この記事を読むメリット
- SAP MMにおける互換品(FFFC品)の基本概念を理解できます。
- 互換品を使用した実務的な業務プロセスを習得できます。
- 互換品の登録・設定方法を実機画面とともに学べます。
- 互換品に関連するテーブル情報を把握できます。
うむ、良い質問じゃ!
互換品というのは、機能や仕様が完全に互換性のある品目のことを指すのじゃ。
SAP MMでは「FFFC(Form-Fit-Function Class)」という特殊な品目タイプで管理するぞい!
SAP MMにおける互換品は、製造業や調達業務において非常に重要な機能です。
同じ機能を持つ複数のメーカー製品や代替品を柔軟に運用することで、調達リスクの分散、在庫最適化、コスト削減に繋がります。
本記事では、互換品の基本から実務プロセス、設定方法まで解説していきます!
この記事のポイント
互換品(FFFC品)とは?
互換品とは、Form(形状)、Fit(取付)、Function(機能)の3要素が完全に互換性のある品目を指します。
SAP MMでは、この完全互換性を持つ品目群を「FFFC(Form-Fit-Function Class)」という特殊な品目タイプでグループ化して管理します。
互換品の基本構造
SAPにおける互換品管理では、同じFFFC品に対して複数の互換品目を紐付けて管理します。
その通りじゃ!FFFC品はあくまで「グループの代表」として機能する仮想的な品目で、実際の在庫は各互換品メンバーで管理されるのじゃ。
互換品を使用するメリット
実務において、互換品機能を活用することで以下のようなメリットが得られます。
互換品のメリット
- 調達リスクの分散:特定メーカーの供給停止時に、即座に他の互換品に切り替え可能
- 在庫最適化:複数の互換品の在庫を一元的に把握し、全体最適な調達判断が可能
- コスト削減:価格や納期条件の良い互換品を柔軟に選択できる
- 業務効率化:BOM(部品表)や購買発注での品目置き換えが容易
- MRP精度向上:互換品全体の在庫を考慮した所要量計算が可能
互換品が適用されるプロセスの例
SAP MMでは、以下のプロセスで互換品機能が活用されます。
- 購買依頼・購買発注での品目置き換え
- MRP(資材所要量計画)での在庫考慮
- 外注加工プロセスでの支給品代替
- 在庫転送オーダーでの品目交換
互換品を用いた業務プロセス例
実際の業務で互換品がどのように活用されるのか、ここでは具体的なプロセス例を見ていきましょう。
購買発注に対する互換品の入庫の例
購買発注では、品目を指定して発注を行いますが、実際にサプライヤーから納品される品目が異なる互換品である場合があります。このような場合でも、SAP MMの互換品機能を使えばスムーズに入庫処理が可能です。
プロセスフロー
- 購買発注作成(T-CODE: ME21N)
購買部門がある品目を指定して購買発注を作成します。発注数量は100個とします。
- サプライヤーからの納品
サプライヤーから実際に納品されたのは、互換品である品目が100個でした。
- 購買発注での品目交換(T-CODE: ME22N)
購買発注上の明細を選択し、「品目取換(Material Exchange)」ボタンをクリックします。
するとFFFC品グループに属する互換品リストが表示されるので、品目コードに対して交換する個数を入力します。
- 入庫転記
品目交換を完了後、通常通り入庫転記を行います。
後ほど実際のSAPの画面を用いて動作確認していくぞい!
MPN-MRPセットとは?
MPN-MRPセットは、同一のFFFクラスに属する互換品をMRP目的でプラント・MRPエリア別にグループ化したものです。重要なのは、専用の品目を新たに作成するのではなく、既存の互換品をグループとして束ねるという点です。
FFFC品内の互換品をMPN-MRPセットとしてグループ化することで、より効率的なMRP処理が可能になります。
MPN-MRPセットの業務プロセス例
以下のシナリオで、MPN-MRPセットの効果を確認してみましょう。
- 前提条件
FFFC品「E-FFFC」に以下の互換品が登録されているとします。
・品目E-001:現在庫50個、所要量100個(不足50個)
・品目E-002:現在庫80個、所要量60個(余剰20個)
・品目E-003:現在庫30個、所要量40個(不足10個)
- 従来のMRP処理(MPN-MRPセットなし)
MPN-MRPセットを使用しない場合、各品目個別でMRP計算が実行されます。
・品目E-001:50個の購買依頼を生成
・品目E-002:MRP処理なし(余剰のため)
・品目E-003:10個の購買依頼を生成
結果:合計60個の購買依頼や計画手配が生成されます。
- MPN-MRPセット使用時
MPN-MRPセットを登録すると、全体で統合計算が実行されます。
・セット合計在庫:160個(50+80+30)
・セット合計所要量:200個(100+60+40)
・セット所要量:40個(200-160)
結果:MPN-MRPセットでの主要部品(リーディング品)に対して合計40個の購買依頼や計画手配が生成され、過剰調達を防止します。
MPN-MRPセットを使うことで、互換品全体の在庫を有効活用できるのじゃ。個別品目では不足していても、セット全体では充足している場合があるからのう!
