「SAP Basisの業務内容は、どういった仕事があるんだろう?」
という疑問をお持ちではないですか?
SAP Basisの仕事はなんとなくイメージできるけど、具体的にどういった仕事をしているのかはわからないという声をよく聞きます。
本記事では、SAP Basisの業務内容を中心に以下の内容をまとめました。
- SAP Basisとは?
- SAP Basisコンサルタントの業務内容
- SAP Basisエンジニアの業務内容
- Basisコンサルタントに求められるスキル
SAP Basisの業務内容に興味を持っているあなたにとって、参考になる内容となっています。
ぜひ最後までご覧ください。
SAP Basisとは?
SAP Basisは、SAPシステム内のミドルウェアコンポーネントを指しており、SAPシステムの基盤となる技術です。
SAPはOS上にそのままアプリを構築せず、Basisというミドルウェアの上に各モジュールを構築します。
BasisはOSやデータベースの通信にも利用されており、OSやデータベースなどが異なっていてもアプリへ与える影響をなくす、という重要な役割を担っています。
なお、SAP BasisというのはSAP R/3時代の名称であり、現在は「SAP NetWeaver Application Server」という名称となっているので覚えておきましょう。
SAP Basisコンサルタントとは?
SAP Basisコンサルタントは、企業のSAPシステム導入や運用に関してBasis観点でのアドバイスを提供する専門家です。
Basisコンサルタントは他のSAPアプリケーションを担当するような業務コンサルタントと違い、非常に技術力に重きをおいたコンサルタントという役割を担います。
とはいえ、技術スキルだけでなく、課題解決の能力、プロジェクトを進めるためのコミュニケーションスキルやプロジェクト管理スキルなども求められます。
また、SAPだけでなく一般的なITスキルや経験も求められ、多方面の知識が必要になるでしょう。
SAP Basisエンジニアとは?
SAPエンジニアは、SAPシステムのインストールや設定などの構築作業、システム監視やバックアップなどの運用作業を担当します。
上記でも記載した通り、BasisはSAPシステムを支える重要な基盤であり、Basisエンジニアは安定稼働を実現するために日々業務を行います。
Basisコンサルタントになるためには、Basisエンジニアとして様々な導入案件や保守案件に携わり、数多くの経験を積むことが必要です。
SAP Basisコンサルタントの業務内容
SAP Basisコンサルタントは、クライアントのSAPシステム環境全体を設計、構築、最適化する重要な役割を担います。
その目的を達成するための、主要な業務内容は以下の3つです。
- SAPシステムの導入/構築
- SAPシステムのアップグレード実施
- SAPと周辺システムを含めたシステム運用コンサルティング
一つずつ説明していきます。
SAPシステムの導入/構築
SAPシステムの導入/構築は、SAP Basisコンサルタントの核となる業務です。
この段階では、クライアントの要件を分析し、最適なシステムアーキテクチャを設計します。
具体的には以下作業を実施します。
- システム要件の定義と文書化
- ハードウェアとソフトウェアの選定と構成設計
- システムのインストールとベースラインの設定
- 初期パフォーマンスチューニングとシステム最適化
Basisコンサルタントは、クライアントの現在のニーズだけでなく、将来の成長や変化も考慮に入れた柔軟なシステム設計を行います。
SAPシステムのアップグレード実施
SAPシステムは、定期的にアップグレードが必要です。
アップグレードは、新機能の追加、セキュリティの強化、パフォーマンスの向上などを目的に実施します。
しかし、アップグレードは既存の設定に影響を与えるため、しっかりと導入計画を立てた上で改修/検証が求められます。
アップグレード時のSAP Basisコンサルタントの役割は以下の通りです。
- アップグレードの必要性と利点の分析
- 詳細なアップグレード計画の策定
- テスト環境でのアップグレードプロセスの検証
- 本番環境へのアップグレード適用と監視
SAPと周辺システムを含めたシステム運用コンサルティング
