SAP Datasphereとは?3つの機能・BWなどとの違いや導入時のポイント

sap-datasphere

「SAPプロジェクトで『SAP Datasphere』って聞くけど、結局DWCやBWと何が違うの?」
「オンプレミスのBW環境が限界を迎えているが、クラウド移行をどう進めれば良いかわからない」
「データが各システムに散在し、横断的な分析に時間と手間がかかりすぎている」

これらの課題は、多くのSAPエンジニアやコンサルタントが直面する共通の悩みです。
データのサイロ化は迅速な意思決定を妨げ、旧来のシステムは現代のビジネススピードに対応しきれなくなりつつあります。

この記事では、そのような課題を解決する鍵となる「SAP Datasphere」について、その基本概念から具体的な機能、従来製品や競合との違い、そして導入を成功させるポイントまでを網羅的に解説します。

  • SAP Datasphereの全体像と核心的な価値
  • プロジェクトでDatasphereをどのように位置づけ、提案できるか
  • 自身のスキルセットを今後どのようにアップデートしていくべきか

単なる製品知識だけでなく、あなたの市場価値を高めるための戦略的な知見を得られます。

SAPフリーランスの新着案件

MM

【ECC→S4HANA移行(MM)】東京都/リモート併用/グローバルテンプレート構築・展開

月額単価
1,450,000円 / 月
稼働場所
東京都
業務領域
要件定義, 設計, テスト
稼働率:
100%
作業内容:
ECCからS/4HANAへの移行に伴う、グローバルテンプレートの構築・展開プロジェクトです。 パイロット拠点のテストフェーズ完了に伴い、東南アジア、インド、UAEへの次拠点展開と、中国、ヨーロッパ、アフリカ、北米への次々拠点展開を並行して進めていきます。 本案件では、MM領域のコンサルタントとして、テンプレート導入における要件定義や設計、テスト推進などを担当していただきます。 主な業務内容:
  • コンフィグ要件定義、および設定担当者への説明・レビュー
  • アドオン要件定義(特に帳票関連)、および設計者への説明・レビュー
  • 結合テスト、ウォークスルーテストシナリオの検討
  • 発生する個別課題の検討および解決推進
  • 顧客(情報システム部門)との直接の調整・フェーシング

FI

【ECC→S4HANA移行(FI/会計帳票)】東京都/リモート併用/アドオン帳票リバースエンジニアリング

月額単価
1,150,000円 / 月
稼働場所
東京都
業務領域
設計, 開発(ABAP/Fiori)
稼働率:
100%
作業内容:
ECC6.0からS/4HANAへの移行プロジェクトです。 設計書が存在しない現行のアドオン帳票(約46本)について、リバースエンジニアリングを実施し、S/4HANAでの実装に向けた基本設計書の新規作成を行います。 本案件では、会計帳票チームのサブリードとして、経理ユーザーとの要件ヒアリング、基本設計、開発チーム(別チーム)への説明、成果物レビュー、チームの進捗・課題管理などを担当していただきます。 主な業務内容:
  • 現行アドオン帳票のリバースエンジニアリングによる基本設計書作成
  • 顧客(経理ユーザー)への要件ヒアリング、仕様調整
  • 開発チームへの設計詳細説明、および開発成果物のレビュー
  • 帳票チームのサブリード業務(各帳票の進捗状況把握、課題管理)
  • タスク遂行に関するスケジュール調整、要員アサインの調整
  • 顧客IT部門担当との進め方や品質管理に関するコミュニケーション

MM

SD

【貴金属リサイクル業 SAP保守(MM/SD/ABAP)】東京都/リモート併用/保守・ユーザー対応

月額単価
1,100,000円 / 月
稼働場所
東京都
業務領域
開発(ABAP/Fiori), 運用・保守
稼働率:
100%
作業内容:
貴金属リサイクル業のクライアントにおけるSAP保守プロジェクトです。 ロジモジュール(MM, SD)の保守をご担当いただきます。 アドオンの作りこみが多い環境であり、ドキュメント類の整備が不十分なためABAPスキルが必須となります。 主に、ユーザーからの問い合わせ対応や調査、プログラム改修などを担当していただきます。 主な業務内容:
  • ロジモジュール(MM, SD)の保守業務
  • ユーザーからの問い合わせ対応・調査
  • アドオンプログラムの改修・開発

