この記事を読むメリット
SAP SD における仕入先直送(サードパーティ処理)の業務フローが理解できる
TAS明細カテゴリの役割と、受注→購買発注→仕入先請求→得意先請求の流れが把握できる
仕入先直送(Third-Party Processing)とは、自社倉庫を経由せずに仕入先(サプライヤー)から直接得意先(顧客)へ商品を届ける 業務プロセスです。 SAP S/4HANA の SD(販売管理)モジュールでは、受注時に 明細カテゴリ TAS を使うことで、このプロセスが自動的に購買発注と連動します。 本記事では、実際の SAP 画面を使って仕入先直送の一連のフローを解説します。
博士、仕入先直送って聞いたことはあるんですが、普通の受注処理と何が違うんですか?
通常の受注は自社倉庫から出荷するが、仕入先直送は仕入先が直接得意先に商品を送るのじゃ! SAP では明細カテゴリ「TAS」を使うことで、受注に紐づく購買発注が自動生成される仕組みになっておるぞい!
この記事のポイント
仕入先直送とは
通常の販売プロセス(受注→出荷→請求)では、商品は自社倉庫を経由します。一方、仕入先直送では以下のように流れが変わります。
通常フロー: 得意先 ← 自社倉庫 ← 仕入先
仕入先直送: 得意先 ← 仕入先(自社を経由しない)
SAP では、受注明細カテゴリに TAS(仕入先直送明細) を設定することで、購買依頼が自動生成され、そこから購買発注を作成できます。仕入先から届いた請求書を MIRO で登録すると、VF01 での得意先請求書作成が可能になります。
仕入先直送の業務フロー
仕入先直送の一連のフローは以下のとおりです。
受注登録(VA01)
購買発注作成(ME21N)
仕入先請求書登録(MIRO)
得意先請求書登録(VF01)
① 受注登録・確認(T-CODE: VA01 / VA03)
受注登録時、明細カテゴリに TAS を設定します。TAS は「仕入先直送明細」を意味し、この設定により購買依頼が自動生成されます。
既にVA01(受注登録)で作成した仕入先直送の受注伝票を見てみましょう。
VA03(受注照会)で受注 7584 を開くと、明細欄の「明力(明細カテゴリ)」列に TAS が表示されていることを確認できます。
▲ VA03 概要画面。品目 6101545 の明細カテゴリが TAS になっており、「仕入先直送明細」と表示されています。
「明細詳細」タブを開くと、明細カテゴリ欄に TAS / 仕入先直送明細 と表示されます。
▲ 明細詳細タブ。明細カテゴリ「TAS」と「仕入先直送明細」ラベルが確認できます。
また、受注を登録した時に購買依頼が自動作成 されます。その際の購買依頼伝票は受注明細の「納入日程行」タブにて確認 できます。(以下参照)
TAS を設定するだけで購買発注と連動するんですね!どこで設定するんですか?
品目マスタの MRP タイプや品目カテゴリグループ、それに品目カテゴリ決定テーブル(カスタマイズ)で制御されておるぞい! 品目マスタで正しく設定されていれば、受注登録時に自動的に TAS が割り当てられるのじゃ!
② 購買発注作成(T-CODE: ME21N)
TAS 明細が含まれた受注を保存すると、バックグラウンドで購買依頼が自動生成されます。購買担当者はその購買依頼を参照して購買発注(PO)を作成します。
作成方法としてはT-CODE:ME21Nから伝票概要を表示して購買依頼から条件を選択して購買依頼を選択します。
作成した購買発注をME23N(購買発注照会)で PO 4500004461 を確認してみましょう。
▲ PO 4500004461 のステータスタブ。サプライヤ「RBB vendor (800132)」宛に品目 6101545 を 5 EA / 600.00 USD で発注していることが確認できます。
注目すべき点として、明細の「設定(設定コード)」列に S(仕入先直送) が表示されています。これにより、この PO の明細が仕入先直送用であることがわかります。
③ 仕入先請求書登録(T-CODE: MIRO)
仕入先から商品を直送し、仕入先からの請求書を受け取ったら、MIRO(仕入先請求書登録)で請求書を登録します。 MIRO を起動し、「購買発注参照」タブで PO 番号を入力してEnterを押すと、PO の明細が画面下部に表示されます。
▲ MIRO 初期画面。Transaction に「請求書」を選択し、購買発注参照タブに PO 番号を入力します。
▲ PO 4500004461 を読み込んだ状態。左側に購買発注構造ツリーが表示され、右側に仕入先の情報が自動入力されます。明細行に品目・数量・PO参照が表示されます。
ヘッダの「金額」と「税額」欄、および明細行の「金額」「数量」を入力して残高インジケータが 緑(0.00) になったら、「転記」ボタンで仕入先請求書を登録します。
残高が 0.00 でない(赤い●のまま)と転記時にエラーになって請求書を登録できないのじゃ! ヘッダの金額と明細の金額が一致するよう入力することが大切じゃぞい!
