この記事を読むメリット
- SAPの組立製造用の製造指図と化学・食品・医薬品向けのプロセス指図の違いについて理解することができます。
SAPの生産管理モジュールでは、製造実行時に組立製造向けの製造指図(Production Order)と化学・食品・医薬品といった流体を扱うプロセス指図(Process Order)が代表的な指図として挙げられます。
生産プロセスにおける一連の在庫移動や原価計算の流れはほとんど同じと思われがちですが、業種や現場の管理レベルによって各種マスタの設定などが異なります。
今回は、製造指図とプロセス指図で必要な各種マスタ(※特に作業手順とマスタレシピ)の違いを説明しながら、それぞれの指図の持つ情報の粒度の違いについて解説します。
PPモジュールには同じ生産なのに組立用・プロセス用・繰返生産用で処理の仕方が異なるのですね…
繰返生産はさておき、代表的に使用される組立用とプロセス用の指図どちらを使うか、もしくはどちらも使うのかは会社の扱っている品目の種類に依存するのじゃ!
今回は、代表的な組立用とプロセス用の違いについて解説していくぞい!
この記事のポイント
各種生産方式の違いについて
組立製造(Discrete Manufacturing)概要
組立製造(Discrete Manufacturing)とは個別の部品を組み立てて、完成品を作る製造方式のことを指します。また、特徴としては完成品は個別の部品に分解することが可能なことが多く挙げられます。
プロセス製造(Process Manufacturing)概要
対して、プロセス製造(Process Manufacturing)とは液体・流体などを混ぜたりして、完成品を作る製造方式のことを指します。こちらは反対に、完成品をもとの部品に分解して戻すようなことが難しいものが多く挙げられます。
組立製造とプロセス製造の各種比較
組立製造とプロセス指図ついて比較していきます。
製造指図は主に自動車や電子機器などの組立製造(ディスクリート型)で用いられます。
例えば、完成車一台に対しタイヤ四本といった、個数ベースで各構成品や完成品を管理します。
これに対して、プロセス指図はタイヤのゴムや医薬品等の調合・反応プロセスで用いられ、重量や容積ベースで不可逆的な化学変化を管理します。
最大の特徴は、プロセス指図がマスタレシピ※後述を使用し、製造指図での作業手順の作業単位である、”作業”をさらに細分化した”フェーズ”単位で温度や攪拌時間等のパラメータを制御・記録できます。これにより、より細かな単位での品質・状態管理を実現します。
比較①BOM
まずは、構成品の登録方法の違いについて見ていきましょう。
製造指図ではBOMマスタとして、組立に必要な部品の構成を登録します。
プロセス指図でも、同様にBOMマスタとして登録を行います。双方に大きな違いはありません。
食品や化学・医薬品では、流体を混合したり攪拌したりすることもあるため、プロセス生産では1つのプロセスから連産品や副産物が生じるケースもあるのが特徴となります。
BOMの違い
※BOMマスタに関する記事は以下で詳しく解説しています。
SAPラボ
【SAP PP】BOM(Bill of Materials)について解説 | SAPラボ
この記事を読むメリット PPモジュールのBOMマスタについて基本を理解することができます。 今回はSAPにおけるBOMマスタ(Bill of Materials)について解説していきます。BOM…
比較②作業手順(Routing)とマスタレシピ(Master recipe)
2点目は、製品を製造する手順である作業手順(組立の場合)とマスタレシピ(プロセス生産の場合)について比較していきます。
組立生産では、作業手順マスタとして登録します。
作業手順マスタでは、その名の通り、製造に関する製造手順を”切削→組立”のように定義することで、製造指図上の作業実績の計上もこの”作業”という単位で計上されることになります。
これに対して、プロセス生産では、マスタレシピという形で”作業”という単位に紐づける形で、より細かい”フェーズ“という単位で管理することが可能となっています。
以下の例では、11~13が作業10に紐づくフェーズという形で
組立とプロセスの作業手順の違い
※作業手順マスタに関する記事は以下で詳しく解説しています。
SAPラボ
【SAP PP】作業手順についての解説 | SAPラボ
この記事を読むメリット 作業手順マスタと他のマスタの紐づき関係を知ることができます。 作業手順マスタのトランザクションコードを把握することができます。 PPモジュー…
具体例:作業(Opration)とフェーズの管理粒度の違い
実生活での料理を例に、粒度の違いについて確認していきましょう。
ここでは、カレーの調理手順を例に比較します。
- 作業
-
