この記事を読むメリット
- SAPでのロット検索方針の設定方法とその基本的な流れについて理解することができます。
ロット検索方針は採番したロット番号(または仕入先などで決められたロット番号)について、どのロットを優先的に引き当てるかを決めて出荷をしたいといった要件がある場合に有用です。
”どのロットをどの順番で、どのような条件で引き当てるか”といった条件を指定することでFIFO(先入先出)や食品や製薬などの業界で使用されるFEFO(先期限先出)の要件などにも対応することが可能となります。
ロットに設定した有効期限順に在庫を引き当てるなんて柔軟な運用できるのかなぁ・・
ロット検索方針を使えば、そうした要求に応えられるのじゃ
この記事のポイント
ロット検索方針とは?
ロット検索方針が行われる業務
ロット検索方針とは、「どのロットを、どの順番で、どれだけ引き当てるか」を自動的に決定するためのルールで、
・PPモジュール(例:製造指図に対して原材料を出庫する際、有効期限の近いものから自動的に引き当てる)
・SDモジュール(例:顧客への出荷時、顧客の要求スペック(例:純度99%以上)を満たすロットを自動選択する)
・MM(例:在庫転送や廃棄処理の際に、特定の条件のものを対象にする)
などで用いられます。
ロット検索方針の決定ロジック概要
SAPにおけるロットの決定ロジックの基本的な仕組みは、SAPの価格決定ロジックと同じになっています。
伝票内の販売組織コードや品目や得意先マスタをキーに事前に設定されている価格を検索順序に従って条件テーブルから条件レコードを取得します。
取得した条件レコードに基づいて、ロット検索方針からどのロット選択基準(有効期限や原産国など)に基づいて、どのロットを使用するかを決定します。
ロットマスタの細かな設定については、以下の記事や動画を参照してみてください。
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ロット検索方針の実機設定
では、ロット検索方針の実機設定を通じて、SDモジュールにて出荷伝票作成時にロットの有効期限が古い順に引当が行われていく様子を紹介していきます。
カスタマイズについて
ロット検索方針はSDだけでなくMMやPPでの在庫引き当てルールを設定することができます。
各モジュール毎にカスタマイズが分かれており、T-CODE:SPROの以下のパスから設定することが可能です。
カスタマイズ箇所:SPRO->ロジスティクス – 一般->ロット管理->ロット決定
以下はロット決定の条件テーブル~ロット検索手順の割当の中身。各モジュール(業務フロー)毎に設定することが可能です。
以下ではSD(販売管理)でのロット検索方針について実機を使って解説していきます!
ロット検索手順と方針タイプの紐づけ
販売エリアと販売伝票タイプをキーに、検索手順を決定できるように設定をします。
カスタマイズ箇所:SPRO->ロジスティクス – 一般->ロット管理->ロット決定->ロット検索手順の割当->割当: 販売管理の検索手順 / 有効化: チェック
ロット検索手順”ZSD001“の中身はZSD2→ZSD1の順に検索する順序になっています。
カスタマイズ箇所:SPRO->ロジスティクス – 一般->ロット管理->ロット決定->ロット検索手順の定義->定義: 販売管理検索手順
方針タイプと検索順序の割り当て
方針タイプ(条件タイプ)の中身を確認します。
カスタマイズ箇所:SPRO->ロジスティクス – 一般->ロット管理->ロット決定->方針タイプ->定義: 販売管理方針タイプ
方針タイプの中身を確認します。
主な項目
- 検索順序
ロット検索時にどのキー項目で条件レコードを検索するかを選択します。
ここでは、標準のSD01を設定しています。
- クラス
ここに設定しているクラスの中に設定されている特性値:有効期限日などを選択基準で判定します。
- ロット分割 / 分割数
1明細に対して、最大何個のロットを割り当て可能かを定義しています。
- 許可済変更
ロット分割が行われた場合、ユーザが手動でロット割当を変更できるかどうかを制御する項目です。
補足:クラス照会(T-CODE:CL03)
クラス照会では、有効期限の特性値を割り当てています。
検索順序と条件テーブル
検索順序”SD01″にはKONH002→KONH001の順で確認する形で設定されています。
カスタマイズ箇所:SPRO->ロジスティクス – 一般->ロット管理->ロット決定->検索順序->定義: 販売管理の検索順序
※条件テーブルの設定は以下で行います。
カスタマイズ箇所:SPRO->ロジスティクス – 一般->ロット管理->ロット決定->条件テーブル->定義: 販売管理条件テーブル
選択条件とソート順序適用(T-CODE:VCH1)
条件レコードを登録します。
キーとして、ZSD2で得意先×品目をキーとして登録します。
選択基準
選択基準を設定するビューでは、設定したクラスに対して品目が有している情報をキーにロット決定においてどのロットを対象に判定するかどうかを選定する基準を設定することができます。
今回は設定していませんが、最終入庫日付などのSAPの標準にある特性を基準にしたり、独自の特性を作成することで原産国や保管条件などを条件に加えることも可能です。
ソート順序
ソート順序では、特性をどの順番で評価するかを決めることができます。
今回はソート規則として、有効期限を昇順で決定する形にします。
ソート規則
ソート規則を見てみましょう。有効期限が近い順(昇順)に設定されていることが分かります。
カスタマイズ箇所:SPRO->ロジスティクス – 一般->ロット管理->ロット決定->定義: ソート規則
実機での引当順序イメージ(受注~出荷まで)
では、これまで設定した検索方針をベースにロットが決定される様子を設定していきます。
事前設定
品目マスタ”Z_BATCH_DET”について、事前に入庫時にロット設定しておきます。
今回の設定内容
LOT_IN01:製造日付が先、有効期間日付が後(入庫も先)
LOT_IN02:製造日付が後、有効期間日付が先(入庫は後)
上記の内容を改めて表にまとめてみます。
| ロット | 製造日付 | 有効期間期限日 |
|---|
| LOT_INO1 | 2026/01/01 | 2026/3/31 |
| LOT_INO2 | 2026/01/15 | 2026/3/15 |
FIFO(先入先出)では製造日付順になるのでLOT_IN01が先に提案されます。
一方で今回のカスタマイズではFEFO(先期限先出)の設定なので有効期間期限日順になり、伝票上ではLOT_IN02が引き当てられるはずです。
受注~出荷伝票を処理してみてどうなるのか見ていきましょう。
受注登録~出荷登録
受注登録から出荷登録までで、ロットがどのように提案されるかを確認してみます。
受注伝票登録(T-CODE:VA01)
受注伝票登録では、先ほど設定した得意先×品目で登録を行っていきます。
(※別途設定で受注明細にもロット提案許可をしていたため、すでにLOT_IN02が提案されています)
出荷伝票登録(T-CODE:VL01N)
ここで、改めて作成した受注伝票を参照し出荷伝票を作成します。
ここでは、LOT_IN02が有効期限が近いということで提案されています。
さいごに
本記事では有効期限順でのロット引き当てを例に、ロット検索方針の設定から実際の挙動までを確認してきました。
基本的には価格決定ロジックに近いので、併せて決定ロジックの概念も深めていきましょう!
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本記事はこれで以上じゃ!
FIFO以外に、細かな設定を行うことで医薬品や食品などでよくあるロット決定の業務要件に対応ができるのでマスターするとよいぞ!