この記事を読むメリット
- SAP MMの移動タイプの基本概念を理解できます。
- 実務でよく使用される移動タイプの一覧を把握できます。
博士!SAP MMで在庫移動する時に出てくる「移動タイプ」って何ですか?数字がたくさんあってよくわからなくて…
うむ、移動タイプは在庫管理の要となる重要な概念じゃ!まずは基本から丁寧に説明していこう。
SAP MMモジュールを扱う上で欠かせない概念の一つが「移動タイプ」です。
在庫管理や物流業務において正確な移動タイプの理解と運用はシステムの効果的な活用に直結します。
本記事では移動タイプの基本概念から具体的な活用例、そして実務で頻繁に使用される移動タイプの一覧まで、SAP MMの移動タイプについて詳しく解説します。
この記事のポイント
移動タイプとは?
移動タイプ(Movement Type)とは、SAP MMモジュールにおいて在庫の移動や変更を分類・制御するための3桁の数値コードです。
移動タイプ毎に「どのような目的の在庫移動によるものか」が定義されており、在庫移動が発生する際に、そのプロセスにおいて適切な「移動タイプ」を用いて入出庫伝票が作成されます。
移動タイプは単なる分類コードではないのじゃ。
この3桁の数字が、SAP システム全体の業務プロセスと密接に連携した制御機能を持っておるぞい!
移動タイプは、以下のような機能を持っています。
移動タイプの機能
- 在庫移動の分類:入庫、出庫、転送など、移動の性質を明確に区分
- 会計処理の制御:移動タイプに応じて適切な勘定科目への転記を自動化
- 在庫評価の管理:在庫価値の増減や評価方法の決定
- 承認プロセスの制御:移動タイプに応じた承認フローの設定
- レポート機能の強化:移動タイプ別の在庫分析や追跡機能
MMモジュールの担当者としては、入出庫伝票の移動タイプを確認し、どのような目的で在庫移動があったのかを判断するための追跡で用いることが多いかもしれませんね!
また、移動タイプはSAPで自動で判断され自動的に入出庫伝票が登録されることもありますが、手動で移動タイプを設定することもあります。ある程度頭に入れておくと良いでしょう。この後に移動タイプを一覧化しているのでブックマークしておくことをオススメします!
移動タイプを用いる例
実際の業務において、移動タイプがどのように活用されるかを具体例で見てみましょう。
例1:購買入庫処理
仕入先から商品が入庫される際、移動タイプ「101」(購買発注入庫)を使用します。この移動により、購買オーダーから在庫への振替が行われ、同時に仕入価格の確定と在庫価値の増加が会計システムに反映されます。
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例2:販売出荷
顧客への商品出荷時には移動タイプ「601」(出庫確認)を使用します。この移動により、在庫から売上原価への振替が自動的に行われ、在庫数量の減少と売上原価の計上が同時に処理されます。
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例3:在庫の場所間移転
同一プラント内での保管場所間移動では、移動タイプ「311」(保管場所間転送)を使用します。この移動により、場所別在庫の正確な管理と物流コストの適切な配賦が実現されます。
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例4:棚卸差異の調整
定期棚卸で発見された在庫差異については、移動タイプ「701」(棚卸増)や「702」(棚卸減)を使用して調整します。これにより、実在庫とシステム在庫の整合性を保ち、正確な財務報告が可能になります。
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移動タイプ一覧
移動タイプってどのくらいの種類があるんですか?覚えきれるか心配です…
安心するのじゃ!全部覚える必要はないぞい。まずは実務でよく使う主要なものから覚えていくのじゃ!
