【SAP FI】支払ワークベンチとは?

登場人物紹介

三崎レイナ
社会人1年目。新卒でITコンサルティングファームに就職。初配属がSAPプロジェクトにアサインされる。SAPがわからないことだらけで悩んでいたところ、会社の先輩にSAPラボの所長を紹介され、毎週末に所長とSAPのお勉強中!

博士
SAPラボの所長。SAP大好き博士!SAP導入プロジェクトを構想策定~運用保守まであらゆるフェーズを数多く経験。
いまは優しきおじいちゃんだが、プロマネバリバリの時代はかなり怖かったらしい。現在は引退し、SAPの後進育成と啓蒙活動に従事中!

この記事を読むメリット

  • SAP標準の従来の支払プログラム以外、支払ワークベンチのソリューションを知ることができます。
  • 支払ワークベンチで何ができるかを理解できます。

SAP FI(財務会計)モジュールにおいて最も重要な処理は、支払処理であると考えられます。

国内取引に対しては、SAP支払プログラム(RFFOJP_T)があり、国外取引には別途SAPプログラム(RFFOJP_L)が存在します。これらのプログラムによって出力されるDMEファイルは異なり、従来の支払媒体と呼ばれています。

また、S/4HANAになってから、SAP社は新たに支払ワークベンチというソリューションを提供しています。

博士

早速、支払ワークベンチについて説明するぞい!

この記事のポイント

全銀協フォーマットとは?

支払ワークベンチの説明をする前に、知っておかないといけないことは全銀協フォーマットです。

全銀協フォーマットは何でしょうか。

全銀協フォーマットとは、日本の銀行間での電子データ交換に使用される標準的なファイルフォーマットです。正式には「全銀協規定ファイルフォーマット」と呼ばれます。

このフォーマットは、日本の銀行間での取引データ(例えば、振込指示や入出金明細など)を一貫して扱うために制定されています。企業が複数の銀行に対して振込指示を行う際、全銀協フォーマットを使って一つのファイルを作成し、これを各銀行に送信することで、手間を省き、エラーを減らすことができます。

簡単に言うと、企業は全銀協フォーマットと異なるファイルを使って、ネットバンキングにアップロードすることができないです。イコール送金ができないことになります。

SAPの支払処理の最も重要な目的は銀行に送信するDMEファイルを作成することです。

ここで、DMEファイルとは日本語では「支払媒体書式」と呼ばれるもので、全銀協フォーマットを前提に各銀行要件に沿ったデータ形式で作成したファイルになります。DMEファイルでは、固定長ファイル、可変長ファイル、XMLファイルなど各銀行の要件に沿ったファイル形式で全銀協フォーマットに沿った支払データを作成することができます。

支払ワークベンチで何ができるか?

支払ワークベンチはカスタイマイズです。

カスタイマイズの目的も銀行に送信するDMEファイルを正しく作成することです。顧客の要件によって、このカスタイマイズを通してSAP標準プログラムSAPFPAYMに対する拡張ができます。

国内書式:JP_ZENGINKYO

テキスト:国内銀行振込(日本)

外国送金書式:JP_ZENGINKYO_I

テキスト:国際送金 (日本)

