この記事を読むメリット
- New GLと旧 GLの変化点を理解できます。
- NeW GL登場の歴史的な経緯を知ることができます。
- New GLと旧 GLのそれぞれのトランザクションコードがわかります。
SAPのプロジェクトに携わると必ず耳にする「新GL(New GL)」という言葉があります。
ではNew GLは一体いつから現れたものでしょうか。なぜNew GLに進化する必要があるでしょうか。
特に、S/4HANAでは旧GLという選択肢自体がなくなっているため、New GLを理解することがSAP FI会計モジュールを理解する基礎となってきました。
この記事のポイント
New GLの導入タイムライン
SAPのNew GL(新総勘定元帳)が初めて導入されたのは、SAP ERP 5.0 (mySAP ERP 2004) からです。
しかし、実務において広く普及し、機能が安定したのはその次のバージョンである SAP ERP 6.0 になってからです。
タイムラインを簡単に整理すると以下のようになります。
- SAP R/3 4.7以前(Classic GL 時代)
・現在「旧GL」と呼ばれている仕組みです。
・利益センタ会計(EC-PCA)や特別目的元帳(FI-SL)などを個別に動かしてデータを保持していました。
- SAP ERP 5.0 (2004年リリース)
・New GLが初めて登場しました。
・この時点から、複数の元帳(Ledger)や伝票分割(Document Splitting)のコンセプトが導入されました。
- SAP ERP 6.0 (2006年リリース)
・多くの企業がNew GLを採用し始めたメインバージョンです。
・ERP 6.0以降、新規導入の場合はNew GLが標準設定となりました。
- SAP S/4HANA (2015年リリース)
・New GLの機能が前提(必須)**となりました。
・S/4HANAでは、New GLの考え方をさらに進化させた「ユニバーサルジャーナル(テーブル名:ACDOCA)」に統合されています。
ECC時代は旧GLが代表的、S/4HANAになってからNew GLが現れたという勘違いが多いようですが、実はECC時代(ERP 5.0)でもNew GLが導入されました。
なぜNew GLなのか?
旧GL(Classic GL)からNew GLへの進化は、単なる機能追加ではなく、「会計データの統合」と「リアルタイム性」の追求という本質的な構造改革でした。
なぜ進化が必要だったのか、その本質的な違いを3つのポイントで解説します。
1.データ保持構造の統合
旧GL時代、SAPは「目的別」にバラバラのテーブルでデータを管理していました。
- 旧GL:
制度会計(FI)はFIのテーブル、管理会計(利益センタ会計など)は別のテーブルにデータを持ち、期末にそれらを照合する作業が必須でした。
- 新GL:
総勘定元帳の中に、利益センタやセグメントの情報を直接持てるようになりました。
これにより、FIとCO(管理会計)のデータが最初から一致した状態で保持されるようになります。
2.伝票分割(Document Splitting)によるBSの高度化
旧GLでは、費用(損益計算書項目)に利益センタを紐付けることは簡単でしたが、未払金や預金(貸借対照表項目)を利益センタ別に分けるのは非常に困難でした。
- 進化のポイント:
新GLでは、1つの伝票を入力するとシステムが自動で「貸借」を判断し、利益センタやセグメントごとにバランスが取れるよう明細を分割します。
- 本質的な違い:
これにより、「部門別・事業部別の貸借対照表」をリアルタイムで出力できるようになりました。経営層が「どの事業部がどれだけ資産を持っているか」を即座に把握できるようになったのです。
筆者は参加した1個前のプロジェクトでは伝票分割機能を利用しました。利益センタ別・セグメント別のBSを確認したい要件があれば、伝票分割機能を利用するのが標準ソリューションだと考えられます。
3.パラレル会計(複数元帳)への対応
グローバル企業にとって、複数の会計基準(日本基準、IFRS、米国基準など)を同時に管理することは大きな課題でした。
- 旧GL:
「追加勘定」など、工夫が必要で管理が複雑でした。
- 新GL:
「元帳(Ledger)」という概念が導入されました。
共通元帳(Leading Ledger)に日本基準を、非共通元帳(Non-leading Ledger)にIFRSを割り当てることで、一つの仕訳からそれぞれの基準に合わせた帳簿を同時に作成できます。
旧GLは「後から集計して報告する」ための仕組みでしたが、新GLは「仕訳が切られた瞬間に、多角的な分析(セグメント・元帳別)が完了している」状態を目指したものです。
トランザクションコードの違い
New GLの導入に伴い、トランザクションコードの変化もあります。
実務で頻用するコードを中心に、旧GL(Classic GL)との違いをカテゴリー別にリスト化しました。
1.伝票入力
| 機能 | 旧GL (Classic) | 新GL (New GL) | 備考(変更点) |
|---|
| 一般転記 | FB01 | FB01L | 特定の「元帳グループ」を指定して転記が可能。 |
| G/L勘定入力 | FB50 | FB50L | 元帳別の入力をサポート。 |
伝票入力の違い
2.照会系
| 機能 | 旧GL (Classic) | 新GL (New GL) | 備考(変更点) |
|---|
| G/L勘定残高照会 | FS10N | FAGLB03 | 元帳・抽出条件(利益センタ等)ごとの残高を表示。 |
| G/L明細照会 | FBL3N | FAGLL03 | 総勘定元帳ビューで、分割後の明細を確認可能。 |
照会系の違い
3.期末評価・決算処理
| 機能 | 旧GL (Classic) | 新GL (New GL) | 備考(変更点) |
|---|
| 外貨評価 | F.05 | FAGL_FC_VAL | 評価結果を特定の元帳にのみ転記可能。 |
| 残高繰越 | F.16 | FAGLGVTR | 年度末に次年度へ残高を回す。元帳別に実行。 |
| 振替再分類 | F.19 | FAGLF101 | 買掛金・売掛金の流動性分類などを実行。 |
期末評価・決算処理の違い
4.マスタ
| 機能 | 旧GL (Classic) | 新GL (New GL) | 備考 |
|---|
| G/Lマスタ照会 | FS03 | FSP0 / FSS0 | (※FS00は継続利用可能だが、構成が変化) |
マスタ照会の違い
新GL用のトランザクションコードの多くは、以下のルールがあります。
- 「FAGL」から始まる(Financial Accounting General Ledgerの略)
- 末尾に「L」がつく(Ledgerの略)
まとめ
本記事では、新GLの導入タイムラインから、新旧GLのトランザクションコード変化まで解説しました。
最後に、旧GLとNew GLの決定的な違いを振り返ります。
- 操作面: 「元帳」を意識したT-code(FAGL系)へのシフト。
- 構造面: 目的別に分かれていたテーブルを統合し、ある照合作業を廃止。
- 成果面: リアルタイムでのセグメント別管理と、多角的な会計基準への対応。
システムが進化しても、会計の基本原則は変わりません。
New-GLへの理解を深め、日々の業務やプロジェクトの精度向上に役立てるんじゃ!