作業手順マスタでの作業の粒度は大まかな工程の塊で定義することになります。
作業10: 下ごしらえ(具材を切る)
作業20: 加熱(炒める・煮込む)
作業30: 仕上げ(ルーの投入、盛り付け)
このように、ざっくりとした手順となっています。現実では、この粒度の調理手順を原材料とセットで伝えられてもカレーを作るのは難しいですね…
- フェーズ
-
上記の手順の粒度では、プロセス製造品では作業の下に具体的なアクション(切る、煮るなど)や加熱時間までも管理することができます。
作業10: 下ごしらえ
Lフェーズ11: 野菜の水洗い
Lフェーズ12: 野菜の皮むき
Lフェーズ13: 人参を1cm角でカット
作業20: 加熱・煮込み
Lフェーズ21: フライパンに油をひいて、150℃まで加熱
Lフェーズ22: 玉ねぎをキツネ色になるまで10分間炒める
以下略
このように、私たちが日々の料理での実際の作業の手順に近い粒度をフェーズという形で、条件を保持することができます。順番がごちゃごちゃになってしまってもいけません。
そこで、プロセス指図では、PIシート(プロセス指示書)という形で作業を順番通りに進めるために指示を順番に表示する仕組みがあります。※PIシートについては別途記事執筆予定
また、PIシートでの各種条件やチェックロジックを定義するためにXStep(Execution Steps)という枠組みをマスタレシピの中で定義することができます。
比較③製造バージョン(Production Version)
次に製造バージョンについてですが、こちらは製造バージョン自体の考え方である”BOMと作業手順(プロセス指図でのマスタレシピ)の組み合わせに対して割り当てる”という考え方は同じです。
比較④作業区(Work Center)と資源(Resource)
最後に、対象の製品をどこで作るのかといった作業を行う場所の定義の仕方について比較していきます。
組立生産では、作業区マスタとして登録します。
これに対して、プロセス生産では、リソース/資源という名前で登録します。
名前の違いはあれど、各種画面構成は同じであり、登録用のトランザクションコードが分かれています。
(※なお、照会画面は共通のトランザクションコードから参照できます)
その他、作業区と資源マスタはほとんど同じ画面設定であることが確認できます。
作業区マスタイメージ
資源マスタは、たとえば用途”008″を設定することで、タスクリスト(マスタレシピ)がプロセス生産用の資源(≒作業区)と認識させることができます。これにより設備として、製造指図に対してプロセス生産用の資源マスタと紐づくといったことが無いように制御することができます。(製造指図における作業区の用途も同様に設定可能)
製造指図とプロセス指図の実機画面での比較
では、実際に実機画面を通じて双方の画面構成について比較していきましょう。
製造指図とプロセス指図: 一般データタブの比較
製造指図は指図タイプを通常、”PP01″などを使用して指図を登録します。一般データタブ単位では、差がないことが確認できます。
製造指図一般データタブ
続いて、プロセス指図の一般データタブも見てみましょう。
先ほどの製造指図の画面と同じ構成となっています。
製造指図とプロセス指図: 作業ビューの比較
続いて、画面上部にある”作業”ビューの違いについて確認していきましょう。ここが、作業手順とマスタレシピの粒度の違いという形で違いを確認できると思います。
製造指図作業ビュー
製造指図では、作業手順マスタで設定した粒度の単位で作業が並んでいることが確認できます。
対して、プロセス指図の作業ビューでは、作業の下にフェーズ単位で作業が紐づいていることを確認できます。
※今回は、XStepと同様に割愛しますが、明細を選択して、Process inst.ボタンを押下することで、その工程でPIシートに対してどのような指示やデータの入力枠が設定されているかという特性を確認することができます。
製造指図とプロセス指図: 作業実績計上画面の比較
では、最後に指図への実績計上画面の違いを確認していきましょう。ここでも、計上する作業の単位が違うという点が大きな違いとなります。
プロセス指図については、作業手順ではなくフェーズ単位で実績を計上します。
さいごに
本記事では、製造指図とプロセス指図の必要なマスタ設定や各種指図の画面を比較してきました。大きな違いとして挙げられる作業手順とマスタレシピの違いやその作業単位”フェーズ”という粒度で、プロセス指図は細かく指図内での作業順序を制御することも可能であることを説明してきました。
本記事を通じて、複雑な指図についての理解が深まれば幸いです。
本記事はこれで以上じゃ!
プロセス指図、製造指図といっても使用する画面はほとんど同じなのじゃ。ここにMES等との連携を考慮するとより一層難解になるから、まずは基本を抑えていくんじゃぞ!