PS:このカスタイマイズはクライアント非依存です。

なお、直接標準書式を変更するのではなく、標準書式コピーして ZJP_ZENGINKYO_Iという名前の書式を使っていろいろ設定変更するのがおすすめです。

支払ワークベンチ関連設定

今回は外国送金の書式JP_ZENGINKYO_Iを例として説明します。

DMEE

トランザクショコード:DMEE

DMEE

ツリータイプ:PAYM(支払媒体書式)を入力

書式ツリー:設定したい書式ツリーを入力します。今回は外国送金の書式JP_ZENGINKYO_Iを入力します。

次の画面では、左の部分はDMEE書式ツリーです。右の部分は各項目の詳細設定になります。

左のDMEE書式ツリーの部分にたくさんの項目がありますが、それはどのような意味か疑問を持っている方がいると思います。

左のDMEE書式ツリーは全銀協フォーマットと同じ構造になっています。

DMEE

全銀協フォーマットとのマッピングをしてみましょう。

まずはHeader部分になります。

Header = ヘッダーレコード

全銀フォーマット

・Data Record Type ⇒ 項番1(コード区分)桁数は1桁です。項目内容を見ると、「1」がDMEファイルに出力されている想定です。

では、SAP上はどうなっているかを確認しましょう。

属性のタブにおいて、長:1で定義されています。桁数1という意味ですね。

DMEE

同じ属性タブ、下スクロールしたら、マッピング手順の設定があります。SAP標準では定数が選択されています。

DMEE

ソースタブにおいて、定数「1」が設定されています。

DMEE

全銀協フォーマットと一致しており、DMEファイルの1桁目は「1」が出力される形となります。


・Transacion Type ⇒ 項番2(種別コード)桁数は2桁です。項目内容を見ると、定数「35」がDMEファイルに出力されます。

DMEEの書式設定を確認すると、桁数は2桁であり、定数が設定されています。

DMEE
DMEE

定数の値を確認したら、全銀協フォーマットと一致している定数「35」が設定されています。

DMEE

・Code Page ⇒ 項番3(コード区分)桁数は1桁です。項目内容を見ると、固定値「0」がDMEファイルに出力されます。

・Customer Number at Bank ⇒ 項番4(送金依頼人コード)桁数は10桁です。項目内容を見ると、店番下3桁+取引先番号7桁の合計10桁の数字がDMEファイルに出力されます。

DMEE書式ツリーと全銀協フォーマットとのマッピングは1:1で前述と同じです。かつ、各項目の詳細設定の確認も上記方法で確認できるかと思います。

ただ、参考までにもうひとつ、定数ではない項目の設定がどうなっているかを一緒に確認しましょう。

Customer Number at Bankの桁数は10桁であり、マッピング手順は構造項目になります。

DMEE
DMEE

ソースタブを見ると、SAP標準プログラムの中に使われている構造、項目が設定されています。

これで、SAP標準プログラムはシステム上(カスタイマイズ)の店番と取引銀行を取得し、DMEファイルに出力しています。

DMEE

ここまでの内容でDMEE書式ツリーと全銀協フォーマットのマッピングが皆さんはできると思います。

では、実務上どのような要件があり、DMEE書式ツリーでどう実現するかを例をご紹介いたします。

支払ワークベンチ業務例

業務要件:支払対象伝票のヘッダー項目「参照番号」をDMEファイルに出力したい

私は出力箇所指定ないことを顧客と確認し、ヘッダーレコードの最後のダミー項目に出力することを提案しました。

DMEE書式ツリーでの実現

Step1:まずはDMEE書式ツリーの項目を特定します。

DMEE

Step2:Dummyの詳細設定を変更します。

・マッピング手順は定数ですが、Exitモジュールに変更します。

DMEE

・ソースタブにおいて、Exit機能を入力します。

SAP提供しているテンプレートをコピーしてZ*のExitを作って参照伝票番号を取得するコーティングします。

FM templates with extended interface

DMEE_EXIT_TEMPLATE_EXTENDED

DMEE_EXIT_TEMPLATE_EXTEND_ABA

DMEEEXIT

書式ツリーにたくさん項目があって、どうやってDummy項目の出力箇所を特定できるかが気になるかと思います。

DMEEツリーのすべての項目に独自のノードIDがあります。このノードIDと紐づいたら、この項目のみに有効なロジックになります。

DMEEEXIT

OBPM4

DMEEの設定が完了しましたら、F110の印刷処理(DMEファイル作成)のバリアントを作成する必要があります。

トランザクショコード:OBMP4

該当支払媒体書式を選択し、会社コードに対して、取引銀行ごとにバリアントを設定します。

OBPM4

ZTESTのバリアントを作成してみます。

OBPM4

支払媒体書式を入力します。

OBPM4

Enter押したら、データ媒体交換用指定を「0」で指定します。

OBPM4

これでZTESTバリアント作成完了です!

OBPM4

FBZP

DMEEの設定が完了したら、FBZPの支払媒体の設定を忘れないように!

FBZP

「以前の支払媒体プログラム使用」がデフォルト選択されていますが、「支払媒体ワークベンチ使用」に変更する必要があります。

FBZP

FBZPのカスタマイズを忘れた方は以下記事を合わせて復習するのがいかがでしょうか。

博士

支払ワークベンチについての説明は以上じゃ!

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この記事を書いた人

SAPコンサルタント(経験:FI)

大学院卒業後、独立系ITベンダに入社。
国内大手メーカーの運用プロジェクトにコンサルタントとして参画。
主にFIモジュールについて、知見を深めてまいりました。

現在大手医療器械メーカの導入PJの要件定義フェーズから参画しており、顧客要件のヒアリングや、環境構築、パラメータ設定、運用サポートなど上流から下流工程まで幅広い業務を経験しております。

実業務上の例を共有させていただき、皆さんのSAP情報収集・勉強の参考になれば嬉しいです!

この記事のポイント