この記事を読むメリット
- SAPでのロットトレースの基本的な仕組みと実機上でのトレースの流れについて理解することができます。
ロットトレースとは対象の品目を生産するにあたって、どの原材料ロットを使用したか、などの紐づき情報をもとに品質不良などが生じた際に、原料購買~製造~販売までを追跡する仕組みを利用して不良品に該当するロットの対象特定を行う在庫管理の手法です。また、SAP以外の生産管理システムや在庫管理システムでも用いられています。
今回は、実機画面を通じて最終製品に対して、構成品のロットがどのように紐づけられているかを実機画面を通じて確認していきます。
この前、販売した商品に欠陥があるってお客さんから苦情が来ちゃった・・原因は、構成部品がおかしいみたいです。
あります!
でも、この商品ほかの取引先さんにも売っているのですが、調べるの大変じゃないかな・・
ロット管理してあって、伝票で紐づきがとれていればどこに出荷されたか、までの情報も確認できるぞい。SAPの画面で一緒に確認していくのじゃ!
よかったぁ!
これで、どの取引先へ販売したかの地道な確認作業が楽になりそうです。
この記事のポイント
ロットトレース概要と実機画面イメージ
ロットトレース概要
ロットトレースは先ほどにも記載したように、製造品(仕入先から原材料を仕入れて、自社などで製造して、得意先へ売る流れ)や購買品(仕入先から買って→得意先へ売る流れ)においての品質管理などを目的として行う追跡機能を指します。
生産工程の中で問題が発生したり、メーカーからの不具合連絡を受けてからの原因追及がしやすいようにSAPでは発注伝票や指図をベースに原材料と製品との紐づき情報を指図を介して保持していています。
例えば、クルマの組立生産で”リコール“がクルマの構成品の不備などで改修対象となったりすることが時々ニュースであります。
その対象の車体を特定するにあたり不具合発生があったときに、紐づくロット番号などでSAPでは指図や入出庫伝票などを通じて管理しているのです。
また、医薬品などの業界ではより厳格なトレーサビリティが求められます。
GDP(Good Distribution Practice:適正流通規範)やGMP(Good Manufacturing Practice:適正製造規範)では、原材料ロット → 中間製品ロット → 最終製品ロット → 流通 → 販売までの全工程を通じて、ロット情報を即時に追跡できることがガイドラインとして推奨されています。
これにより、品質問題が発生した場合には、該当ロットの製造履歴、品質検査記録、出荷先などを迅速に確認し、回収対象を正確に特定して速やかに市場から回収することが可能になります。
ロットマスタの細かな設定については、以下の記事や動画を参照してみてください。
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トップダウンとボトムアップ
先ほどの例では原因の特定のみでしたが、実際には①原因特定→②影響調査の流れでリコール対象の特定を行うことが多いです。
トップダウン
トップダウンでのロットトレースでは、完成品を起点にして構成品へ遡ります。
先ほどの例では、自動車のリコール対応では、まず”不具合連絡を受けた対象車両”を特定し、その車両に組み込まれた部品ロットを順に遡って各部品の検査記録などを確認する流れをイメージしてもらえればと思います。
SAP では、完成品ロットや製造指図から BOMを展開~構成品の出庫~部品ロットの順にトレースします。ここでは、構成品の購買発注伝票や入庫伝票までたどる形で、不具合調査を行うことができます。
ボトムアップ
ボトムアップでのロットトレースでは、構成品のロット番号を起点にしてそのロットがどの製品に使われたかを追います。MB56の画面では、対象の部品を使用して製造を行った製品の出荷伝票を確認することができます。
ロットトレースの実機説明
では、実際にロット番号を設定した製品について、実機画面とともにトップダウン/ボトムアップの様子について確認していきます。
事前設定
今回使用する、品目マスタ「Z_BATCH_FIN」について、製造指図発行時にロット採番したものを使用し、また構成品についてもそれぞれロット番号を指定して製造を行っています。
今回の設定内容
①指図:1003203で半製品「Z_BATCH_COM3」を製造します。
②指図:1003204で①の半製品と構成品をもとに完成品「Z_BATCH_FIN」を製造します。
ロットトレース第一画面(Tr-Cd:MB56)
ロットトレースの第一画面では、
①どの品目について、どのプラント、ロット番号についてトレースを行うのか
②トレースする方式(トップダウン分析/ボトムアップ分析)
③トレース時に表示する情報範囲
を指定します。
主な項目(※太字は必須項目)
①展開の開始ポイント
・品目コード:トレースしたい品目を指定します。
・プラント:プラントを指定します。
・ロット:ロット番号を指定します。
②展開タイプ(どちらかをラジオボタンで選択)
・トップダウン分析:完成品などを指定して構成品の発注や入庫伝票を追跡する場合に選択
・ボトムアップ分析:構成品などを指定して完成品の出荷伝票などを追跡する場合に選択
③設定(代表的な項目を紹介します)
- 展開レベル:どこまで深堀して展開できるかを指定します。無指定の場合最大まで展開可能となります。
- 有効プラント:表示するプラントを指定します。プラント間で在庫転送などをしている場合、他プラントまで追跡することができます。
- 仕入先ロット照会(フラグ):フラグオンすると供給者ロット(メーカーのロットNo.)が設定されている場合表示が可能となります。
※ただし、1品目が複数メーカーロットからなる場合はSAP標準では1メーカーロットしか持てないため、ロット特性として項目を設けて、複数メーカーロットをセットする形となります。なおその時には本画面では表示されないため注意が必要です。
ロットトレース(トップダウン分析の場合)
下記では、設定内容をもとに、トップダウン分析を実行しています。
ここでは、実際に完成品のロット番号「0000000820」から、構成品のロット番号まで展開されていることが確認できます。
ロットトレース(トップダウン分析の場合)
ここでは、実際に構成品のロット番号「MLOT_01」から、完成品のロット番号まで展開されていることが確認できます。(ボトムアップといいながら、標準の画面構成的にはトップダウンと同じ形ですが…)
また、今回は別プラントに在庫転送して、そのプラントでの受注~出荷を行っているため、別プラントJZA1から出荷伝票「80006223」が作成されていることが確認できます。
ボトムアップ分析
補足: ロット情報コックピット(Tr-Cd: BMBC)
ロット情報コックピット(BMBC)の画面では、品目とロット番号から対象のロットがどのプラント・保管場所に何個あるのかといった情報を確認することができます。
また、このほかロット情報コックピットではロット特性やロットステータスを利用した形での検索が可能となっているため対象ロットの細かな条件での検索を行う場合は、BMBCの機能はロット検索に特化しているため、MB56と併用する形でトレースを行うことも可能です。
ロット情報コックピット BMBC
さいごに
本記事ではトップダウン分析とボトムアップ分析の実機イメージを通じて、SAPでのロットトレース機能をご紹介してきました。
メーカーロットと自社ロットの紐づけや実務では品質検査も絡むため複雑に見えますが、本機能を使うことでSAPで情報を一貫して確認することができるメリットの例として、本記事が理解の一助となれば幸いです。
本記事はこれで以上じゃ!
ロットトレースは、品質管理上SAPのロジスティクスモジュールを導入している企業であれば一度は上がる論点となりがちじゃ!
バッチリ抑えておくんじゃぞ!