SAPシステムは単独で利用するのではなく、多くの場合は企業内の他システムと連携して利用されます。
SAP Basisコンサルタントは、SAPシステムと周辺システムを含めた全体的な運用戦略の提案を行い、実装することが求められます。
- 全体的なIT運用戦略の策定
- SAPシステムと周辺システムの統合設計
- 運用チームの編成と役割定義
クライアントの業務プロセスを深く理解し、どのようにITがビジネスの目標達成に貢献できるかを示すことが重要です。
また、セキュリティ、コンプライアンス、災害復旧などの企業におけるリスクも考慮に入れておく必要があるでしょう。
SAP Basisエンジニアの業務内容
上記でもお伝えした通り、SAP Basisエンジニアの業務はシステム導入と安定したシステム運用がメインの業務になります。
具体的には以下の業務を担当します。
- システム監視と保守
- バックアップとリカバリ
- ソフトウェアアップデートとパッチ適用
- SP・SAP Note適用と管理
- ユーザーIDの作成と管理
- ロール作成と管理
- 移送管理
- ジョブ管理
- クライアント管理
一つずつ説明していきます。
システム監視と保守
システム監視と保守は、SAPエンジニアの最も基本的かつ重要な業務です。
Basisエンジニアはシステムログのチェックやアラートを監視、リソースの使用状況の確認などを行い、システムを正常な状態で利用できるように維持します。
具体的には以下の業務を担当します。
- リアルタイムでのシステムパフォーマンス監視
- システムログの分析とエラーの早期発見
- パフォーマンス問題の特定と解決
- 予防的なメンテナンス作業の計画と実行
システムの安定性を維持し、潜在的な問題を事前に検知・解決することで、ビジネスへ与える影響を最小限に抑えます。
バックアップとリカバリ
企業の貴重なデータを保護するために行うために実施する作業が、バックアップとリカバリです。
有事の際に迅速にデータを復元できるようにするために、計画を立てて、日々バックアップを実施します。
具体的に以下の作業を行います。
- バックアップの方針と計画の検討
- 定期的なバックアップの実行と検証
- リカバリ手順の文書化と定期的なテスト
- 災害復旧計画の策定と維持
バックアップ計画と実施を通じて、データ損失のリスクを最小化、障害発生時の迅速な復旧を可能にします。
ソフトウェアアップデートとパッチ適用
SAPシステムを導入しているOSのセキュリティと機能を最新状態に保つために行います。
サイバー攻撃を受けて情報漏洩やデータを破壊された場合、クライアントの経営に打撃を与えるため、未然に防ぐことが重要です。
サイバー攻撃の被害にあわないようにするために、以下の作業を行います。
- 新しいアップデートとパッチの評価
- アップデート適用の影響分析
- テスト環境でのアップデート検証
- 本番環境へのアップデート適用計画の策定と実行
システムの脆弱性をなくすことで、リスクを可能な限り減らします。
SP・SAP Note適用と管理
SAPは非常に大きなプログラムの集まりであり、バグや不具合が存在します。
バグを修正するためのパッチをNote(ノート)と呼び、ノートをコンポーネント(機能群)でまとめたものをSPと呼びます。
そういったNoteやSPを適用する/しないの判断をしたり、実際に適用する作業を行うのがBasisエンジニアの役割です。
NoteやSPは事前に適用すべきNoteやSPが必要なこともあり、そのような管理も重要な役割となります。
具体的には以下の作業を担当します。
- 最新のSPとSAP Noteの定期的な確認
- 適用すべきSPとSAP Noteの選定と評価
- テスト環境での適用と影響確認
- 本番環境への計画的な適用
パッチ適用により既知の問題を解決し、システムのパフォーマンスと安定性を向上させます。
ユーザーIDの作成と管理
SAPは企業活動と密接に関係しており、不要になったアカウントの整理や、ユーザーアカウントの正しい運用/管理は重要な業務です。
実際のユーザーIDの作成や削除などを行うのがBasisの役割であり、具体的には以下の業務を行います。
- 新規ユーザーアカウントの作成と設定
- ユーザー権限の割り当てと管理
- 定期的なユーザーアカウントの棚卸しと不要アカウントの削除
- パスワードポリシーの設定と管理
