この記事を読むメリット
- 購買価格の価格決定の流れが理解できるようになります。
- 購買価格の価格決定のカスタマイズ箇所と設定の概要が理解できるようになります。
SAPのMMモジュールの購買管理において、購買価格の正確な設定は企業のコスト管理における要です。仕入先や品目によって価格が異なったり、数量スケールや有効期間によって価格条件が変化する中で、システム上でこれらをどう管理・運用していくかは非常に重要な課題となります。
この記事では、MMモジュールにおける購買価格がカスタマイズによってどのように制御されているのかを解説していきます。全体概要フローにに加え、個別のカスタマイズ方法もわかりやすくまとめていますので、ぜひご参考ください!
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この記事のポイント
価格決定 カスタマイズオブジェクト一覧
価格決定規則におけるカスタマイズ関連オブジェクトは以下の通りです。
名称 | 詳細 |
---|
購買組織の価格決定表グループ | 価格決定表を決めるためのキー項目です。購買組織に設定します。 |
仕入先の価格決定表グループ | 価格決定表を決めるためのキー項目です。仕入先マスタに設定します。 |
価格決定表 | 複数の条件タイプ(価格要素)が定義されたものです。複数のキーの組み合わせにより購買伝票の登録時に自動提案される。価格決定表によって仕入金額が計算されます。 |
条件タイプ | 価格要素を定義したものです。条件タイプごとにマニュアル入力が可能かどうか、金額計算方法等の設定が可能です。 |
検索順序 | 条件テーブルの数・優先順位が定義されています。条件タイプに検索順序を割り当てて使用します。 |
条件テーブル | マスタ登録時のキーの組み合わせを定義したテーブルです。業務要件に応じたキーの組み合わせで条件テーブルの作成が可能です。 |
購買価格決定の概要
購買伝票を登録する際に、条件タイプ毎の金額情報が自動的に設定される仕組みになっています。
金額の情報を取得する方法は以下の流れとなります。
価格決定の順序
- 購買組織→購買組織の価格決定表Grp.、仕入先マスタ→仕入先の価格決定表Grp.
- 2つ価格決定表Grp.→価格決定表の割当
- 価格決定表→条件タイプ
- 条件タイプ→検索順序
- 検索順序→条件テーブル
- 価格決定
MM 価格決定の全体概要フロー
詳細は次の章で解説しますが、③~⑥のフローは価格決定表に沿って何度も繰り返し行われるフローです。それでは、早速それぞれのカスタマイズについて詳しく見ていきましょう!
購買価格決定のカスタマイズ
①購買組織の価格決定表Grp.と仕入先の価格決定表Grp.
まずは、価格決定表を割り当てる上で必要なKEY情報である2つの価格決定表グループについてみていきます。
対象のカスタマイズのパス
在庫/購買管理 > 購買管理 > 条件 > 定義: 価格決定プロセス > 定義: 決定表グループ >
– 定義: 仕入先の決定表グループ
– 定義: 購買組織の決定表グループ
– 割当: 決定表グループ -> 購買組織
特に分岐させたり、統合する必要がない場合は、下記のように同じコード値を用いることが多いです。
MM 購買組織の価格決定表グループ
仕入先の決定表グループは仕入先マスタ(BPマスタ)で割り当てるぞい!
仕入先に割り当てられている決定表グループは、BPマスタから確認することができます。
BPマスタ > 仕入先ロール > 購買管理ビュー > 購買データ > 追加購買データ > 決定表グループサプライヤ
MM 仕入先の価格決定表グループ
②価格決定表の割当
購買の価格決定表には、在庫転送オーダーや市場価格用に決定表割当が用意されています。
在庫転送オーダーの場合は、標準購買発注と異なり、購買組織の決定表グループ以外にも伝票タイプや供給プラントがKEYとなり価格決定表が割り当てられる使用になっています。
ここでは、標準購買発注に絞って解説していきます。
対象のカスタマイズのパス
在庫/購買管理 > 購買管理 > 条件 > 定義: 価格決定プロセス > 定義: 決定表割当 >
– 設定: 標準購買発注の価格決定表 ★
– 設定: 在庫転送オーダーの価格決定表
– 設定: 市場価格決定表
”購買組織の価格決定表×仕入先の価格決定表”の2つのキーの組み合わせにより、価格決定表は決定されます。
MM 価格決定表の割当
③価格決定表(Pricing Procedure)
割り当てられた価格決定表(Pricing Procedure)の具体的な中身が定義されています。
ステップと呼ばれる番号に沿って上から順番にアクセスしていき、各条件タイプを読み込んでいきます。
中には、条件タイプを定義せず価格決定表を整理したり、統計的に用いるためのステップも存在しています。ステップを順に読み込む過程で、集計はもちろん、金額の端数を処理したり、BWレポートや会計に連携する為の関連付けなどの複雑な処理を行っていきます。
対象のカスタマイズのパス
在庫/購買管理 > 購買管理 > 条件 > 定義: 価格決定プロセス > 設定: 価格決定表 – 購買管理
MMの価格決定表
今回は、上記の価格決定表の中でもStep250の条件タイプ“RL01(仕入先値引き)”に焦点を当てて、さらにカスタマイズをたどっていきましょう。
④条件タイプ(Condition Type)
ここでは、価格決定表で使われている条件タイプ(Condition Type)の定義を行っています。
条件タイプには、検索順序の他に、条件クラスや計算タイプ、マニュアル入力の可否、スケールの有無などを定義していきます。
対象のカスタマイズのパス
在庫/購買管理 > 購買管理 > 条件 > 定義: 価格決定プロセス > 定義: 条件タイプ >
– 設定: 価格設定条件タイプ – 購買管理
MM 条件タイプ
⑤検索順序(Access Sequence)
検索順序(Access Sequence)は、どの順序で条件テーブルを検索しにいくかを定義しています。
基本的に、条件の細かい(キーコンビネーションの細かい)順番に検索をかけるように設定し、該当するレコードを検索すると検索をストップするような定義を行うことができます。
対象のカスタマイズのパス
在庫/購買管理 > 購買管理 > 条件 > 定義: 価格決定プロセス > 定義: 購買の検索順序
下記のように、この画面からそれぞれのテーブルのKEY情報を確認することも可能です。
MM 条件の検索順序
⑥条件テーブル(Condition Table)
ここでは、条件テーブルを作成し、金額や比率を決定するためのキー項目を設定します。このキー項目が購買条件価格マスタ(T-CODE:MEK1)のキー項目になります。
また、条件テーブルを作成すると対応するテーブルが作成されます(クライアント非依存)。この時、テーブル名は「A+テーブル番号」となります。作成する際は、下記のように右側の項目群から必要な項目を選択し、生成ボタンを押すと選択した項目をKEYにもつ条件テーブルが作成されます。
対象のカスタマイズのパス
在庫/購買管理 > 購買管理 > 条件 > 定義: 価格決定プロセス > 設定: 条件テーブル
MM 条件テーブル
条件テクニックの構造は、こちらの記事も参考にすると理解が深まるぞい!
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まとめ
本記事では、MMの価格決定カスタマイズについて解説してきました。カスタマイズ作業自体は多岐にわたりますが、一つひとつの関連性を理解して進めることで、正確かつ柔軟な価格運用が実現できます。
お気づきの通り、SDの価格決定カスタマイズとほとんど同じです。ただ、実際に導入する場合は、SDのほうがより複雑になる傾向にあります。その為、初めて価格決定のカスタマイズを勉強する際は、MMの購買価格を先に勉強するのがおすすめです。
SDの販売価格カスタマイズは以下を参考にするとよいぞい!
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