この記事を読むメリット
- SAP AA(Asset Accounting)固定資産モジュールの基本的な処理を知ることです。
- 固定資産マスタを登録・変更・照会などすることができます。
SAP AA(Asset Accounting)固定資産モジュールは、企業の固定資産を管理・追跡するための重要なモジュールです。
この固定資産モジュールでは、固定資産の取得、減価償却、売却、廃棄などのプロセスを管理できます。
重要な減価償却の計算においては、定額法や定率法など、さまざまな減価償却方法に対応しており、正確な計算が可能です。また、資産の評価やレポート機能を用いることで、企業の資産のライフサイクル全体を効率的に管理できます。
この記事のポイント
固定資産とは?
固定資産は個別資産として認識できる有形または無形の資産です。
皆さんが会社で使用しているパソコンやコピー機、オフィスの机などは、企業が購入した有形資産です。一方、ソフトウェアや特許技術などは無形資産に分類されます。
固定資産の取得、減価償却、売却、廃棄といったプロセスは、どの企業でも行う業務であるため、まずは会計上の処理について説明します。
固定資産の取得
固定資産の取得方法はいくつかありますが、一般的には購入またはリースの形態になります。
固定資産の取得とともに、取得原価も計上する必要があります。資産の購入にかかった総コストには、購入価格、関連する輸送費、設置費用、税金などが含まれます。
【仕訳】
固定資産 / 債務
取得後、固定資産マスタに必要な情報を登録します。これには、資産番号、資産名、取得日、取得原価などが含まれます。
固定資産を取得した後、通常は使用開始日から減価償却を開始します。これにより、資産の価値が時間とともに減少していくことを会計上で反映します。
固定資産の減価償却
固定資産を使用し始めた日から、その価値が毎日下がることは皆さんご存じだと思います。
この減価償却は、実際の利益を正しく反映するために、適切に減価償却費用を計上する必要があります。
減価償却の方法としては、以下3つがあります。
- 定額法:
- 毎年同じ額を減価償却する方法。資産の取得原価を耐用年数で割ります。
- 定率法:
- 資産の帳簿価額に一定の割合を掛けて減価償却する方法。初期の減価償却費用が大きく、年々減少します。
- 生産高比例法:
- 資産の使用量に基づいて減価償却を行う方法。生産量や稼働時間に応じて計上します。
減価償却の方法は複数ありますが、どの償却方法を適用するかについては固定資産ごとに異なります。
例えば、車は走行距離に基づいて減価償却を計算するのが理論上は合理的です。また、商業用の建物やオフィスビルなどは、最初の数年で価値が大きく減少するため、初期の減価償却額が大きく、その後は徐々に減少するのが一般的です。
【仕訳】
減価償却費 / 減価償却累計額
固定資産の除却、売却、廃棄
固定資産を一定の期間使用した後、もう使わなくなる場合があります。このような時には、どのような会計処理があるか確認していきましょう。
① 除却:固定資産は不使用で倉庫に放置する時、固定資産を帳簿から外す必要があります。
② 売却:固定資産は不使用となり、売却します。
③ 廃棄:固定資産は不使用になり、廃棄します。
【除却残存価値ある仕訳】
減価償却累計額 / 固定資産
除却損
貯蔵品
【除却残存価値ない仕訳】
減価償却累計額 / 固定資産
除却損
【売却仕訳】
減価償却累計額 / 固定資産
現金
固定資産売却損
【廃棄仕訳】
減価償却累計額 / 固定資産
固定資産廃棄損 / 現金
固定資産については、実業務上、これらの処理を行う必要があります。そのため、SAPを活用してこれらのプロセスを実現していきます。
固定資産マスタの登録
固定資産を取得した後、SAP上固定資産の名前、取得日、取得原価などの情報を登録し、管理する必要があります。
トランザクショコード:AS01
- 資産クラス:
- 固定資産を分類します。上記スクリーンショットの通り、不動産、建物など固定資産の種類を記入します。
- 各資産クラスについて、制御パラメータおよびデフォルト値を減価償却計算およびその他のマスタデータに対して定義できます。
- 各資産マスタレコードを、1 つの資産に割り当てることができます。
- 会社コード:どの会社の資産か、会社コードを入力します。
- 類似資産の数:資産マスタ保存時に登録する類似の資産の数です。
【参照部分の項目】
- 資産:資産の新規登録時の参照資産の番号を入力します。
- 資産補助番号:資産の新規登録時の参照資産補助番号を入力します。