MM

SD

【電気通信 子会社統合(SD/MM移行)】東京(リモート併用)/データ移行・開発

月額単価
1,100,000円 / 月
稼働場所
東京都
業務領域
開発(ABAP/Fiori)
稼働率:
100%
作業内容:
電気通信事業における子会社統合に伴い、SAPシステム(ロジスティクス領域)の移行プロジェクトが進行中です。 本ポジションでは、資材マスタのデータ移行を軸に、移行リハーサル、本番稼働フォロー、既存プログラムの改修など、移行・開発業務全般をご担当いただきます。 ロジ領域の組織カスタマイズ経験とABAPスキルの両方を活かせる、技術的にチャレンジングな役割です。 主な業務内容:
  • 資材マスタデータ移行、およびデータマッピング
  • 移行リハーサル、走行試験の実施支援
  • 本番稼働のフォローアップ
  • 既存プログラムの改修、およびパフォーマンスチューニング

MM

PP

SD

【SAP S/4HANA 保守・運用(SD/MM/PP/ABAP)】東京都/リモート併用/インシデント対応・アドオン改修

月額単価
850,000円 / 月
稼働場所
東京都
業務領域
開発(ABAP/Fiori), 運用・保守
稼働率:
100%
作業内容:
SAP S/4HANAの保守・運用プロジェクトにご参画いただきます。 主に販売管理(SD)、購買管理(MM)、在庫管理、生産管理(PP)領域におけるインシデント対応やアドオンプログラムの対応を担当していただきます。 主な業務内容:
  • SAPに関する問い合わせ(インシデント)に対する調査・回答。
  • アドオンプログラム(ABAP)の調査・改修。

CO

MM

SD

その他

【半導体S/4HANA新規導入(PS/CO/SD/MM)】東京(オンサイト)/要件定義

月額単価
1,400,000円 / 月
稼働場所
東京都
業務領域
要件定義
稼働率:
100%
作業内容:
半導体製造業における、SAP S/4HANAの新規導入プロジェクトです。 現在、別パッケージで対応している「個別受注生産」プロセスを、SAP S/4HANA (PS/CO/SD/MM) に置き換えることを目的としています。 本募集では、プロジェクトの根幹をなす要件定義フェーズにおいて、各モジュールの専門家として新プロセスの設計を中心メンバーとして推進していただくことを期待しています。 主な業務内容:
  • 【PS担当】
    • WBS(作業分解構造)やネットワークの設計・設定
    • 販売受注(SD)とPSの統合、および購買(MM)や製造(PP)との連携設計
    • 成果物の納品・請求プロセスの設計
  • 【CO担当】
    • プロジェクト別の原価収集設定
    • 個別原価計算、総合原価計算の設計
    • 収益性分析(CO-PA)や原価センタ配賦の設計
  • 【SD/MM担当】
    • PSモジュールとの連携を前提とした、受注・購買プロセスの要件定義

MM

SD

【保守運用支援(SD/MM)】静岡県/リモート併用/保守運用

月額単価
1,250,000円 / 月
稼働場所
静岡県
業務領域
運用・保守
稼働率:
100%
作業内容:
SAPにおける保守運用支援業務の案件です。 高度なIT戦略立案よりも、現場の課題解決を着実に実行できるメンバーとして、社員のリードのもとで主体的に業務を遂行(自走)できる方を求めています。 これまで各モジュール領域のコンサルタントとしてご活躍され、一人称で運用・維持管理を完遂できる方が適任とされています。 現場の課題解決を中心に、保守運用支援全般を担当していただきます。 主な業務内容:
  • ユーザーからの問い合わせ対応、トラブルシューティング、要望ヒアリング
  • 見積作成、WBS策定、スケジュール管理
  • 受け入れテストの計画、実施、検証

FI

【SAP FI(ジュニア枠)】東京/要件定義サポート

月額単価
600,000円 / 月
稼働場所
東京都
業務領域
要件定義
稼働率:
100%
作業内容:
SAPプロジェクトが要件定義フェーズを迎えるにあたり、FIチームのサポートメンバーとしてご活躍いただけるジュニアコンサルタントの方を募集いたします。 本ポジションでは、FIの基本的なご経験を活かし、シニアコンサルタントの支援のもと、プロジェクトの上流工程に携わる絶好の機会です。 主な業務内容:
  • 要件定義フェーズにおけるドキュメント(議事録、課題管理表など)の作成支援
  • データ収集、およびExcelを使用した集計・管理
  • FI領域(総勘定元帳、伝票入力など)に関する調査・確認サポート
  • チーム内の各種調整、および会議設定支援

