ABAPエンジニアとは?仕事内容と魅力、今後の将来性を徹底解説

「ABAPエンジニア」って聞いたことあるけど、どういった仕事をするのかよくわからない…

そのような疑問を持つあなたのために回答を用意しました!

ABAPエンジニアはあまり認知されていないものの、通常のエンジニアよりも年収が高く、需要がある魅力的な職種です。

本記事ではABAPエンジニアについて、以下内容を紹介します。

  • ABAPエンジニアとは?
  • ABAPエンジニアの魅力
  • ABAPエンジニアに必要なスキル
  • ABAPエンジニアの将来性とキャリア

ぜひ最後までご覧になり、ABAPエンジニアの魅力を感じてください!

目次

ABAPエンジニアとは?

ABAPエンジニアとは、SAP社が提供しているERPシステム「S/4 HANA」をはじめとしたSAP製品で利用可能なプログラム言語を取り扱うエンジニアを指します。

ABAPというあまり馴染みがない言語だと思いますので、ABAPとは?という話を含めて、以下の内容を紹介していきます。

  • ABAPとは?
  • ABAPエンジニアの仕事内容
  • ABAPで開発できる機能

1つずつ説明していきますね。

ABAPとは?

ABAPは「Advanced Business Application Programming」が正式名称であり、通称は”アバップ”と呼ばれています。

SAPシステムのみで取り扱うことができる独自言語です。
独自言語ではあるものの、ABAPは手続型プログラミング言語/オブジェクト指向型プログラミング言語としてのどちらでも記述可能です。

また、ABAPのプログラミング構文は初心者にもわかりやすく作られており、学習にかかる時間は比較的少なくて済むと言えるでしょう。

ABAPエンジニアの仕事内容

ABAPエンジニアの仕事内容は、ABAPを利用したSAPシステム内のプログラミングおよび、テスト実施です。

クライアントの業務要件を満たすように作成された設計書を元に、プログラムへ落とし込みます。
ABAPで実現できる内容は他のプログラム言語と同じです。

そのため要件を満たすことに加えて、以下のような例外的な処理も含めて実装することが求められます。

  • 問題が起きた時のエラーハンドリング処理
  • 不具合発生時に状況が把握できるログ出力処理

ABAPで開発できる機能

SAP製品の標準機能では足りない機能を作るために、ABAPを利用して”アドオンプログラム”を作ることができます。
アドオンプログラムとして開発できる機能で代表的なのは、以下の3つです。

  • レポートプログラム
  • バッチインプットプログラム
  • Dynpro

機能を1つずつ解説していきますね。

1. レポートプログラム

1つ目は「レポートプログラム」です。

レポートプログラムは、SAP内に蓄えられたデータを収集/加工し、データ出力を目的として作られるプログラムを指します。

具体的には、検索条件に当てはまるデータをSAP内で収集し、画面に一覧表示するというような機能が当てはまります。
SAPでは会計情報を扱うことが多いので、レポートプログラムで貸借対照表や損益計算書などの財務諸表を表示することも可能です。

また、一覧表示だけでなく収集したデータをもとにデータベースを更新することができ、独自データを保管しておくこともできます。

2. バッチインプットプログラム

2つ目は「バッチインプットプログラム」です。

バッチインプットは、大量のデータをSAPへ登録する際に利用するプログラムを指します。

例えば、毎日顧客から注文が来るという業務があったとします。
その注文を1件ずつ手作業で登録するのではなく、注文をまとめたExcelデータを準備し、バッチプログラムを利用してSAPへ一括で登録するというような形で利用します。

1件ずつ処理するのに比べて、まとめて処理ができるため非常に効率が良いです。

3. Dynpro

3つ目は「Dynpro(ディンプロ)」です。

Dynproの正式名称は”Dynamic programming”という名称で、対話型の画面機能を持つプログラムのことを指します。

対話型プログラムは、その名の通り利用者とシステムでやり取りをして進める機能です。
身近なもので例を挙げると、銀行のATMが対話型プログラムと言えるでしょう。

Dynproはレポートプログラムやバッチインプットプログラムと比べて、複雑な処理を作成する必要があるため難易度が高いです。
そのため、Dynproを作れるABAPエンジニアはスキルが高いエンジニアと認識されます。