適切なユーザー管理により、セキュリティリスクを減らし、より安全なシステム運用を行います。
ロール作成と管理
上記でも記載した通り、SAPシステム内のデータは企業活動と密接に関係しており、すべての情報に全員がアクセスできてしまうとリスクが高まります。
そのため、ロールベースのアクセス制御は、SAPシステムのセキュリティの要です。
そのロール管理もBasisの重要な役割です。
- ビジネス要件に基づくロールの設計
- ロールの作成と権限の割り当て
- ユーザーへのロール割り当て
- 定期的なロールレビューと最適化
- 職務分掌(SoD)の確認と管理
適切なロール管理ができることで、ユーザーは必要最小限の権限のみを持ち、セキュリティリスクを減らせます。
移送管理
開発環境からテスト環境、本番環境へのシステム変更/適用を管理します。
SAPシステムは移送番号というキーに変更内容を紐づけて開発を行います。
紐づいた内容のみ適用することでシステム的な動作担保をする形です。
移送番号の管理や実際の移送はBasisエンジニアの担当業務です。
- 移送のスケジューリングと実行
- 移送後の整合性チェック
- 移送履歴の管理と文書化
- 緊急移送の手順策定と実行
ジョブ管理
SAPシステムは大量の業務データを処理する必要があるため、夜間中にプログラムを順序立てて実行する必要があります。
そのプログラムをバッチジョブと呼び、バッチジョブを効率的に実行できるように管理する役割をBasisエンジニアは担っています。
- ジョブスケジュールの設計と最適化
- ジョブの作成とスケジューリング
- ジョブ実行状況の監視とエラー対応
- ジョブログの分析とパフォーマンス改善
- クリティカルジョブの優先度設定と管理
効果的にバッチジョブを運用することにより、システムリソースを最適化し、より大量のデータを処理可能になります。
クライアント管理
SAPシステムはシステム内に、クライアントという論理的に分割された環境を作れます。
システム変更や、ユーザートレーニングを行うなど用途に合わせて環境を用意する際に、クライアントを利用します。
そのクライアントの管理を行うのがBasis担当者の役割です。
- 新規クライアントの作成と設定
- クライアント間のデータコピーと整合性確保
- クライアント固有の設定管理
- テストクライアントの定期的なリフレッシュ
- クライアントのセキュリティ設定の管理
SAP Basisコンサルタントに求められる8つのスキル
上記で紹介した通り、SAP Basisの業務内容は多岐にわたります。
そのため、Basisの担当者には数多くのスキルが求められます。
具体的には以下8つのスキルを習得することがオススメです。
- Basisに関する知識と経験
- ネットワークやデータベースなどのインフラスキル
- 最新のIT技術動向
- プロジェクト管理スキル
- コミュニケーションスキル
- 障害等発生した際の問題解決能力
- ドキュメンテーションスキル
- 英語の読み書きができると尚良
一つずつ説明していきます。
Basisに関する知識と経験
当たり前の話で、Basisコンサルタントとして活躍するためにはBasisに関する知識と経験が非常に重要になります。
具体的には以下のような知識やスキルが求められるでしょう。
- SAPのシステムアーキテクチャの理解
- システムランドスケープの設計知識
- SAP GUI、Management Consoleなどの管理ツールの利用経験
- システムのインストール・アップグレード作業
- パフォーマンスチューニング
最近では、SAP HANAプラットフォームの知識や、クラウド環境でのSAP運用経験も重要になっています。
これらの知識は、実践的な経験を通じて深めていくことが必要でしょう。
ネットワークやデータベースなどのインフラスキル
SAP Basisコンサルタントには、インフラスキルが不可欠です。
ネットワークスキルは、SAPシステムの安定性と性能を確保するために、適切なネットワークアーキテクチャを構築する必要があります。
また、負荷分散、セキュリティ、冗長性の考慮が求められます。
データベーススキルは、SAPがサポートするデータベース(Oracle、SQL Server、SAP HANAなど)の運用・管理スキルが重要です。