MM

SD

【S/4HANA新規導入(SD/MM)】東京・品川/テスト・移行・教育支援

月額単価
1,100,000円 / 月
稼働場所
東京都
業務領域
テスト, その他
稼働率:
100%
作業内容:
SAP S/4HANAの新規導入プロジェクトが、テスト・移行・教育フェーズを迎えるにあたり、ロジスティクス領域(SD/MM)を支援していただける方を募集いたします。 本ポジションでは、テスト工程から本番移行、その後のユーザー教育まで、プロジェクトの最終段階における重要な業務を幅広く担当していただきます。 主な業務内容:
  • ロジスティクス系モジュールにおけるテスト工程(結合テスト、シナリオテスト等)の実行
  • テスト・移行フェーズで発生した課題に対する調査(ABAP読解含む)
  • 本番移行フェーズの各種支援
  • ユーザー教育フェーズの実施支援(マニュアル整備、トレーニングサポート等)

FI

【SAP FI/CO運用保守(チームリード)】フルリモート/計画管理・海外展開支援

月額単価
1,250,000円 / 月
稼働場所
フルリモート
業務領域
運用・保守
稼働率:
100%
作業内容:
SAPシステムの安定稼働を支える運用保守プロジェクトです。 本ポジションでは、FIチームのリーダーとして、チーム全体の計画管理、作業・進捗・課題管理を担います。 また、海外関係会社への展開支援や、引継ぎ期間におけるメンバーのサポートなど、グローバルな視点でのリーダーシップを発揮していただきます。 主な業務内容:
  • 運用保守チームリーダーとしての計画管理、作業・進捗・課題管理
  • 海外関係会社への展開支援を含む、全体計画の策定と作業管理
  • 引継ぎ期間におけるメンバーの進捗・課題管理、および報告
  • お客様やチーム内の定例・臨時会議の主催、およびファシリテーション
  • 対応メンバーへの技術的・業務的サポート
目次

SAP Datasphereとは?基本を分かりやすく解説

SAP Datasphereとは?基本を分かりやすく解説

SAP Datasphereは、単なるデータウェアハウス(DWH)の進化版ではありません。
企業のあらゆるデータ資産をビジネスの文脈で結びつけ、データドリブンな意思決定を加速させるための統合データプラットフォームです。
まずはその基本を理解していきましょう。

SAP Datasphereの概要

SAP Datasphereとは、SAPが提供するクラウドネイティブなデータ統合プラットフォームです。
SAP Business Technology Platform(BTP)上で稼働するSaaSソリューションであり、専門的な知識がなくとも、ビジネスユーザー自身がデータを自由に探索・分析できる環境を提供することを目的としています。

このプラットフォームは、SAPシステム内のデータはもちろん、さまざまな外部データソースとシームレスに連携できるのが大きな特徴です。
これにより、企業内に散在するデータを仮想的に統合し、一元的なデータアクセスを実現します。

従来製品の「Data Warehouse Cloud」との違い

SAP Datasphereは、従来提供されていた「SAP Data Warehouse Cloud(DWC)」の次世代版として位置づけられています。
単なる名称変更ではなく、機能とコンセプトが大幅に拡張されました。

DWCが主にデータウェアハウス機能に焦点を当てていたのに対し、Datasphereはデータ統合やデータガバナンス、セマンティックモデリングといった機能を強化しています。
これにより、単一の製品でデータ管理のライフサイクル全体をカバーできるようになりました。

比較項目SAP Data Warehouse CloudSAP Datasphere
コンセプトデータウェアハウス中心ビジネスデータファブリック
主な機能データモデリング、分析データ統合、カタログ、セマンティクス
連携性SAP中心オープンデータエコシステム
対象ユーザーIT部門、データアナリストビジネスユーザーを含む全社

このように、SAP Datasphereはより包括的でビジネス指向のプラットフォームへと進化を遂げているのです。

中核概念である「ビジネスデータファブリック」とは

ビジネスデータファブリックとは、SAP Datasphereが掲げる非常に重要なコンセプトです。
これは、組織内外に散在する様々なデータを、物理的に1か所に集めるのではなく、仮想的に連携させ、あたかも「一枚の布(ファブリック)」のように扱うアーキテクチャ思想を指します。

