この記事を読むメリット
- 初心者向け:PPの概要・基本を理解することができます。
- 中級者以上向け:PP関連のマスタ・テーブル関連図・トランザクションコードに関するナレッジを知ることができます。
SAPのPPモジュールってどのような機能があるんだろう?
実際のPP業務で使う役立つ情報が欲しいなあ。
SAPのERP(S/4HANA)のモジュールで代表的なモジュールのひとつである、PP:生産管理(Production Planning)。製造業関連のSAPプロジェクト以外の場合は、PPモジュール自体が導入されていない場合も多いため、 どのような機能があるのかイメージつかない方も多いかと思います。
PPモジュールはSAPの主要モジュール(FI/CO/MM/PP/SD)の中でも特に知見者が少なく、PPモジュールの経験者は引く手あまたになることも!
今回はそんなSAP PPモジュールの概要を解説していきます。
本記事では、PPに関する実際のプロジェクト業務で使える以下のようなナレッジについてもまとめています!
・よく使われるPPトランザクションコード
・PP関連のテーブル
・PPでよく使われるマスタ
・PPと関連が強いモジュール
この記事の内容をしっかり理解できれば、PPモジュールのエンジニア・コンサルタントとして第一歩を踏み出せるぞい!
この記事ではPPモジュールについてまとめているので、ぜひブックマークしたうえで中身を細かくチェックしてみてください。
SAP PP(生産管理)モジュールとは?
SAP PP(生産管理)モジュールは主に生産計画および生産管理をサポートする機能群です。
主に生産プロセスの効率化と最適化を目的とし、製造業に必要な生産計画や製造指図に基づく生産実行、各製造工程への資材の投入や製造活動実績の管理などを行います。
SAP PPはざっくりと以下のような機能を持っています。
生産計画
生産計画は、企業がどのように製品を製造し、効率的に顧客の需要を満たすかを決定するための最初のステップです。SAP PPでは、以下のプロセスを通じて生産計画を立てます。
需要予測
需要予測は、生産計画の最初のステップであり、今後の製品需要を予測するためのプロセスです。過去の販売データや市場動向を基に、将来的にどれだけの製品需要があるかを予測します。この予測により、生産計画の精度が向上し、過剰在庫や品切れを防ぐことができます。
生産計画策定
需要予測のデータを元に、実際の生産計画を立てます。どの製品をいつ、どのくらい生産するかを決めるプロセスです。生産計画策定では、設備の製造能力や資材の利用可能性を考慮しながら、効率的なスケジュールを作成します。SAP PPでは、これらの生産計画をシステム上で一元管理します。
資材所要計画(MRP)
資材所要計画(MRP:Material Requirements Planning)は、生産計画を実行するために必要な部品や材料を適切なタイミングで確保するためのプロセスです。製品の生産に必要な資材がいつ、どれだけ必要かを計算し、適切な供給を確保することで、無駄な在庫を持たないようにします。MRPの機能により、どれだけの原材料が必要になるかを計算することができ、その後の購買発注依頼につながる情報となります。
生産実行
生産計画が確定すると、次のステップは生産実行です。これは、実際に生産計画策定された製品を作り出すためのプロセスです。
製造指図
製造指図(Manufacturing Order)は、具体的な製造作業を指示するものです。製造する製品の種類、数量、使用する原材料、製造工程や製造順序などの詳細を記載した指示書が作成されます。この指図は、工場内での生産作業の基盤となり、進捗状況の追跡や生産コストの管理にも活用されます。SAP PPモジュールでは、製造指図の発行から指図状況を表す指図ステータス管理を効率的に行い、実際の製造の流れをデータにより可視化します。
リソース管理
リソース管理は、製造に必要な設備の稼働率や人材を最適に配置・活用するためのプロセスです。これにより、効率的な生産体制を維持し、生産遅延を最小限に抑えます。
設備能力管理
設備能力管理は、工場内の機械や設備の稼働状況を管理し、生産能力を最大限に引き出すための機能です。設備の稼働率や保守スケジュールを把握し、効率的な使用をサポートします。また、工場内の定期修繕のような定期的メンテナンスを行うことで、設備の故障や生産停止を防ぐことができます。これにより、生産ラインの停止による無駄を削減し、安定した製品供給を実現します。
労力管理
労力管理は、製造プロセスに必要な人材の管理を行う機能です。どの作業にどれだけの労働力が必要かを計画し、最適なタイミングで人材を配置することで、生産効率を向上させます。作業者のスケジュールや労働時間の管理も可能で、生産ラインでの無駄な待機時間を減らすことができます。
SAP PPモジュールでよく使うトランザクションコード
PPでは多数のトランザクションコードが使用されています。
代表的なトランザクションコードを下記の記事で一覧化していますので、ぜひチェックしてみてください。
SAP PPモジュールのテーブル関連図
SAPではカスタマイズデータ・マスタデータ・トランザクションデータはテーブルに格納されています。
以下ではPPモジュールで使用されているテーブルの紹介とテーブル関連図の解説記事へのリンクをまとめているので、ぜひ参考にしてみて下さい。
テーブル関連図リンク | 概要 |
---|---|
BOM (Bill of Material) | BOMについてのテーブル関連図。 |
作業手順 (Routing) | 作業手順についてのテーブル関連図。 |
作業区 (WorkArea) | 作業区についてのテーブル関連図。 |
製造バージョン (Production Version) | 製造バージョンについてのテーブル関連図。 |
製造指図 (Production Order) | 製造指図についてのテーブル関連図。 |
SAP PPのマスタ設定
SAPではマスタデータを事前に登録することでトランザクションデータを反映できる構造になっています。
PPモジュールでいうと、品目表としてのBOM(Bill of Material)や製造工程としての作業区、製造手順を示した作業手順が代表的なマスタになります。
マスタ設定 | 概要 |
---|---|
BOM | 製造品目を管理する単位になります。 |
作業区 | 製造場所を管理する単位になります。 |
作業手順 | 製造の作業手順を管理する単位になります。 |
製造バージョン | BOMと作業手順の組み合わせを管理する単位になります。 |
SAP PPと関連が強いモジュール
管理会計(CO)
COモジュールでは製造原価管理(CO-PC)で製品原価を管理します。PPモジュールで製造指図に登録した製造活動の実績データはCOモジュールにデータ連携され、製造活動費用として計上されることになります。そのため、PPに最も関連性が高いモジュールがCOモジュール(CO-PC)になります。
まとめ
SAP PPモジュールは、製造業の業種の会社に多く導入されるSAPモジュールになります。PPモジュールは公開情報が他のモジュールよりも少なく、相対的にプロジェクト数が少ないことに起因して、PP経験者も多くないため、PP人材は常に枯渇気味です。
モジュールとしての難易度も高く、しっかり理解するのはなかなか難しいですが、PPモジュールの経験を積むことによりSAP人材の中でも希少性の高い人材になることができます。
ここで解説したPPナレッジがプロジェクトの成功の一つの種になれば幸いです。
PPのまとめは以上じゃ!