三崎レイナ
社会人1年目。新卒でITコンサルティングファームに就職。初配属がSAPプロジェクトにアサインされる。SAPがわからないことだらけで悩んでいたところ、会社の先輩にSAPラボの所長を紹介され、毎週末に所長とSAPのお勉強中!
博士
SAPラボの所長。SAP大好き博士!SAP導入プロジェクトを構想策定~運用保守まであらゆるフェーズを数多く経験。
いまは優しきおじいちゃんだが、プロマネバリバリの時代はかなり怖かったらしい。現在は引退し、SAPの後進育成と啓蒙活動に従事中!
登場人物紹介
三崎レイナ
社会人1年目。新卒でITコンサルティングファームに就職。初配属がSAPプロジェクトにアサインされる。SAPがわからないことだらけで悩んでいたところ、会社の先輩にSAPラボの所長を紹介され、毎週末に所長とSAPのお勉強中!
博士
SAPラボの所長。SAP大好き博士!SAP導入プロジェクトを構想策定~運用保守まであらゆるフェーズを数多く経験。
いまは優しきおじいちゃんだが、プロマネバリバリの時代はかなり怖かったらしい。現在は引退し、SAPの後進育成と啓蒙活動に従事中!
この記事を読むメリット
今回は、原価センタ会計との比較で語られることの多い利益センタについてみていきます。この記事を読むことで、SAPでどのように利益センタ会計データが作成され、採算管理に役立っているのかについて知ることができます。それでは早速、内容を見ていきましょう!
博士!利益センタについて教えてください。
了解じゃ!
今回は利益センタ及び利益センタ会計の基本について解説していくぞい!
利益センタとは「会社の利益を管理する単位」のことをいいます。
原価センタが一般的に「会社の原価(費用)を管理する単位」として定義されるマスタであるのに対して、利益センタは「会社の利益を管理する単位」として定義されるマスタになります。
利益センタのマスタ粒度についてはプロジェクトごとに様々ありますが、組織の粒度や商品群の粒度で設定されるプロジェクトが多いです。
利益センタは最終的な帳票の分析軸になることが多いので、何の分析軸で分析したいのかという部分の要件を反映して定義されることも多いです。
原価センタ会計との大きな違いは、原価センタ会計がB/S勘定および収益勘定が管理対象外であるのに対して、利益センタ会計ではB/S勘定および収益勘定も管理対象になります。ただ、収益勘定と利益センタを紐づけて管理しているプロジェクトは非常に多いですが、B/S勘定まで細かく利益センタと紐づけて管理しているプロジェクトは、筆者の所感だとそこまで多くはない印象です。
下記が原価センタ会計と利益センタ会計の比較になります。
SAPでは原価センタと利益センタは紐づき関係を持っています。
原価センタマスタ照会(T-CODE:KS03)で確認してみると、原価センタに紐づく利益センタを確認することができます。この紐づき関係が原価センタ会計と利益センタ会計の連動性を考えるうえで、非常に重要なマスタ構造になりますので、「原価センタと利益センタは紐づき関係をもっているんだ!」と把握しておきましょう。
利益センタは品目とも紐づき関係をもっています。品目プラント別に利益センタを設定できるようになっているのがSAPの品目マスタ構造になります。この品目と利益センタが紐づいていることが品目別の収益管理をする際に非常に有用な役割をはたします。ですので、「利益センタは品目とも紐づき関係をもっているんだ!」と把握おきましょう。
次にFI会計伝票から利益センタ会計へのデータの流れについて解説します。
たとえば、下記の仕訳のように電話代を原価センタに計上するようなFI会計伝票を計上します。今回の伝票例だと電話代を原価センタ2140に計上しています。原価センタ2140は原価センタマスタ上、利益センタ1402と紐づき関係を持っていますので、会計明細の利益センタには1402が誘導されてセットされます。
原価センタ2140と利益センタ1402の紐づき関係(※下記図参照)
ユーザーがFI会計伝票を計上した裏側でSAPが自動で、管理会計伝票(通称CO伝票)、利益センタ伝票を作成しています。普段はあまり意識することがないですが、FIモジュールからCOモジュールとECPCAモジュールにデータを連携していると考えると、イメージがつきやすいと思います。
管理会計伝票:200245133(FI伝票:100000010よりSAP自動作成)
利益センタ伝票:737691(FI伝票:100000010よりSAP自動作成)
簡単に図解すると下記のようなイメージになります。
このSAPが自動で計上してくれている管理会計伝票と利益センタ会計伝票の連動性について意識を持っておくと、最終帳票までのコストフローを描く際にイメージしやすくなるため、ぜひ知っておきましょう。
下記は、上記のFI会計伝票と原価センタ会計及び利益センタ会計の連動性を踏まえたうえでの簡単な計上費用のデータの流れのイメージになります。