このアプローチの最大のメリットは、データの複製や移動を最小限に抑え、リアルタイム性と一貫性を保ちながら、必要な時に必要なデータへアクセスできる点です。
SAPは、このビジネスデータファブリックを実現するための中核としてSAP Datasphereを位置づけています。

引用元:SAPジャパン、データ環境をシンプルにする新製品「SAP Datasphere」を提供 – ZDNET Japan

SAP Datasphereの代表的な3つの機能

SAP Datasphereの代表的な3つの機能

SAP Datasphereがビジネスデータファブリックを実現するために、数多くの機能が搭載されています。
ここでは、その中でも特に重要となる3つの代表的な機能について見ていきましょう。
これらの機能が、データ活用のあり方を大きく変える力を持っています。

オープンデータエコシステム:あらゆるデータを統合・連携

SAP Datasphereの最も強力な機能のひとつが、そのオープン性です。
SAP S/4HANAや従来のSAP ERPといった基幹システムとの親和性が高いのはもちろんのこと、SAP以外のさまざまなデータソースとも容易に連携できます。

これは「オープンデータエコシステム」という考え方に基づいています。
具体的には、以下のような主要なデータプラットフォームやAIベンダーとの戦略的パートナーシップにより実現されているのです。

  • Collibra:データガバナンスの統合
  • Confluent:リアルタイムなデータストリーミング
  • Databricks:高度なデータ分析とAI/機械学習
  • DataRobot:自動化された機械学習プラットフォーム
  • Google Cloud:BigQueryとの連携による高速クエリ

これにより、企業は既存のデータ資産を最大限に活用しながら、最新のテクノロジーと組み合わせた高度なデータ活用が可能となります。

セマンティックレイヤー:ビジネスコンテキストを維持

セマンティックレイヤーは、技術的なデータ項目に「売上」「利益」「顧客数」といったビジネス上の意味(コンテキスト)を付与する機能です。
これにより、IT部門の専門家でなくとも、ビジネスユーザーが直感的にデータを理解し、分析できるようになります。

例えば、「TableAのCol1」のような技術的な名称ではなく、「年度別製品売上」といった分かりやすい名称でデータにアクセス可能です。
SAP Datasphereでは、SAP S/4HANAなどのSAPアプリケーションが持つセマンティック定義を自動で再利用できるため、価値実現までの時間を大幅に短縮します。

データガバナンスとセキュリティ

データの活用が進むほど、その品質やセキュリティを維持するためのガバナンスが重要になります。
SAP Datasphereは、企業が安心してデータを活用できるための強力なデータガバナンス機能を提供します。

主な機能は以下の通りです。

  • データカタログ:組織内のデータ資産を自動で発見し、一元的に管理。データの意味や出所を明確にする。
  • アクセス制御:ユーザーの役割や権限に応じて、データへのアクセスをきめ細かく制御。
  • データ品質管理:データの品質を監視し、一貫性と信頼性を担保するルールを設定。
  • コンプライアンス対応:GDPRなどの各種データ保護規制に対応するための機能を提供。

これらの機能により、データ活用の自由度と統制の両立を実現します。

SAP Datasphereと従来製品・競合製品との違い

SAP Datasphereと従来製品・競合製品との違い

SAP Datasphereを導入検討する上で、既存のSAP製品や市場の競合製品との違いを正確に理解することは不可欠です。
ここでは、それぞれの製品との比較を通じて、SAP Datasphere独自のポジションと強みを明らかにしていきます。

SAP Data Warehouse Cloud / BW/4HANAとの違い

SAP Datasphereは、SAPのデータウェアハウスソリューションの系譜に連なる製品ですが、従来製品とはアーキテクチャとコンセプトに大きな違いがあります。
具体的な違いは以下の通りです。

比較項目SAP BW/4HANASAP Datasphere
提供形態オンプレミス / IaaSSaaS
データ連携物理的なデータ統合(ETL)が中心仮想アクセスと物理統合のハイブリッド
対象データ主にSAPデータSAPデータ + 非SAPデータ
主な利用者IT部門、BW開発者ビジネスユーザー、データサイエンティスト
移行BWブリッジ機能で既存資産の再利用が可能