SAPで使用される主要な移動タイプを分類別に整理しました。実務でよく使用されるものを中心に紹介します。
【購買・発注関連】
移動タイプ | 説明 | 取消移動タイプ | 主な用途 |
---|
101 | 購買発注入庫 | 102 | 購買オーダーに基づく商品入庫 |
103 | 入庫保留在庫への発注入庫 | 104 | 品質検査待ちの商品入庫 |
105 | 入庫保留在庫の承認 | 106 | 保留在庫から利用可能在庫への移動 |
161 | 仕入返品 | 162 | 不良品等の仕入先への返品 |
501 | 発注外入庫(利用可能) | 502 | 購買オーダーなしでの緊急入庫 |
503 | 発注外入庫(検品中) | 504 | 品質検査が必要な緊急入庫 |
【生産関連】
移動タイプ | 説明 | 取消移動タイプ | 主な用途 |
---|
261 | 指図出庫 | 262 | 製造オーダーへの原材料払出 |
201 | 原価センタ出庫 | 202 | 間接材や消耗品の払出 |
221 | プロジェクト出庫 | 222 | プロジェクト用資材の払出 |
281 | ネットワーク出庫 | 282 | ネットワーク活動に対する資材の払出 |
531 | 副産物入庫 | 532 | 製造過程での副産物入庫 |
生産関連で重要なのは「261」じゃ!これは製造に必要な原材料を払い出す時の基本的な移動タイプなのじゃ。
【販売・出荷関連】
移動タイプ | 説明 | 取消移動タイプ | 主な用途 |
---|
601 | 出庫確認(SO) | 602 | 販売オーダーからの顧客出荷 |
641 | 出庫確認(STO) | 642 | 在庫転送オーダーでの出荷 |
643 | 出庫確認(会社間STO) | 644 | 会社間での在庫転送出荷 |
653 | 受注返品(利用可能) | 654 | 顧客からの製品返品処理 |
655 | 受注返品(検品中) | 656 | 品質確認が必要な返品処理 |
【在庫転送関連】
移動タイプ | 説明 | 取消移動タイプ | 主な用途 |
---|
301 | プラント間転送(1Step) | 302 | プラント間での直接在庫移動 |
303 | プラント間転送出庫(2Step) | 304 | プラント間転送の出荷側処理 |
305 | プラント間転送入庫(2Step) | 306 | プラント間転送の受入側処理 |
311 | 保管場所間転送(1Step) | 312 | 同一プラント内の場所移動 |
313 | 保管場所間転送出庫(2Step) | 314 | 保管場所間転送の出荷側 |
315 | 保管場所間転送入庫(2Step) | 316 | 保管場所間転送の受入側 |
良い質問じゃ!301は1Stepで同時に出荷と入庫が処理される。303と305は2Stepで、出荷処理と入庫処理を別々のタイミングで行うのじゃ。
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【在庫タイプ変更関連】
移動タイプ | 説明 | 取消移動タイプ | 主な用途 |
---|
321 | 検品中→利用可能 | 322 | 品質検査完了後の在庫解放 |
343 | 保留→利用可能 | 344 | 保留在庫の利用可能化 |
349 | 保留→検品中 | 350 | 保留在庫から品質検査への移動 |
【棚卸・調整関連】
移動タイプ | 説明 | 主な用途 |
---|
701 | 棚卸増(利用可能) | 棚卸による在庫増加調整 |
702 | 棚卸減(利用可能) | 棚卸による在庫減少調整 |
703 | 棚卸増(検品中) | 検品中在庫の棚卸調整 |
707 | 棚卸増(保留) | 保留在庫の棚卸調整 |
【廃棄・その他関連】
移動タイプ | 説明 | 取消移動タイプ | 主な用途 |
---|
551 | 廃棄(利用可能) | 552 | 不良品や期限切れ品の廃棄 |
553 | 廃棄(検品中) | 554 | 品質検査中在庫からの廃棄 |
555 | 廃棄(保留) | 556 | 保留在庫からの廃棄 |
561 | 利用可能在庫初期化 | 562 | 在庫の初期設定 |
563 | 検品中在庫初期化 | 564 | 品質検査中在庫の初期設定 |
これらの移動タイプを適切に選択し活用することで、SAP MMシステムにおける正確な在庫管理と効率的な業務運営が実現できます。実務では、各企業の業務プロセスに応じてカスタム移動タイプを設定することも可能です。
移動タイプの理解は、SAP MM運用の基礎となる重要な知識です。
日々の業務において適切な移動タイプを選択することで、システムの持つ強力な機能を最大限に活用し、競争力のある在庫管理体制を構築していきましょう。