今までの内容で原価センタ会計と利益センタ会計は連動性がある点については理解できたかと思います。では、次に利益センタ会計の具体的な活用例を設例を用いながら見ていきましょう。
今回は各商品別に採算分析をしていると仮定して、その中で利益センタ会計がどのような役割を果たしているのかについてみていきたいと思います。
(設例)あなたは経営企画チームの一員として、来年度予算の一環で商品別の採算分析するように上司から指示がありました。売上は予定販売価格×予定販売数量、売上原価は来期標準原価×予定販売数量より利益センタ別に簡単に算定できましたが、部門共通費の割当がまだできていません。そのため、部門共通費を各製品別に配賦することで各製品別の採算を把握しようと考えています。
現在の分析状況としては下記のような状態です。部門共通費20,000千円を何とか各品目ごとに按分する必要があります。
ここで前提としては、下記のような原価センタ構造、利益センタ構造を用意していると仮定します。
組織軸では、原価センタ=部門γ(ガンマ)、利益センタ=部門γ(ガンマ)が用意されています。
品目軸では、原価センタ=α-1,α-2,β-1,β-2、利益センタ=α-1,α-2,β-1,β-2が用意されています。
利益センタグループでまとめることを前提に利益センタ階層構造は下記のような状態と仮定します。
利益センタを品目軸で用意する場合、通常は品目粒度で利益センタを用意することは少なく、商品群を表す品目グループ単位で利益センタを用意することが多いです。なぜなら、多品種生産のような場合には品目数が極めて多くなるため、その粒度で利益センタマスタを用意するのは大変だからです。
ただ、今回はあくまで設問例なので、品目レベルと同じ粒度で利益センタ及び原価センタを用意したと仮定します。
経営企画担当のあなたは部門γ(ガンマ)で発生した部門共通費20,000千円を品目軸の原価センタα-1,α-2,β-1,β-2に計画配賦をすることで、各製品別の部門共通費を把握したいと考えています。
原価センタ配賦のイメージは下記の図の通りになります。
上記の通り、部門γ(ガンマ)で発生した部門共通費20,000千円を統計キー数値に基づいて原価センタ計画配賦します。
今回は例示なので、部門共通費としてシンプルにまとめていますが、実務上は賃借料、水道光熱費、人件費など費目は多岐にわたるのが通常です。
按分する際の配賦基準値となる統計キー数値については、こちらの記事で解説していますので、併せて確認してみると理解が深まると思います。
利益センタ会計を有効にしておくと、原価センタ計画配賦に基づいて利益センタ会計にも計画データが作成されます。そのため、SAPは裏側で下記のような利益センタデータを作成してくれている形になります。
原価センタ会計では冒頭で比較した通り、収益勘定との紐づけは一般的に行いません。そのため、原価センタ会計の情報だけだと売上データなどとの紐づけが難しくなります。しかし、利益センタ会計だと収益勘定、費用勘定ともに管理対象となるため、売上のような収益勘定も利益センタと紐づけて把握することが可能になります。
このことが、最終的なPL帳票で分析するときに売上、売上原価、販管費などを上から下まで一気通貫して利益センタ軸で分析することを可能にしています。(※補足ですが、売上原価はCOPAのほうが原価構成別に粒度細かく売上原価データを持っているので、そちらのデータセットを用いることが実務上は多いです。)
今回の設例では利益センタを品目軸で各品目別に用意していますので、利益センタ会計に紐づくデータを用いて、各品目α-1、α-2、β-1、β-2の分析軸でPLデータを分析することが可能になります。
その結果、利益センタ会計のPLデータを用いて、
・品目β-2は売上高は一番高いが営業利益は出ておらず収益性が低い
・品目α-1は売上高は一番低いが営業利益率は最も高く収益性が高い
などを分析することが可能になります。
利益センタ会計の利用イメージが湧きました。
今回はあくまで設例なので非常にシンプルじゃが、管理会計の実務レベルになるとコストフロー含めて、非常に複雑になるケースが多いぞい。最終帳票では何のモジュールのどのデータを取得してきているのかをしっかりと意識することがとても重要じゃ!
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SAPコンサルタント(経験:FI/CO/ABAP)
米国公認会計士(ワシントン州)
新卒でSIerに入社して、初配属がSAPプロジェクト。その後ITコンサルファーム、不動産スタートアップを経て、システムコンサル会社を起業。
新卒時代にSAPを勉強したくても、SAP情報サイトが少なくキャッチアップに苦労した経験から、SAPをなるだけ簡単にわかりやすくをモットーにSAPラボを運営しつつ、SAP業界の裾野を広げるべく活動中!
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