最大の違いは、BW/4HANAが物理的なデータ集約を前提としているのに対し、Datasphereはデータの仮想的な連携を重視している点です。
これにより、より柔軟かつ迅速なデータアクセスが可能となりました。

Snowflake, Azure Synapse, Databricksとの比較

SAP Datasphereは、多くのクラウドデータプラットフォームと競合します。
各製品にはそれぞれ特徴があり、用途によって最適な選択は異なります。

製品名主な強み特に適した用途
SAP DatasphereSAPシステムとの深い統合、ビジネスセマンティクスの維持SAP中心の環境での全社的なデータ活用
Snowflakeマルチクラウド対応、コンピューティングとストレージの分離多様なクラウド環境での大規模データ分析
Azure SynapseMicrosoft製品との親和性、分析機能の統合Azure中心の環境でのエンドツーエンド分析
DatabricksAI/機械学習機能、大規模データ処理(Sparkベース)データサイエンス、AIモデル開発

SAP Datasphereの最大の優位性は、SAP S/4HANAなどの基幹システムが持つビジネスコンテキストを損なうことなく、データ活用ができる点にあります。

SAP Datasphereの料金体系

SAP Datasphereの料金体系

SAP Datasphereの導入を検討する上で、料金体系の理解は重要な要素です。
従来の製品とは異なるクラウドサービスならではの課金モデルを採用しています。

ライセンスの種類

SAP Datasphereの料金は、主に「Capacity Unit(CU)」という単位に基づいたサブスクリプションモデルとなっています。
CUは、利用するコンピューティングリソース(CPU、メモリ)やストレージの容量を統合した消費単位です。

このモデルのメリットは以下の通りです。

  • 柔軟性:ワークロードの需要に応じてCUを柔軟にスケールアップ・ダウンできる。
  • シンプルさ:コンピューティングとストレージを個別に計算する必要がなく、管理が容易。
  • 予測可能性:事前に購入したCUの範囲内で利用するため、予算管理がしやすい。

利用規模に応じて必要なCU数が変動するため、導入前にサイジングを行うことが重要です。

SAP BTP経由での購入方法

SAP Datasphereは、SAP Business Technology Platform(BTP)上のサービスのひとつとして提供されており、購入もBTP経由で行います。
主な契約形態には、以下の2つがあります。

  • Pay-As-You-Go:
    初期費用なしで、実際に使用した分だけを支払う従量課金制のモデル。
    小規模なプロジェクトやPoC(概念実証)に適している。
  • CPEA (Cloud Platform Enterprise Agreement):
    事前に一定額のクレジットをまとめて購入し、BTP上の様々なサービスをそのクレジットから消費していくモデル。
    大規模な利用や複数サービスの利用が想定される場合にコストメリットがある。

どちらのモデルを選択するかは、企業の利用計画や規模によって異なります。

参考:SAP Discovery Center – SAP Datasphere

SAP Datasphereの導入事例

SAP Datasphereの導入事例

SAP Datasphereが実際のビジネス現場でどのように活用され、どのような成果を上げているのでしょうか。
ここでは、国内外の先進的な導入事例を3つ紹介します。

データサイロを解消し、リアルタイムな意思決定を実現(Hyundai Elevator社)

韓国の大手エレベーターメーカーであるHyundai Elevator社は、複数のシステムにデータが散在し、リアルタイムな経営状況の把握が困難という課題を抱えていました。

同社はSAP Datasphereを導入し、SAP S/4HANAや他の業務システムのデータを統合。
これにより、経営層は常に最新のデータに基づいた意思決定を行えるようになり、市場の変化への対応スピードが大幅に向上しました。

15か月でクラウド大変革を実現(Kemira)

化学業界のグローバルリーダーであるKemira社は、SAP DatasphereとSAP Analytics Cloudを導入し、15か月という短期間でデータプラットフォームのクラウドへの大変革を遂げました。

このプロジェクトにより、同社はデータ分析基盤を近代化し、ビジネスユーザーがセルフサービスでデータにアクセスし、インサイトを得られる環境を構築。
データ活用の民主化を推進し、イノベーションを加速させています。

IFRS対応と社内DX推進を同時に実現(野村総合研究所)

株式会社野村総合研究所(NRI)は、新たな収益認識基準(IFRS15号)への対応と、全社的なデジタルトランスフォーメーション(DX)推進という2つの目的のためにSAP Datasphereを導入しました。