MPN-MRPセットって、どうやって設定するんですか?
それでは互換品の設定方法と共にMPN-MRPセットの登録方法も見ていくぞい!
互換品の登録・設定方法(T-CODE:PIC01)
それでは、実際に互換品を登録・設定する手順を見ていきましょう。
互換品の登録・変更には、T-CODE:PIC01を使用します。
前提条件
互換品設定を行う前に、以下の準備が必要となります。
- FFFC品目の作成:品目マスタ(T-CODE: MM01)で品目タイプ「FFFC」の品目を作成
- 互換品メンバー品目の作成:HERB(Interchangeable Part)または通常品目タイプにて品目を作成
- 購買情報レコードの登録:必要に応じて各互換品の購買情報を登録
PIC01での互換品設定手順
ステップ1:品目もしくはFFFC品の指定
T-CODE:PIC01の初期画面で品目コードもしくはFFFC品を指定します。品目コードを指定した場合は、品目が属するFFFC品が表示されます。
入力後、Enterキーを押下して詳細画面に進みます。
ステップ2:互換品品目の設定
FFFC品に属する互換品メンバーを設定します。
ステップ3:MPN-MRPセットの設定
MPN-MRPセットボタンを押下します。
MRPエリア毎に互換品の組み合わせを登録します。組み合わせ毎に主要部品(リーディング品)を1つだけセットします。
MRP時には、この主要部品(リーディング品)に対して購買依頼や計画手配が作成されます。
設定後の確認方法
互換品設定が正しく行われたか確認するには、再びT-CODE:PI01を実行することで設定内容が参照可能です。
【実機確認】購買発注での互換品交換方法
ここでは先ほど紹介した「購買発注に対する互換品の入庫の例」について、実際のSAPの画面も見ながら実行してみましょう。
流れとしては、
- 購買発注作成(T-CODE: ME21N)
- 購買発注での品目交換(T-CODE: ME22N)
- 入庫転記(T-CODE:MIGO)
となります。
ここでは購買発注の作成は省略し、購買発注の品目交換の方法から見ていきましょう!
今回は品目:TG12⇒品目:TG13に品目交換する例を見ていきます。
購買発注での品目交換(T-CODE: ME22N)
品目交換したい明細を選択し、「品目取換(Material Exchange)」ボタンをクリックします。
今回は品目交換する前の品目:TG12のレコードに対して実施します。
そうすると明細11が作成されましたね。
明細10には「品目置換」というタブができています。
そのタブにて「その他の品目コード」を押下してみましょう。
「その他の品目コード」を押下すると、PIC01で登録した互換品のセットが表示されます。
今回は品目:TG12⇒品目:TG13に品目交換なので、下図のように明細11(品目:TG12)の数量を削除し、明細12(品目:TG13)に数量を入力します。今回は100個すべて品目交換します。
上記の操作をすることで、明細12(品目:TG13)だけ残ります。
また品目交換して追加された明細12(品目:TG13)の項目「上位明細」には元の明細番号が、項目「副明細区分」には”8″が設定されます。
入庫転記(T-CODE:MIGO)
品目交換後の購買発注伝票を用いて入庫処理をしてみましょう。
T-CODE:MIGOにて購買発注番号を入力して入庫処理画面を開きます。
すると品目交換後の品目:TG13で入庫しようとしているのが分かります。
このまま入庫すれば品目交換後の品目:TG13で入庫処理がされます。
互換品のテーブル
SAP MMにおける互換品データは、複数のデータベーステーブルで管理されています。トラブルシューティングやデータ分析を行う際に、これらのテーブル構造を理解しておくことが重要です。
主要テーブル一覧
| テーブル名 | テーブル名称 | テーブル概要 |
|---|
| PICHD | 部品交換性ヘッダデータ (SUS+MPN) | PIC01にて設定されているFFFC品が格納されています。 ここでのPICキーが以下テーブルのキー項目となります。 |
| PICPS | 部品交換性明細 (SUS+MPN) | FFFC品に紐付いている互換品が格納されています。 |
| PICRL | 部品交換性関係 (プラント/MRP エリア) | MPN-MRPセットの内容が格納されています。 |
まとめ
本記事では、SAP MMにおける互換品(FFFC品)について、基本概念から実務プロセス、設定方法、関連テーブルまで網羅的に解説してきました。
重要ポイントの再確認
- 互換品の基本:FFFC品でグループ化
- 業務メリット:調達リスク分散、在庫最適化、コスト削減、業務効率化
- 適用プロセス:購買、生産、販売、MRP、在庫管理の幅広いプロセスで活用可能
- 登録方法:T-CODE: PIC01で互換品セットやMPN-MRPセットを作成
- 主要テーブル:PICHD(PIC01で設定されているFFFC品と関連テーブルを紐付けるキー)、PICPS(FFFC品に紐付く互換品)、PICRL(MPN-MRPセットの内容)がコアテーブル
博士、ありがとうございました!
互換品の仕組みがよく理解できました。これからのプロジェクトで活かしていきます!
うむ!互換品は奥が深いから、実際に設定して動かしてみるのが一番の学びじゃ。PIC01で色々試してみるのじゃぞ!