- 参照資産を使う場合、参照資産のマスタレコードの項目の値がデフォルト値として提案されます。
- 会社コード:参照会社コード
- 過年度修正資産:過年度修正の資産マスタレコードを登録したい場合、このフラグを設定します。
次に進めると、一般データタブの内容を入力します。
- テキスト:資産の名前を入力します。
- 資産番号テキスト:資産番号の任意の名称を入力します。テキストと同じ内容をしてよいです。
- 勘定設定:特定の取引が実行される際に転記される勘定コードです。
- 数量:数量と単位を入力します。
時間依存タブに内容を入力します。
- 原価センタ:原価センタを入力します。
- 原価センタは必須入力であり、固定資産償却、資産売却による損失が原価センタに集計されます。
- 内部指図:必要に応じて内部指図を入力します。
- ブラント:プラントを入力します。
- 場所:資産場所を入力します。
- 機能領域:機能領域を入力します。経験したプロジェクトが使用していないです。
原産地のタブで資産取得関連の情報を入力します。
- 仕入先:資産取得のところを記入します。
- 資産種類:新規か中古かをチェックします。
- 取引先コード:関係会社の場合、取引先コードを入力します。
- 振替元資産:資産に振り替えられた元資産の番号を入力します。
- 一次取得日:元資産 (たとえば、建設仮勘定) の資本化日付を設定します。
償却領域タブで償却関連の内容を入力します。
日本のプロジェクトの場合、基本IFRS基準、日本基準が必要で、それ以外法人税など、クライアント要件で設定します。
すべて記入しましたら、保存します。
固定資産マスタの変更
一度登録した固定資産マスタを後から名称や耐用年数や原価センタなどを変更したい場合、固定資産マスタ変更のトランザクションコードを利用します。
トランザクションコード:AS02
固定資産マスタ変更の第一画面
資産番号と会社コードを入力して、Enterを押して変更画面に遷移します。
グレーアウトされた項目以外、すべて変更可能な項目です。必要に応じて修正を行ったらよいです。
※固定資産マスタの変更は、単なるテキストの修正と違い、「減価償却計算」や「財務諸表」に直結するため、いくつか注意すべき点があります。
- 償却領域の設定変更
- 耐用年数や償却キーの変更: 変更を保存した瞬間、システムが自動的に「再計算」を行います。当期中の未転記の償却額が、期末までに調整される仕組みです。
- 変更のタイミング: 期の途中で耐用年数を変えると、その年度の償却費が瞬と変わるため、経理部門との合意が必須です。
- 原価センタや事業領域などの項目変更
- 「いつから」変えるか: SAPの固定資産は「履歴」を持っています。単純に上書きするのではなく、「時間依存」タブで有効期間(開始日・終了日)を適切に設定しないと、過去のコスト配分まで変わってしまうリスクがあります。
- 原価センターの不整合: 資産の原価センタを変更したのに、関連する固定資産台帳のグルーピングとズレてしまい、管理会計側でエラーが出るケースがよくあります。
固定資産マスタの照会
固定資産マスタの登録内容を確認したい場合、照会のトランザクションコードを利用します。
トランザクションコード:AS03
固定資産マスタ照会の第一画面↓
固定資産マスタ変更の第一画面と同じです。資産番号と会社コードを入力し、Enterを押します。
変更モードと異なり、すべての項目がグレーアウトされています。
固定資産マスタの削除
登録した固定資産マスタが不要となる場合、削除のトランザクションコードを利用して削除することができます。
トランザクションコード:AS06
※実績が発生してない場合のみ削除が可能です。
まとめ
固定資産マスタは、会計帳簿の正当性を支える最重要データの一つです。
各機能(登録・変更・照会・削除)の特性と実務上の注意点を以下にまとめます。
■ 登録 (AS01)
- コピー登録: 既存の資産をモデルにして登録することで、入力ミスを減らし効率化できます。
■ 変更 (AS02)
- 再計算のトリガー: 償却に関する項目を変更すると、システムが即座に今期末までの償却費を再計算します。
- 時間依存データ: 原価センターなどを変更する際は、履歴を保持するために「有効期間」を正しく設定してください。
■ 照会 (AS03)
- 登録済マスタの確認: 登録内容が正しいかどうかや、耐用年数などの確認をします。
■ 削除 (AS06)
- 物理削除の条件: 伝票が一件も計上されていない(残高ゼロかつ履歴なし)場合に限り、システムから完全に削除可能です。