SAP S/4HANA CloudとSAP Datasphereを連携させることで、複雑な会計基準に対応しつつ、営業から会計までのデータを一気通貫で分析できる基盤を構築。
これにより、ガバナンスの強化とデータに基づく戦略立案の両方を実現しています。

参考:SAPジャパン、データ統合基盤「SAP Datasphere」をリリース、複数のデータソースを仮想統合 | IT Leaders

SAP Datasphereの導入を成功させるためのポイント

SAP Datasphereの導入を成功させるためのポイント

SAP Datasphereは強力なツールですが、その導入を成功させるためにはいくつかの重要なポイントがあります。
ここでは、豊富なプロジェクト経験から見えてきた2つの重要な成功要因について解説します。

信頼できるパートナーを選定する

SAP Datasphereの導入は、単なるツールのインストールではありません。
既存のデータ環境の評価、将来のビジネスニーズを見据えたアーキテクチャ設計、そして効果的なデータモデリングなど、高度な専門知識が求められます。

そのため、SAP Datasphereに関する深い知見と豊富な導入実績を持つパートナーを選定することが極めて重要です。
パートナー選定の際は、以下の点を確認するとよいでしょう。

  • 自社の業界における導入実績
  • SAP BWからの移行に関する経験
  • SAP以外のデータソースとの連携に関する技術力
  • 導入後のトレーニングやサポート体制

信頼できるパートナーは、技術的な課題を解決するだけでなく、データ活用の文化を組織に根付かせるための力強い推進役となります。

スモールスタートで段階的に移行する

全社的なデータ基盤を一度に刷新しようとすると、プロジェクトが大規模化し、リスクも増大します。
導入を成功させるための現実的なアプローチは、「スモールスタート」です。

まずは特定の業務領域や部門にスコープを絞ってパイロットプロジェクトを開始し、そこで小さな成功体験を積み重ねることが重要です。
このアプローチには、以下のようなメリットがあります。

  • リスクの低減:初期投資を抑え、技術的な課題を早期に洗い出せる。
  • 効果の可視化:短期間で具体的な成果を示すことで、経営層や関連部門の理解を得やすくなる。
  • 知見の蓄積:パイロットプロジェクトで得た知見やノウハウを、次のステップに活かせる。

小さな成功を積み重ねながら、段階的に適用範囲を拡大していくことが、全社的なデータ活用基盤の定着につながります。

まとめ

この記事では、SAP Datasphereの基本概念から主要機能、競合製品との比較、そして導入を成功させるためのポイントまでを網羅的に解説しました。

SAP Datasphereは、単なるSAP Data Warehouse Cloudの後継製品ではなく、ビジネスデータファブリックという先進的なコンセプトを実現するための中核的なプラットフォームです。
その最大の特徴は、SAPシステムとの深い親和性を保ちつつ、様々な外部データソースとも連携できるオープン性にあります。

これにより、企業はサイロ化されたデータを仮想的に統合し、ビジネスの文脈を維持したまま、信頼性の高いデータにアクセスできるようになります。
SAPエンジニアやコンサルタントにとって、SAP Datasphereを理解することは、今後のデータ活用プロジェクトを成功に導き、自身のキャリアをさらに発展させる上で不可欠といえるでしょう。

この記事が、あなたのSAP Datasphereへの理解を深める一助となれば幸いです。

SAPフリーランスの新着案件

MM

【ECC→S4HANA移行(MM)】東京都/リモート併用/グローバルテンプレート構築・展開

月額単価
1,450,000円 / 月
稼働場所
東京都
業務領域
要件定義, 設計, テスト
稼働率:
100%
作業内容:
ECCからS/4HANAへの移行に伴う、グローバルテンプレートの構築・展開プロジェクトです。 パイロット拠点のテストフェーズ完了に伴い、東南アジア、インド、UAEへの次拠点展開と、中国、ヨーロッパ、アフリカ、北米への次々拠点展開を並行して進めていきます。 本案件では、MM領域のコンサルタントとして、テンプレート導入における要件定義や設計、テスト推進などを担当していただきます。 主な業務内容:
  • コンフィグ要件定義、および設定担当者への説明・レビュー
  • アドオン要件定義(特に帳票関連)、および設計者への説明・レビュー
  • 結合テスト、ウォークスルーテストシナリオの検討
  • 発生する個別課題の検討および解決推進
  • 顧客(情報システム部門)との直接の調整・フェーシング

