この記事を読むメリット
- COモジュールの原価要素について基本を理解することができます。
- FIモジュールの勘定コードとCOモジュールの原価要素の違いを理解することができます。
同じコードなのにもかかわらず、ある時は原価要素と言ったり、ある時は勘定コードと言ったり、SAPのなかでも非常にわかりにくい存在である原価要素。本記事では、FIとCOのつながりを意識しつつ、図解を用いて原価要素を解説します。本記事で原価要素についての基本をマスターしましょう!
この記事のポイント
原価要素とは
原価要素ってよく聞くんですけど、いまいちPL勘定コードとの違いがわかりにくいです。
原価要素はCOモジュールでの表現じゃ!いまから概念を説明していくので、まずはざっくりとしたイメージを持つことが重要じゃ!
原価要素とは、コストオブジェクト(Ex.原価センタ、指図)に費用を計上するために必要となるCOモジュールでのマスタになります。FI会計伝票でP/L勘定コード使用して、原価センタのようなコストオブジェクトに費用を計上する場合には原価要素登録されていることが必要になります。
1次原価要素と2次原価要素
SAPの原価要素は、1次原価要素と2次原価要素に大別されます。
1次原価要素
1次原価要素は勘定タイプが1次原価または収益の勘定。FIでのPL勘定とほぼ同じという理解で実務上は特に問題はない。COモジュールだと1次原価要素という表現になるが、FIモジュールだとPL勘定や損益勘定という表現になる。ざっくりとFIのPL勘定コードをCO観点からは1次原価要素と呼ぶのだと捉えておけばOK。
2次原価要素
2次原価要素は勘定タイプが2次原価の勘定。COモジュール内だけで利用される。配賦や活動タイプによる活動費用計上など、コストオブジェクト間の移動に利用。
原価要素(G/L勘定タイプの設定)
1次原価要素であるか、2次原価要素であるかについては、T-CODE:FS00のG/L勘定タイプから確認することが可能です。
G/L勘定タイプの設定
1次原価または収益:1次原価要素
2次原価:2次原価要素
原価要素(原価要素タイプの設定)
2次原価要素の場合、原価要素タイプは使用するCOのトランザクション(Ex.配賦、活動計算、決済)を踏まえて決定する必要があります。特に下記の原価要素タイプは重要になります。
原価要素タイプ | 使用 用途 | 設定対象 オブジェクト | 概要 |
---|
21 | 決済 | 配分構造 | 決済時に使用する配分構造に設定 |
31 | 仕掛品 計算 | 結果分析バージョン | 結果分析バージョンに設定 |
41 | 間接比率 | 原価計算表 | 原価積上での間接比率計算のために設定 |
42 | 配賦 | 配賦周期セグメント | 配賦周期セグメントの配分原価要素に設定 |
43 | 活動計算 | 活動タイプ | 活動タイプの配分原価要素に設定 |
原価要素タイプ
原価要素(CO)と勘定コード(FI)との比較
ここからは具体的にモジュール間での勘定コード(FI)と原価要素(CO)の関係性についてみていきます。
例えば、FI会計伝票からコストオブジェクト(ここでは原価センタ)に対して、費用を計上することを考えてみます。原価センタ(間接部門)で人件費と水道代が発生した際に、FI会計伝票より原価センタ(間接部門)に対して、PL勘定コード人件費とPL勘定コード水道代を使用して計上します。
FIの観点からは、PL勘定コード人件費とPL勘定コード水道代を原価センタ(間接部門)に計上したと表現できます。
一方で、COの観点からは1次原価要素の人件費と1次原価要素の水道代を原価センタ(間接部門)に計上した表現できます。
両者は実質的に同じことを言っているのですが、SAPではコストオブジェクトに費用計上する際にPL勘定コードに原価要素登録を求めており、この観点よりFIではPL勘定コードと呼ばれるものが、COでは1次原価要素と名前を変えて呼ばれることがあります。
SAP的にはPL勘定コードに原価要素登録されるという関係性があるため、実質的にはPL勘定コードと1次原価要素はモジュール観点からの表現の違いであって、実質的にはほとんど同じものになります。ただし、すべてのPL勘定コードに対して1次原価要素登録されるというわけではなく、なかにはPL勘定コードだが、原価要素登録しないものも存在するため、両者は完全一致するものではないということに留意しておくことが必要です。
1次原価要素(CO)と2次原価要素(CO)との比較
次に1次原価要素と2次原価要素とを比較していきます。
1次原価要素はFIモジュールからCOモジュールへのモジュール間のデータ連携の入り口として機能しているのに対して、2次原価要素はCOモジュール内でのコストオブジェクト間の移動を管理するための原価要素になります。具体的に、工場の間接部門で発生した人件費や水道代などを工場の直接部門に配賦するケースを考えてみます。
上記の例だと、FI会計伝票より、原価センタ(間接部門)に人件費と水道代が計上されています。FIモジュールからCOモジュールへの連携なので、1次原価要素でデータ連携されています。他方、配賦による原価センタ(間接部門)→原価センタ(直接部門)へのCOモジュール内での移動にあたり、1次原価要素ではなく2次原価要素で金額が按分されています。どのような基準値に基づいて按分計算するのかについてはプロジェクトにより様々ですが、一般的には統計キー数値を用いて配賦の按分計算するプロジェクトが多いです。統計キー数値については別の記事で詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。
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なお、ここでも留意事項があります。
一般的にはCOモジュール内でのコストオブジェクト間の移動には2次原価要素が用いられるケースが多いですが、これも必ずではありません。同じ原価センタ→原価センタでの按分計算でも配賦以外に付替といって、1次原価要素でコストオブジェクト間の移動をするケースもあります。
SAPはプロジェクトによって要件は様々であり、業界によっても管理会計の考え方が異なることも多いため、1つとして同じプロジェクトはありません。そのため、他人のプロジェクト経験を聞くだけでも結構勉強になったりします。
「うちのプロジェクトでは原価センタ付替採用しているよ!」など、もし、お酒を飲みながらのSAPプロジェクト談義をご一緒していただける方がいらっしゃいましたら、お問い合わせよりお願いします(笑)
原価要素(CO)と勘定コード(FI)の守備範囲
最後に勘定コード(FI)と原価要素(CO)の各々の守備範囲を確認します。
簡略的に図解すると、上記の通りになります。
勘定コード(FI)にはPL勘定とBS勘定がありますが、原価要素登録の対象になるのはあくまでPL勘定になります。BS勘定については、原価要素登録はされません。先ほども述べた通り、PL勘定は1次原価要素とほぼ同じ範囲のものではありますが、完全に一致するわけではありません。PL勘定であっても、1次原価要素登録せずに使用するケースもありますので、その点には留意が必要です。
まずはざっくりとして理解で十分じゃ!徐々にSAPプロジェクトでの経験を通じて、原価要素への解像度を高めていくのじゃ!