、ログに「伝票は請求のためブロックされています」と出ます。
承認が済んだら、T-CODE:VA02 の「受注管理」タブで請求ブロックを外して保存し、もう一度請求します。
- クレジットメモ依頼と返品のどちらを使うか迷う: 返品でもクレジットメモ依頼でも、最後はクレジットメモを作って得意先の債権を減らすので、迷いやすいところです。
商品を引き取るかどうかで、次の表のように使い分けます。
| 商品 | 使う伝票 |
|---|
| 引き取る | 返品(受注タイプ RE)。返品出荷・入庫で商品を受け取り、クレジットメモは返品を参照して作ります |
| 引き取らない | クレジットメモ依頼(金額だけを減らします) |
在庫品の返品の流れは、次の記事で解説しています。
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まとめ
- 減額はクレジットメモ依頼(
CR)→ クレジットメモ(G2)、追加請求はデビットメモ依頼(DR)→ デビットメモ(L2)で処理します。
- 依頼には請求ブロックが初期値で付くので、承認が済んだら T-CODE:VA02 で外し、T-CODE:VF01 で請求します。
- クレジットメモは得意先の債権を減らし(貸方)、デビットメモは増やします(借方)。会計伝票と伝票フローで確かめます。
請求伝票のテーブルの関係は、次の記事で解説しています。
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クレジットメモは得意先が貸方、デビットメモは借方になるんですね!
うむ。依頼には請求ブロックが付くから、承認が済んだら VA02 で外してから請求するのを忘れんようにな。