FI

【ECC→S4HANA移行(FI/会計帳票)】東京都/リモート併用/アドオン帳票リバースエンジニアリング

月額単価
1,150,000円 / 月
稼働場所
東京都
業務領域
設計, 開発(ABAP/Fiori)
稼働率:
100%
作業内容:
ECC6.0からS/4HANAへの移行プロジェクトです。 設計書が存在しない現行のアドオン帳票(約46本)について、リバースエンジニアリングを実施し、S/4HANAでの実装に向けた基本設計書の新規作成を行います。 本案件では、会計帳票チームのサブリードとして、経理ユーザーとの要件ヒアリング、基本設計、開発チーム(別チーム)への説明、成果物レビュー、チームの進捗・課題管理などを担当していただきます。 主な業務内容:
  • 現行アドオン帳票のリバースエンジニアリングによる基本設計書作成
  • 顧客(経理ユーザー)への要件ヒアリング、仕様調整
  • 開発チームへの設計詳細説明、および開発成果物のレビュー
  • 帳票チームのサブリード業務(各帳票の進捗状況把握、課題管理)
  • タスク遂行に関するスケジュール調整、要員アサインの調整
  • 顧客IT部門担当との進め方や品質管理に関するコミュニケーション

MM

SD

【貴金属リサイクル業 SAP保守(MM/SD/ABAP)】東京都/リモート併用/保守・ユーザー対応

月額単価
1,100,000円 / 月
稼働場所
東京都
業務領域
開発(ABAP/Fiori), 運用・保守
稼働率:
100%
作業内容:
貴金属リサイクル業のクライアントにおけるSAP保守プロジェクトです。 ロジモジュール(MM, SD)の保守をご担当いただきます。 アドオンの作りこみが多い環境であり、ドキュメント類の整備が不十分なためABAPスキルが必須となります。 主に、ユーザーからの問い合わせ対応や調査、プログラム改修などを担当していただきます。 主な業務内容:
  • ロジモジュール(MM, SD)の保守業務
  • ユーザーからの問い合わせ対応・調査
  • アドオンプログラムの改修・開発

MM

SD

【電気通信 子会社統合(SD/MM移行)】東京(リモート併用)/データ移行・開発

月額単価
1,100,000円 / 月
稼働場所
東京都
業務領域
開発(ABAP/Fiori)
稼働率:
100%
作業内容:
電気通信事業における子会社統合に伴い、SAPシステム(ロジスティクス領域)の移行プロジェクトが進行中です。 本ポジションでは、資材マスタのデータ移行を軸に、移行リハーサル、本番稼働フォロー、既存プログラムの改修など、移行・開発業務全般をご担当いただきます。 ロジ領域の組織カスタマイズ経験とABAPスキルの両方を活かせる、技術的にチャレンジングな役割です。 主な業務内容:
  • 資材マスタデータ移行、およびデータマッピング
  • 移行リハーサル、走行試験の実施支援
  • 本番稼働のフォローアップ
  • 既存プログラムの改修、およびパフォーマンスチューニング

MM

PP

SD

【SAP S/4HANA 保守・運用(SD/MM/PP/ABAP)】東京都/リモート併用/インシデント対応・アドオン改修

月額単価
850,000円 / 月
稼働場所
東京都
業務領域
開発(ABAP/Fiori), 運用・保守
稼働率:
100%
作業内容:
SAP S/4HANAの保守・運用プロジェクトにご参画いただきます。 主に販売管理(SD)、購買管理(MM)、在庫管理、生産管理(PP)領域におけるインシデント対応やアドオンプログラムの対応を担当していただきます。 主な業務内容:
  • SAPに関する問い合わせ(インシデント)に対する調査・回答。
  • アドオンプログラム(ABAP)の調査・改修。