④ 得意先請求書登録(T-CODE: VF01)
MIRO で仕入先請求書の転記が完了すると、TAS 明細の請求関連性(請求関連度 F)が更新され、VF01 での得意先請求書作成が可能になります。 VF01 を起動し、対象の受注番号(7584)を指定して実行すると、得意先請求書が作成されます。
仕入先直送では、自社からの出荷がないため「出荷関連請求」は使えません 。代わりに 請求関連度 F(受注基準・仕入先請求書受領時) に基づく請求書が作成されます。これが TAS 明細カテゴリの重要な特徴です。
つまり MIRO の転記が完了しないと VF01 で得意先請求書が作れないんですね!
その通りじゃ!TAS の請求関連度 F は「仕入先請求書受領をトリガーとして得意先請求書を作成する」という設計になっておるのじゃ。 MIRO で転記が完了してはじめて、受注明細の「未処理請求数量」が更新されて VF01 が実行できるようになるぞい!
カスタマイズ・マスタ設定のポイント
仕入先直送プロセスを正しく動作させるには、SDとMMにまたがるいくつかのカスタマイズ設定が必要です。ここでは実務でつまずきやすいポイントに絞って解説します。
① 明細カテゴリ TAS の設定(VOV7)
TAS で最も重要な設定は「請求関連」フィールドに F が設定されていることです。これは「請求書受領基準」を意味し、仕入先からの請求書(MIRO)を登録した数量だけ、得意先への請求が可能になる仕組みです。
サードパーティ処理では自社倉庫への入庫が発生しないため、出荷数量や入庫数量を基準に得意先請求をすることができません。代わりに「仕入先から実際に請求された数量=得意先に請求できる数量」として連動させるのがこの設定の役割です。MIROの登録が完了するまでVF01(請求書作成)が実行できないのもこのためで、二重請求や請求漏れを防ぐ内部統制上の仕組みとしても機能しています。
② 納入日程行カテゴリの設定(VOV6)
受注入力時に購買依頼を自動作成するかどうかは、納入日程行カテゴリの設定で決まります。TASに対応する納入日程行カテゴリ(標準では CS)を VOV6 で開き、「発注タイプ」に NB(標準で購買発注依頼)を設定します。
③ 納入日程行カテゴリの決定(VOV5)
明細カテゴリ TAS に対してどの納入日程行カテゴリを割り当てるかは、VOV5 の決定テーブルで管理されています。「明細カテゴリ TAS + 品目のMRPタイプ」 の組み合わせに対して CS が割り当てられているかを確認してください。
品目マスタのMRPタイプが ND(計画なし) の場合、「TAS + ND → CS」の行が必要です。この行がないと意図しない納入日程行カテゴリが選ばれ、購買依頼が作成されません。
④ 購買発注明細の「入庫」フラグを外す
仕入先直送では自社倉庫への入庫(GR)が発生しません。そのため、購買発注明細の「請求書」タブにある 「入庫」のチェックは外す 必要があります。
このチェックが入ったままだと、MIRO(仕入先請求書登録)でPO番号を読み込んでも明細が表示されず、請求書照合ができません。ME22N で個別に外すか、購買発注タイプのデフォルト設定を見直して、新規作成時から自動でチェックが外れるようにしておくと運用が楽になります。
さいごに
本記事では SAP S/4HANA における仕入先直送(Third-Party Processing)の業務フローを、実機画面を使って解説しました。 ポイントは、受注明細カテゴリ TAS を使うことで「受注→購買発注→仕入先請求→得意先請求」という一連のフローが SAP 上で連携して動くことです。特に MIRO での転記完了が VF01 実行の前提になる点は、実務でも設定ミスが起きやすいので注意が必要です。
本記事はこれで以上じゃ!仕入先直送は SD と MM にまたがるプロセスじゃから、両モジュールの連携を意識して理解を深めていくのじゃ!