ABAPでできることは以下でより詳しく解説しているのでぜひチェックしてみて下さいね。

ここまでABAPエンジニアの仕事について紹介してきました。
ABAPエンジニアの仕事の魅力はどういったところにあるのか解説していきますね。

ABAPエンジニアの魅力

ABAPエンジニアはSAPシステムと密接に絡んでいることもあり、他のエンジニアとは違った魅力があります。
具体的な魅力としては、以下の3つがあります。

  • SAPシステムへ触れることができる
  • SAPの標準機能についてシステム面から学習が可能
  • SAPはグローバルで導入されているため海外案件もある

それぞれの魅力について詳細を説明していきますね。

SAPシステムへ触れることができる

当たり前の話ですが、ABAPはSAPシステム独自の言語であるためSAPに触れることができます。

開発やテストを行う際に、SAPのデータ登録や設定変更などを行うことも少なくありません。
開発の一環でSAPの操作方法を覚えたり、システムの知見を深められるのがABAPエンジニアの魅力です。

その他のエンジニアの場合は、SAPのシステムに触れることはほぼないと言って良いでしょう。

SAPの標準機能についてシステム面から学習が可能

アドオンプログラムを作る際に、SAPシステムの標準機能からデータ取得することが多くあります。
システム面から標準機能を見ることで、以下の内容が理解可能です。

  • どういったデータ構造になっているのか
  • どういったデータの関連があるのか

SAPのシステム自体の理解が深まるという点と、世界最高レベルのシステムのデータ構成を理解し、知見を深めることでエンジニアとしての市場価値を高めることができます。

ABAPエンジニアから、より市場価値の高いSAPコンサルタントに転身する道も開くことができます。

SAPはグローバルで導入されているため海外案件もある

SAPは世界中の企業で採用されているため、ABAPエンジニアはグローバル展開するプロジェクトへ参加するチャンスがあります。

海外へのシステム導入は、通常の開発では得られないような以下の経験を積むことができます。

  • 各国での法律の違い
  • チームメンバー同士の文化の違い

これらの経験からエンジニアとしての視野が広がり、グローバル市場での競争力を高めることができます。
今後、よりグローバル化するIT市場では海外案件を経験しているキャリアパスを持っている人材が重宝されることでしょう。

上記のような魅力を持つABAPエンジニアですが、どういったスキルがあればなれるのでしょうか?

ABAPエンジニアに求められるスキル

ABAPエンジニアに求められるスキルとして、以下のようなスキルがあります。

  • ABAPでのプログラミングスキル
  • 設計書を読み解く文章理解力
  • SAP内における各モジュールの基礎知識

それぞれ重要になりますので、1つずつ確認していってくださいね。

ABAPでのプログラミングスキル

ABAPエンジニアには、ABAPを用いた高度なプログラミングスキルが求められます。

これは単にコードを書く能力だけでなく、効率的かつ、他の担当者が見ても理解しやすいコード作成スキルを指しています。
特に、SAPの場合は複雑な業務ロジックを正確に実装しながら、業務が間に合うようにパフォーマンスも考慮しなければなりません

また、様々なプログラムで汎用的に使うことも考慮した再利用可能なコードを作成するスキルも重要です。
さらに、データの不整合が発生しないようにするために、エラーハンドリングの技術も欠かせません。

設計書を読み解く文章理解力

クライアントの要件を正確に理解し、設計書を読み解く能力はABAPエンジニアにとって不可欠です。

設計書には以下の内容が記載されています。
その記載内容を正しく理解することで、クライアントが期待した通りのシステムを構築できます。

  • システムの動きや構造
  • 関連する業務プロセス

また、実装する内容の不明点をフィードバックすることも、ABAPエンジニアに期待されていることの1つです。設計してレビューを受けた仕様書でも、部分的に不備があるケースもあります。

業務を理解して実装していればその不備に気づけるでしょう。

SAP内における各モジュールの基礎知識

SAPシステムは数多くのモジュールで構成されています。
各モジュールに関する基礎知識は、作成するアドオンプログラムを理解するために必要です。

SAPのモジュールには財務会計(FI)や管理会計(CO)、販売(SD)、在庫管理(MM)などがあります。
依頼されて開発するアドオンプログラムは、自身のモジュール理解度に関係なく開発することが求められます。

各モジュールの深い理解までは不要ですが、浅く広く学習しておきましょう。

ABAPエンジニアの需要と将来性

ABAPエンジニアの需要は、堅調に一定レベルで保たれています。

また、2027年頃まではSAPのERPシステムの移行の需要が高まっています。
そのため、短期的には大きな需要が見込まれるでしょう。

上記のような点について、それぞれ詳細の話をしていきますね。

  • ABAPエンジニア自体が少ないため需要が多い
  • 2027年問題に向けて需要が高まっている

ABAPエンジニア自体が少ないため需要が多い

ABAPエンジニアの数は、他のITエンジニアと比較して少ないです。

ですが、ABAPエンジニアはSAP導入プロジェクトには欠かせない存在となっており、ABAPエンジニアは各プロジェクトでの取り合いをすることが多いです。

特に以下のようなABAPエンジニアは引く手あまたとなっています。

  • ABAPへの理解が深い
  • 様々なモジュールを横断的に知っている
  • 業務理解が早い

SAP導入プロジェクトが存在する限り、ABAPエンジニアの需要は続いていくでしょう。

2027年問題に向けて需要が高まっている

SAPのERPシステムでは2027年問題という事象が控えています。

2027年問題とは

大手企業を中心に世界中で導入されている、SAP社の基幹システムパッケージERPソリューション「SAP ECC6.0」の標準保守(メインストリームサポート)が2027年末で期限を迎えるという問題。