CO

MM

SD

その他

【半導体S/4HANA新規導入(PS/CO/SD/MM)】東京(オンサイト)/要件定義

月額単価
1,400,000円 / 月
稼働場所
東京都
業務領域
要件定義
稼働率:
100%
作業内容:
半導体製造業における、SAP S/4HANAの新規導入プロジェクトです。 現在、別パッケージで対応している「個別受注生産」プロセスを、SAP S/4HANA (PS/CO/SD/MM) に置き換えることを目的としています。 本募集では、プロジェクトの根幹をなす要件定義フェーズにおいて、各モジュールの専門家として新プロセスの設計を中心メンバーとして推進していただくことを期待しています。 主な業務内容:
  • 【PS担当】
    • WBS(作業分解構造)やネットワークの設計・設定
    • 販売受注(SD)とPSの統合、および購買(MM)や製造(PP)との連携設計
    • 成果物の納品・請求プロセスの設計
  • 【CO担当】
    • プロジェクト別の原価収集設定
    • 個別原価計算、総合原価計算の設計
    • 収益性分析(CO-PA)や原価センタ配賦の設計
  • 【SD/MM担当】
    • PSモジュールとの連携を前提とした、受注・購買プロセスの要件定義

MM

SD

【保守運用支援(SD/MM)】静岡県/リモート併用/保守運用

月額単価
1,250,000円 / 月
稼働場所
静岡県
業務領域
運用・保守
稼働率:
100%
作業内容:
SAPにおける保守運用支援業務の案件です。 高度なIT戦略立案よりも、現場の課題解決を着実に実行できるメンバーとして、社員のリードのもとで主体的に業務を遂行(自走)できる方を求めています。 これまで各モジュール領域のコンサルタントとしてご活躍され、一人称で運用・維持管理を完遂できる方が適任とされています。 現場の課題解決を中心に、保守運用支援全般を担当していただきます。 主な業務内容:
  • ユーザーからの問い合わせ対応、トラブルシューティング、要望ヒアリング
  • 見積作成、WBS策定、スケジュール管理
  • 受け入れテストの計画、実施、検証

FI

【SAP FI(ジュニア枠)】東京/要件定義サポート

月額単価
600,000円 / 月
稼働場所
東京都
業務領域
要件定義
稼働率:
100%
作業内容:
SAPプロジェクトが要件定義フェーズを迎えるにあたり、FIチームのサポートメンバーとしてご活躍いただけるジュニアコンサルタントの方を募集いたします。 本ポジションでは、FIの基本的なご経験を活かし、シニアコンサルタントの支援のもと、プロジェクトの上流工程に携わる絶好の機会です。 主な業務内容:
  • 要件定義フェーズにおけるドキュメント(議事録、課題管理表など)の作成支援
  • データ収集、およびExcelを使用した集計・管理
  • FI領域(総勘定元帳、伝票入力など)に関する調査・確認サポート
  • チーム内の各種調整、および会議設定支援

MM

SD

【S/4HANA新規導入(SD/MM)】東京・品川/テスト・移行・教育支援

月額単価
1,100,000円 / 月
稼働場所
東京都
業務領域
テスト, その他
稼働率:
100%
作業内容:
SAP S/4HANAの新規導入プロジェクトが、テスト・移行・教育フェーズを迎えるにあたり、ロジスティクス領域(SD/MM)を支援していただける方を募集いたします。 本ポジションでは、テスト工程から本番移行、その後のユーザー教育まで、プロジェクトの最終段階における重要な業務を幅広く担当していただきます。 主な業務内容:
  • ロジスティクス系モジュールにおけるテスト工程(結合テスト、シナリオテスト等)の実行
  • テスト・移行フェーズで発生した課題に対する調査(ABAP読解含む)
  • 本番移行フェーズの各種支援
  • ユーザー教育フェーズの実施支援(マニュアル整備、トレーニングサポート等)

FI

【SAP FI/CO運用保守(チームリード)】フルリモート/計画管理・海外展開支援

月額単価
1,250,000円 / 月
稼働場所
フルリモート
業務領域
運用・保守
稼働率:
100%
作業内容:
SAPシステムの安定稼働を支える運用保守プロジェクトです。 本ポジションでは、FIチームのリーダーとして、チーム全体の計画管理、作業・進捗・課題管理を担います。 また、海外関係会社への展開支援や、引継ぎ期間におけるメンバーのサポートなど、グローバルな視点でのリーダーシップを発揮していただきます。 主な業務内容:
  • 運用保守チームリーダーとしての計画管理、作業・進捗・課題管理
  • 海外関係会社への展開支援を含む、全体計画の策定と作業管理
  • 引継ぎ期間におけるメンバーの進捗・課題管理、および報告
  • お客様やチーム内の定例・臨時会議の主催、およびファシリテーション
  • 対応メンバーへの技術的・業務的サポート
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この記事を書いた人

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