特に、大規模データベースのパフォーマンスチューニング、バックアップ・リカバリ戦略の立案、セキュリティ設定などの専門知識が求められます。
最新のIT技術動向
SAP Basisコンサルタントは、常に変化するIT環境に適応するため、最新の技術動向を把握し理解することが求められます。
特に近年重要になってきているのは、クラウドコンピューティングに関する知識です。
AWS、Azure、Google Cloudなどの主要なクラウド上で、SAPシステムの展開と運用について理解している必要があります。
クライアントからAIや機械学習をSAPシステムへ応用する方法、IoTとの統合、ビッグデータ分析など、新たな技術トレンドがSAP環境にどのように影響するかを理解します。
その上で、クライアントにあった適切なアドバイスを実施するのです。
これらの知識は、SAPのロードマップや将来の方向性を見据えた戦略的な提案を可能にするため、ぜひ押さえておきたいところです。
プロジェクト管理スキル
SAP Basisコンサルタントには、技術的なスキルに加えて、効果的なプロジェクト管理能力が不可欠です。
プロジェクト管理能力には、プロジェクトの範囲、スケジュール、予算を適切に管理する能力が含まれます。
また、ステークホルダーとのコミュニケーション、チームメンバーの管理、進捗報告など、プロジェクトの全側面を統括して、いろいろな角度からの情報をあつめられる能力も求められるでしょう。
コミュニケーションスキル
SAP Basisコンサルタントにとって、優れたコミュニケーションスキルは不可欠です。
Basis領域の技術的な内容を、非技術者であるクライアント担当者へわかりやすく説明する能力が求められます。
また、プロジェクトチーム内での効果的な情報共有も必須です。
技術チーム、ビジネスユーザー、経営陣など、背景が異なるステークホルダーとスムーズにコミュニケーションを取れれば、プロジェクトは成功しやすいでしょう。
障害等発生した際の問題解決能力
SAP Basisコンサルタントにとって、障害発生時における迅速な問題解決能力は非常に重要です。
システムログの分析、エラーメッセージの解釈、根本原因の特定など、技術的な側面での深い知識と経験が必要です。
また、論理的思考力を用いて問題を体系的に分析し、どの解決策を進めればよいかという解決策を導き出す能力も求められます。
ドキュメンテーションスキル
SAP Basisコンサルタントにとって、ドキュメンテーションスキルは不可欠です。
成果物としてアウトプットする際には、技術的な情報を明確かつ簡潔に文書化する能力が求められます。
具体的に作成する資料は、システム構成、運用手順、セキュリティポリシーなどの技術文書が挙げられます。
また、プロジェクト提案書、進捗報告書、最終報告書などのビジネス文書の作成も必要です。
数多くの人が見る資料であるため、正確性、一貫性、わかりやすさが求められるでしょう。
英語の読み書きができると尚良
SAP Basisコンサルタントにとって、英語力は非常に有利なスキルと言えます。
SAPの公式ドキュメントや技術資料の多くが英語で提供されているため、英語の読解力は最新の情報や詳細な技術情報に有効です。
また、SAPサポートポータルの利用や、SAP社とのコミュニケーションにおいても英語が必要となることが多々あります。
英語ができると普段から恩恵を受けれるため、普段から伸ばしていきましょう。
SAP Basisの年収は?
SAP Basisを担当する方の年収は、正社員とフリーランスによっても金額は大きく乖離があります。
- 正社員:平均年収741万円
- フリーランス:平均年収1,308万円
フリーランスのBasisエンジニアはレベルの高いスキルが求められます。
まずは正社員で数多くの経験を積んでスキルを獲得した上で、フリーランスを目指してみましょう。
Basisエンジニアの年収について、詳しくまとめた記事があります。
興味がある方はぜひご覧ください。
まとめ
本記事ではBasisの業務内容を紹介しました。
Basisエンジニアは、SAPのことに加えて、インフラや周辺システムのことまでカバーする知識とスキルが必要であり、Basisエンジニアになるのは難しいのが実情です。
ですが、その分見返りも大きいため、目指してみる価値は十分にあるでしょう。
ぜひあなたもフリーランスのBasisエンジニアを目指してみませんか。