少し前まで2025年問題と言われていましたが、サポート期限が2年延長されたため、今は2027年問題と呼ばれています。

2027年問題へ対応するため多くの企業がECC6.0からS/4 HANAへの移行を計画しており、その移行作業でABAPエンジニアの需要が急増しています。

標準機能の仕様変更、システム全体のデータ移行が発生することから、アドオンプログラムの開発/修正が求められるため、ABAPエンジニアのスキルが必要です。

2027年以降は需要が通常通りとなる

2027年問題を一通り対応完了すると、SAPプロジェクトが通常の需要に戻っていくため、それまで加熱していたABAPエンジニアの需要も収まっていきます。

しかし、S/4 HANAに移行した後の問合せやトラブル対応は安定稼働するまで多く発生することでしょう。
また、安定稼働した後も、新しい課題や問題の発見、業務プロセスの変化によってシステム変更が発生します。

その際にも、ABAPエンジニアが必要となってくるため、需要が一定以上に落ち込むことはないと想定されます。

需要と将来性について問題なさそうなABAPエンジニアですが、一定のリスクも持ち合わせています。それらをこれから説明していきます。

ABAPエンジニアのリスク

ABAPエンジニアにも一定のリスクが存在するため、理解しておく必要があります。
以下のリスクが代表的なものです。

  • ABAPはSAP限定の言語でありSAPのシェアに依存する
  • 生成AIを利用したプログラム開発支援
  • SAPがアドオンプログラムを削減していく意向を示している

1つずつ解説していきますね。

ABAPはSAP限定の言語でありSAPのシェアに依存する

上の方でも説明していますが、ABAPはSAPシステム専用のプログラミング言語です。

そのため、ABAPエンジニアの需要はSAPの市場のシェアに強く依存しています。
将来的にSAPのシェアが減少してきた場合、ABAPエンジニアの需要も減少する可能性があります。

そういった事態に備えて、他のプログラミング言語や技術を習得しておくことで、柔軟に市場の変化に対応できるようになるでしょう。

生成AIを利用したプログラム開発支援

ChatGPTをはじめとした生成AIを利用したプログラミング支援環境が、近年急激に進化しています。

その影響を受け、プログラム開発業務が部分的もしくは、ほぼすべての範囲で自動化されていく可能性があります。
そのため、AI活用ができないABAPエンジニアは、市場価値の下落リスクがあります。

AIを活用した開発方法を習得し、AIと共存できるスキルを身につけていく必要があるでしょう。

SAPがアドオンプログラムを削減していく意向を示している

SAP社はSAPシステム導入を素早く行うために「SAP S/4HANA Cloud」という製品を提供しています。

上記システムは標準機能の強化を進めており、アドオンプログラムの開発を行わない方針(Fit to Standard)で進めています。
アドオンプログラムの開発を行わないというのは、100%標準プログラムを利用し、アドオンは0本という方針です。

ABAPエンジニアはアドオンプログラムを作らない場合、役割がなくなってしまいます。

すべてのSAP導入が削減方向になったわけではありませんが、アドオン開発を行わない方針が進められる以上、新しい標準機能の活用ができるようになるなどのスキルを身につける必要があるでしょう。

ABAPエンジニアの年収

ABAPエンジニアの年収は雇用形態、スキル、経験などによって大きく違ってきます。
ここでは、会社員として働く場合と、フリーランスで働く場合の年収について解説していきます。

会社員の場合

会社員の場合は、自分が所属する企業の規模や勤務地、スキルレベルによって違ってきます。

ABAPエンジニアの平均年収は600万円で、日本の平均年収を大きく上回っています。
日本国内での年収は以下のような金額になると言えるでしょう。

  • 未経験:400~500万円程度
  • 3年目~5年目:500~600万円程度
  • 5年目以上:600~800万円程度

スキルや業務知識などをしっかり経験を積んでおくことで、年収アップが見込めます。

フリーランスの場合

フリーランスとして働く場合は、会社員よりも多くの年収を見込めます。

最低1年以上のABAP開発経験があれば、単価50万円〜120万円程度の報酬を得ることが可能です。
また、ABAP以外にも開発できるプログラミング言語があれば、より高単価を目指すことができるでしょう。

年収的にも魅力的なABAPエンジニアについて、具体的にどのようになるのかを解説します!

ABAPエンジニアになるには

ABAPエンジニアとして働くためには、事前準備をしてから転職する必要があります。
そこで、事前準備として以下2つを紹介します。

  • ABAPの基礎スキルを習得する
  • ABAP以外のプログラミング言語を習得する

ABAPの基礎スキルを習得する

まず、当たり前の話ですが、ABAPエンジニアになるためにはABAPの基礎知識とスキルを習得しておく必要があります。
ABAPのスキルを身につけるためには、以下の方法があります。

  • オンライン教材
  • 専門書籍

オンライン教材としては、以下サイトにて学習ができます。
オンライン教材サイト:exercism

まずはこういったサイトを利用して基礎をきっちり学びましょう。

ABAP以外のプログラミング言語を習得する

ABAPエンジニアとしてのキャリアを広げるためには、ABAP以外のプログラミング言語も習得しておくと良いでしょう。

具体的なプログラミング言語を挙げるのであれば、Javaをおすすめします。
理由としては、SAP社が新しく提供しているSAP-BTP(SAP Business Technology Platform)はJavaでの開発ができるためです。

ABAPでSAPに携わるのであれば、その周辺システムも開発可能にしておくことで市場価値が向上しエンジニアになりやすくなりますよ。

ABAPエンジニアのキャリアパス

ABAPエンジニアになり活躍するためには、以下のキャリアパスが代表的なものとなります。

  • SAP導入企業へ転職しさらに経験を積む
  • エンジニアとしての実力がついてきたら独立する

上記が、通る人が多いメインのキャリアパスですので、ぜひ頭に入れておいてください。

まずはSAP導入企業へ転職し経験を積む

ABAPエンジニアとしてキャリアをスタートさせるために、「SAP導入企業へ転職し経験を積む」ことからスタートします。

学習サイトでの勉強はあくまで基礎的なものであり、実践で身につける知識やスキルとは大きく異なります。
企業に入ってからは、システムの不具合やトラブルシューティングのスキルを磨き、現場での経験を通じて専門性を深めることができるでしょう。

また、導入プロジェクトが1つのクライアントで継続できた場合、SAP内でのつながりを理解するチャンスにもなるため、しっかりと全体像を理解することが可能です。

エンジニアとしての実力がついてきたら独立する

一定の実力と経験を積むことができたら、フリーランスとして独立することも1つのキャリアパスです。

会社員として働くことも魅力的ではありますが、独立することでより自由な働き方を選択できるだけでなく、高収入を得る機会も増えます。
また、自身が興味を持つ分野への参画をすることも可能で、自分が望む働き方を手に入れることができるでしょう。

ただし、事業主として案件を自分で獲得していく必要があるため、しっかりとスキルを身につけておき、継続して情報を最新化するなどの対応が必要にはなります。

独立には以下の2つの選択肢が挙げられます。

  • ABAPのわかるSAPコンサルタントを目指す
  • どのモジュールでも対応できるABAPエンジニアを目指す

ABAPのわかるSAPコンサルタントを目指す

独立する1つ目の職種として、ABAPエンジニアの経験を活かして「ABAPがわかるSAPコンサルタント」を目指すことです。

コンサルタントとしてクライアントの業務を理解するだけでなく、システム的に実現可能か、パフォーマンスは問題ないかなどを考慮したシステム面の検討が行えます。
また、不具合が起きた場合に、システムをプログラムレベルからしっかり確認できることは、スピード解決することに繋がります

そのため、ABAPのわかるSAPコンサルタントは非常に需要のあるキャリアと言えます。

どのモジュールでも対応できるABAPエンジニアを目指す

独立する2つ目の職種として、「どのモジュールでも対応できるABAPエンジニアを目指す」です。
各モジュールに詳しく多方面の範囲がカバーできるABAPエンジニアは非常に需要が高いと言えます。

SAPコンサルタントは大きな責任がともなう仕事であり、人によって向き不向きがあります。
そのため、コンサルタントを目指さずにABAPエンジニアとして仕事を続けていきたいと考える人も少なくありません。

まとめ

ABAPエンジニアは、SAPシステム導入に必要不可欠な存在です。
また、エンジニアの中でも仕事内容や報酬で魅力的な職種と言えるでしょう。

その先のキャリアパスとして、ABAPの知識があるSAPコンサルタントは需要が高く、市場価値の高いSAPコンサルタントになることが可能です。

ぜひ、将来性の高いABAPエンジニアを目指してみませんか。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

SAPキャリアは、SAP人材に特化した人材サービスを展開しています。現在は主にSAPフリーランス向けに案件紹介をしています。ご興味がある方は是非SAPフリーランスバンクにご登録ください!

また、SAP技術情報を発信するSAPラボも運営しています。

目次